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太陽光を浴びて振動するプラスチック素材

2016.11.28

開発されたフィルムに可視光を照射すると、風もないのに、振動を始める。セルフクリーニング機能付き太陽電池などへの応用が期待される。

太陽光を浴びて何らかの機能を発揮する素材というのは、今ではそれほど珍しくはなくなった。代表的なものが、酸化チタンだろう。酸化チタンは、光を照射すると水を酸素と水素に分解するほか、超親水性を示す。これを利用して表面が自動的に洗浄される壁やガラスなどが開発されている。
一方、オランダ アイントホーフェン工科大学とドイツ フンボルト大学の研究チームが開発した(https://www.tue.nl/en/university/news-and-press/news/04-07-2016-new-plastic-material-begins-to-oscillate-spontaneously-in-sunlight/)のは、太陽光で振動するプラスチック素材だ。この素材でできた薄いフィルムに太陽光を照射すると、不規則な振動を起こし始める。
フィルムには、光反応性を持つポリマー層があり、ここには合成染料としてごく一般的なアゾ染料が含まれている。ただし、アゾ染料が振動に関わっているものの、どうして振動するのか細かいメカニズムはまだわかっていない。研究チームは、光反応性の分子がポリマーの中で固定された状態で、たわんだり伸びたりすることにより、振動を生み出していると推測しているが、どうやらそれだけではないらしい。
振動の原理はまだ解明されていないが、このプラスチック素材は、産業分野での応用に期待が高まっている。一番有望なのが、セルフクリーニング機能を備えた太陽電池だ。モーターのようなメカニズムや電源なしに、太陽電池を振動させることができれば、メンテナンスコストを圧倒的に安くすることができる。 実をいえば、光を浴びて振動する素材が開発されたのは今回が初めてではないのだが、従来は紫外線を集中的に照射する必要があった。紫外線は素材自体にもダメージを与えるため、実用的な用途に使うことができずにいた。今回の素材は、太陽光に含まれる可視光線で振動が起こるため、実用化しやすいと考えられている。

(文/山路達也)

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