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液体の入った袋でできた、新発想のソフトロボット

2018.2.19

液体の詰まった袋を変形させることで、壊れやすいモノも優しく扱える。
液体の詰まった袋を変形させることで、壊れやすいモノも優しく扱える。
Photo by University of Colorado Boulder

ロボットが金属製の硬いボディではなく、生物のように柔らかいボディを持っていればどうなるか?
医療や介護や精密機器の組み立てなど、対象を傷つけることなく繊細に扱えるようになれば、ロボットの応用範囲は格段に広がるだろう。柔らかいボディを備えたロボット、ソフトロボットを実現するためにはさまざまな手法が考えられている。柔らかい素材に空気を送り込んだり、光に反応して特定の方向に曲がる素材を使ったり、磁性ナノ粒子を磁石でコントロールしたりと、さまざまなチャレンジが行われているが、コロラド大学はこれらとはまったく違う新しいアプローチを発表した
この手法はHASEL(Hydraulically Amplified Self-healing Electrostatic)と名付けられており、絶縁油の詰まった小袋を使う。小袋には電極が取り付けられており、電圧を掛けると袋の形状が変化し、液体を別の場所に押し出して、大きな力を発生させる。
研究チームは、ドーナツ状や平面状などいくつかのパターンのHASELを作成した。例えば、ドーナツ状のHASELを組み合わせることで、壊れやすいモノを優しく掴む「指」を作ることができる。また、平面状のHASELを伸縮させることで、人間の筋肉と同様の動きをさせることも可能になる。
空気や液体を送り込んで素材を変形させるソフトロボットは今までにもあったが、これらのソフトロボットは空気や液体をためておくタンクが必要になるためかさばるのが課題だった。HASELの場合、あらかじめ袋に入っている絶縁油を使っているため、装置をコンパクトにできる上、俊敏に動作させることができる。袋の形状や組み合わせ方を工夫することで、素早い動き、優しいタッチ、強力なパワーを兼ね備えたソフトロボットを作れるわけだ。
また、電極を使って素材を変形させるソフトロボットもあったが、従来のものは電極がショートして素材を破損させる危険があった。絶縁油で満たされているHASELの場合は、素材が破損した場合でも電極がショートすることがなく、動き続けられる。
HASELはシンプルな原理に基づいており、使われている素材も非常に安価だ。人間のような動きをするソフトロボットが、私たちの身近で使われるようになる未来はそう遠くないのかもしれない。

(文/山路達也)

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