TOKYO ELECTRON LIMITED

スピン・トランスファー・テクノロジーズと東京エレクトロン、次世代MRAMの開発に向け協力

 スピン・トランスファー・テクノロジーズ(Spin Transfer Technologies, Inc.:STT)と東京エレクトロン(TEL)は、SRAMおよびDRAMを代替する次世代MRAMデバイスの実現に向けた協業契約を結んだことをお知らせします。これにより、かつてない高速、高密度、書き換え寿命を備えた高性能不揮発性メモリデバイス開発の加速が期待されます。STTのスピン注入MRAM(ST-MRAM)技術と、TELのMRAM向け先端PVD成膜装置を組み合わせることにより、高性能デバイスを短期間で開発することが可能となります。この協業において、STTは垂直磁気トンネル接合(pMTJ)を含むデバイス製造技術を提供し、TELは業界トップのST-MRAM成膜装置と磁性薄膜の成膜に関する独自の知識を投入します。この契約は、SRAMや将来的にはDRAM代替市場に向けて有力なソリューションを提供するというお互いの目標に合致します。

 SRAMはほとんどのモバイル機器やコンピューター、産業用装置などに広く利用されています。SRAMは高速で書き換え寿命が長い一方、高コストで電力消費も大きく、しかも揮発性メモリです。一方、ST-MRAMはよりセル面積が小さく低コスト、さらにデータ保存時の消費電力も少なく、不揮発性なので電源を切ったまま長期間データを保持することができます。しかし、SRAMと同等ないしそれ以上の性能を得るには、さらなるスイッチングの高速化や書き換え寿命の改善などが求められます。

 STTとTELは、既存のST-MRAMソリューションよりもはるかに高密度なソリューションの実証実験を行うとともに、SRAMを置換できるよう問題点の克服を進めます。これらの30nm以下の pMTJデバイスは既存製品よりも40-50%小さく、先端ロジックICへの利用が有望視されるほか、DRAM代替のST-MRAMデバイス製造への大きな一歩となることが期待されます。

STTのCEO、トム・スパークマンのコメント:
「業界はすでにSRAMやDRAMの能力を超える成長を遂げており、市場は次世代技術を待ち望んでいます。ST-MRAM用の成膜装置メーカーとして世界をリードするTELがパートナーとなったことによりSRAMとDRAMを置き換える技術開発が加速されます。ST-MRAMは期待を大きく超えて普及するものと確信しており、TELとともに業界が求める高速、高密度、書き換え寿命を実現してST-MRAM市場に変革を起こしたいと願っています」。

東京エレクトロン TFF BU PVD担当理事 兼 PVD部長 石川陽一のコメント:
「STTの専門家チームと協力し、そのデバイス製造ノウハウや開発環境を活用して、SRAM市場、ひいてはDRAM市場でも置換可能な高性能・高密度のMRAMデバイスの開発が加速することを期待します。STTが当社の先進的なMRAM成膜装置の性能を評価し、装置を採用していただいたことに感謝します。」

スピン・トランスファー・テクノロジーズについて
スピン・トランスファー・テクノロジーズ(Spin Transfer Technologies, Inc.:STT)は、特許の磁気テクノロジーと回路およびメモリ・アーキテクチャを独自に組み合わせ、業界トップの低コストと高性能を備えたスピン注入MRAM(ST-MRAM)の開発を進めています。STTの画期的なST-MRAMソリューションは、組み込み型のSRAMはもちろん、将来のDRAMデバイスをも置き換えると期待されます。STTはアライド・マインズとニューヨーク大学が設立した企業です。