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最先端のスーパー繊維は、カイコが作る

2017.1.10

グラフェンやカーボンナノチューブを餌に混ぜるだけで、従来よりも2倍強靱な糸をカイコが作り出す。( Photo by (c)Tomo.Yun http://www.yunphoto.net )

生物の生み出す、新素材に注目が集まっている。中でも話題になっているのが、人工クモの糸だろう。日本のスタートアップ企業スパイバーは、鋼鉄の340倍の強靱さを持つ人工クモの糸の量産技術の確立を目指している。スパイバーは、遺伝子技術を使い、バクテリアにクモの糸のタンパク質を合成させている(参考記事:「クモの糸が紡ぐ、繊維の新時代」)。
その一方、ローテクな手法で、生物由来の新素材を作り出す研究も行われている。清華大学のYingying Zhang博士らが挑んでいるのは、従来よりも高い強度を持ったシルクである。 機能性のシルクを作るために従来は、染料や抗菌剤、導電性ポリマーといった物質をカイコの餌に混ぜたり、紡績されたシルクに添加するといったことが行われてきた。
Zhang博士らが使ったのも、餌に添加物を混ぜる手法である。カーボンナノチューブもしくはグラフェンを0.2%含む水溶液をクワの葉に吹き付け、これをカイコガの餌にする。カイコが繭を作ったら、一般的な養蚕業で行われているのと同じやり方でシルクを取り出すだけだ。
こうして作られたシルクは、通常のシルクの2倍の強度がある。電子顕微鏡で調べてみると、通常のシルクよりも規則的な結晶構造を持っており、導電性も備えているという。
紡績したシルクに添加剤を加える方法は有毒な化学物質を使用するが、Zhang博士らの方法は環境にも負荷を掛けない。従来と同様のプロセスを使えるため、製造コストを低く抑えられるのも大きなメリットだ。
カーボンを添加した強化シルクは、紫外線への耐性や導電性があるため、センサー機能を備えたスマート繊維や、神経からの信号を読み取るセンサーへの応用が期待されている。

(文/山路達也)

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