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可視光を使って、人体の内部を透視できる?

2017.8.7

可視光レーザーを使って、人体を透視することが可能になるかもしれない。
可視光レーザーを使って、人体を透視することが可能になるかもしれない。
Image credit: Joseph Xu, Michigan Engineering

1895年に、ヴィルヘルム・レントゲンが人体を透過する謎の電磁波「X線」を発見したことで、医療に革命が起こった。骨や肺などの病変を、体を切り開くことなく観察できるようになったのだ。ただし、高いエネルギーを持ったX線によるCTは被爆するリスクが指摘されている。人体の内部を撮影する方法としては磁気を用いたMRIも普及しているが、こちらは磁性体を装置内に持ち込めない、装置が大型化するといった欠点がある。
X線やMRI以外で物体内部を透視する方法として、近年注目されているのが可視光を使う方法だ。可視光を使えば、低コストかつ小型の装置を作れるが、撮影対象は卵殻のようにごく薄い物体に限られる。エネルギーの低い可視光は、物体の表面で簡単に散乱してしまうからだ。
ミシガン大学の研究チームは、こうした課題を解決しうる新しいアプローチを示した
可視光で物体を透過する上でネックとなるのは、光が分子に当たってどういう経路をたどるのかを予測することが難しいこと。ホログラフィック法という光の干渉を計測してどのように散乱するのかを算出する手法も開発されているが、これは複数回の計測が必要で時間がかかるため、医療用には適していない。
そこでミシガン大学の研究チームは発想を転換し、個々の光の経路を分析するのではなく、「明るさ」に注目した。空間光変調器を使い、数百の異なるパターンでレーザーを対象物に照射。対象物を透過した光の輝度を測定し、独自に開発したアルゴリズムで解析することで、光線がどのように散乱するのかを明らかにした。
研究チームが実証実験に用いたのは、細かく砕いたガラスとヨーグルトで作ったスライド。これは、光の散乱の仕方が人間の皮膚に似ているためだという。普通であれば、こんな物体に可視光レーザーを照射してもデタラメに散乱してしまうだけだ。ところが、研究チームは前述のアルゴリズムを使うことで、物体を透過して「MICHIGAN」という文字を描くことに成功した。レーザーは157回に分けて照射され、この作業は数分間で完了した。
現在のところは、物体の表面で可視光がどう散乱するのか算出する手法ができたという段階で、まだ研究は第一歩を踏み出したに過ぎないが、近年のイメージング技術の進歩は急速だ。研究チームは5年以内に皮膚を透過した撮影が可能になると予測している。

(文/山路達也)

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