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脈拍でユーザー認証を行うデバイス

2013.11.5

リストバンド状の「Nymi」は、脈拍のパターンでユーザー認証を行う。
http://www.getnymi.com

スマートフォン、スマートウォッチ、スマートグラスと、個人用のコンピューターは身体に密着したウェラブルなものへと進化しようとしている。これらスマートデバイスは、コミュニケーション、スケジュール管理などの機能に加えて、健康状態のモニタリングや決済などの役割も果たすようになっていくだろう。
そうした進化をしていく上で、今後重要になっていくと考えられるのが、セキュリティだ。個人情報を扱うためには、高精度、かつ容易にユーザー認証を行える必要がある。
現在のところ、個人向けのデバイスとして普及する兆しを見せているのが、指紋認証である。アップルのiPhone 5sには指紋認証センサーのTouch IDが搭載され、パスワードを入力することなく、ホームボタンに触るだけでデバイスへのアクセスやコンテンツの購入ができるようになっている。
生体認証(バイオメトリックス)には、指紋認証以外にも、虹彩認証(目の虹彩をつかった生体認証技法)などがあるが、装置が大きくなるため、小型デバイスに搭載するのが難しい。
こうした状況の中、カナダのベンチャー企業のBionymはユニークなアプローチのデバイスを開発中だ。同社が2014年に発売予定のリストバンド「Nymi」には心電図センサーが搭載されており、脈拍のパターンでユーザー認証を行なう。指紋と同じく、脈拍のパターンも個人特有なのである。
すでに指紋認証が実用化されているのに、Bionymはなぜ脈拍パターンを使った認証技術を開発したのか? それは、デバイスを日常生活における「カギ」として使うためだ。ユーザーは、朝起きたらNymiを手首に巻いてユーザー認証を行う。その後、ユーザーはNymiを付けたまま、1日を過ごすことになる。Nymiに対応していれば、家のドア、車のトランク、スマートフォンなども、いちいちパスワードを入力することなく、手をかざすだけで解錠したり、ジェスチャーで操作できるようになる。
ウェラブル、生体認証、無意識に使えるユーザーインターフェイス……。スマートフォンブームの次を狙うデバイスの、激しい競争はすでに始まっている。

(文/山路達也)

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