No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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理論

太陽の活動が低下している?

より長期的なスパンで、太陽活動が地球に与える影響を調べる研究も進んでいる。

科学的な太陽観測を最初に行ったのは、ガリレオ・ガリレイと言われる。17世紀初頭、ガリレオは望遠鏡で太陽黒点(周辺より比較的低温になっており、暗く見える部分)の観測を行い、緻密なスケッチを残している。それ以降も、黒点観測はさまざまな機関や研究者によって行われ、19世紀前半には、ドイツの天文学者、ハインリッヒ・シュワーベが黒点の発生数の増減に約11年の周期があることを発見。近年になると、黒点数と太陽活動の活発さには相関関係があり、黒点は太陽の磁場の変動によって発生することが明らかになってきた。磁場というのは、太陽の内部の物質が自転や対流などによって回転すると生じるものだが、ゴム紐のような原理で、ねじれるとエネルギーが貯まり、ほどける時にエネルギーが放出される。そして、この磁場発生のメカニズムの中で起こる現象の1つが黒点なのだ。

現在、黒点を始めとするさまざまな徴候を綿密に分析し、それを元に太陽磁場の発生、変動のメカニズムを明らかにしていくことは、天文学において大きなテーマとなっている。太陽の表面を精密に観測するため、世界の研究機関は太陽観測を行う衛星の開発に取り組んでおり、先述の「ひので」もそうしたプロジェクトの一環だ。

日本では、1981年に「ひのとり」、1991年には「ようこう」(SOLAR-A)を打ち上げており、「ひので」(SOLAR-B)は3基目になる。X線による観測装置を主体にした「ひのとり」「ようこう」に続く「ひので」は、X線望遠鏡に加えて50cm口径の本格的な光学望遠鏡、さらに光学的な観測から磁場を計測できる装置を搭載している。

2012年5月31日、ひのでによる太陽観測を行っている国立天文台とNASAの研究チームは、太陽の磁場に異変が起こっていること、そして太陽活動に低下傾向が見られることを記者発表で明らかにした。これを受けて、「地球が寒冷化する!」といったセンセーショナルな報道も一部では行われた。  いったい、今、太陽に起こっている異変とは何なのだろうか?

左:X線望遠鏡に加えて50cm口径の可視光望遠鏡、磁場計測機器を搭載した最新の太陽観測衛星「ひので」。右:ひのでに搭載された可視光望遠鏡(OTA) の主鏡。の写真
[写真] 左:X線望遠鏡に加えて50cm口径の可視光望遠鏡、磁場計測機器を搭載した最新の太陽観測衛星「ひので」。 右:ひのでに搭載された可視光望遠鏡(OTA) の主鏡。
Credit:国立天文台

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