Science News

化学実験のコストを格段に引き下げる、
液滴コントロール

2018.4.9

装置表面に垂らされた液滴
装置表面に垂らされた液滴は、ソフトウェアで自在にコントロールできる。化学実験のスピードが格段にスピードアップすることになりそうだ。
Credit: MIT Media Lab / Jimmy Day

化学の実験室と聞くと、どんなイメージが浮かぶだろうか? ビーカーやフラスコが並び、それらを結んだチューブの中を何か液体がポコポコと流れている———。
そうした実験室のイメージを覆す技術が、Udayan Umapathi博士らを始めとするMITの研究チームによって開発された。
従来の実験では、ある試薬と試薬を適切なタイミングで混ぜ合わされるよう、装置同士をチューブやバルブ、ポンプなどでつなぎ合わせる必要があった。何か実験するには、装置を組み上げるのがまず手間だし、実験条件を変えようとすれば装置を組み直さないといけない。
MITの研究チームが開発したのは、電界によって液滴をコントロールする技術である。装置表面に試薬の液滴を垂らし、電界をかけると、液滴は自分で動き出し別の液滴と混ざり合う。どの液滴をどういう順番で動かすかは、専用のソフトウェアによって指示する。プログラミングを行う感覚で、実験装置を組み上げられるわけだ。
実を言えば、電界を使って液滴をコントロールする技術は10年ほど前から存在する。ただ、これまでの装置はハイエンドの半導体製造技術による加工が必要で、極めて高コストになっていた。
今回、MITが開発したプロトタイプで使われているのは、電極が埋め込まれた安価なプリント基板だ。基板表面は、撥水性材料でできた、直径1マイクロメートルの小さな球でコーティングされている。基板に垂らされた試薬は自然と球形になろうとするのだが、基板上の電極をオンにすると、その上の液滴は基板表面にぎゅっと引きつけられて形が平板になる。最初の電極をオフにすると同時に、隣の電極をオンにすると、液滴はそちらの方に引きつけられる……ということを繰り返すことで、液滴を自在にコントロールできるわけだ。また、スマートフォンのタッチスクリーンと似た仕組みで、システムは液滴の位置も把握できる。
ソフトウェアプログラミングと同様に、化学実験を行うことができれば、創薬を始めとする研究はこれまでとは比較にならないスピードで進歩するだろう。現代は、アトム(物質)からビット(情報)への転換が進んでいるとも言われるが、液滴コントロール技術はそうした変化が加速していることを感じさせてくれる。

(文/山路達也)

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