No.014 特集:テクノロジーとアートの融合
連載01 コネクテッドカーが本格稼働
Series Report

第3回
5G技術との協調で究極の事故ゼロを目指す

 

  • 2017.8.31
  • 文/津田 建二
5G技術との協調で究極の事故ゼロを目指す

クルマが外部のクルマや交通インフラとつながる未来は、自動運転の未来でもある。クルマの運転が大好きなドライバーでさえ、5〜6時間も連続で運転をしたり、高速道路で大渋滞に巻き込まれたりすると、疲れて注意が散漫になるだろう。こんな時に自動運転は威力を発揮する。決して、ドライバーから運転の楽しみを奪う技術ではないのだ。また、コネクテッドカーは、クルマ同士で情報を交換しつつ走行するため、自動運転を補助する技術だといえる。さらに、クルマ同士(V2V)や、クルマと交通インフラ(V2X)がつながる場合には、素早く応答するための道路インフラや接続ネットワークが普及のカギを握る。もし応答が遅ければ、ブレーキやハンドル操作が間に合わなくなるためだ。このシリーズ最終回では、コネクテッドカーがこれからの高速ネットワーク技術である5G(第5世代の移動体通信技術)と深く関わっていることを紹介する。

クルマがつながるコネクテッドカー技術は、事故が起きても救急車が素早く駆け付けるeCallサービスから始まり、クルマ同士(V2V)や、クルマと交通インフラ(V2X)をつなげることによる事故の回避、さらには広い駐車場での自分のクルマの位置通知、コンピュータ(ECU)ソフトウエアや地図情報の無線通信による自動更新といった便利な機能を実装して、最終的には安全な自動運転へとつながっている。

自動運転に向けたテクノロジーは、クルマだけの技術によるものではない。そこにはさまざまな未来志向の技術が詰まっている。センサからのビッグデータを解析して生産性や売り上げを伸ばし機能を高めるIoT(モノのインターネット)、音声や映像を素早く認識するAI(人工知能)、ビッグデータを収集・保存・解析するためのクラウド、センサからのデータをサーバ領域に接続するためのネットワーク技術、全世界で使うための5G無線通信技術なども、自動運転技術と一緒に未来に向けて進んでいく。

やがて来るべき未来では、これらのテクノロジーを駆使して、交通事故のない、人間が暮らしやすい社会を実現しているだろう。しかし、今のスマートフォンにしても、単にワイヤレス技術の進歩だけでできたわけではない。コンピュータ技術の進歩があり、それをハードウエアで実現する半導体技術の進歩があり、さらに高速のデジタル通信技術の進歩があって、初めて製品化できるようになったのだ。自動運転の世界もこれと同じで、ここでもコンピュータ技術、無線通信技術、半導体技術、ソフトウエアアルゴリズムなど、複雑なテクノロジーの進化がカギを握ることになる。コネクテッドカーの技術は進化を続けており、数年後に実現するであろうテクノロジーまでも見越したテクノロジーコンバージェンス(収束、融合という意味で使われる)の時代に入った。

5G通信で自動運転につながる

そういった未来を先取りする形で生まれたプロジェクトのひとつが5GAA(5G Automotive Association)だ。この組織は、クルマメーカーであるドイツのアウディ、BMW、ダイムラー、通信機器メーカーであるスウェーデンのエリクソン、ノルウェーのノキア、中国の華為技術、半導体メーカーであるアメリカのインテルとクアルコムの8社を設立メンバーとしている。

5G(第5世代の移動体通信技術)では、データ通信速度が最大10Gbpsとなり、データの遅延を表すレイテンシが1ms、それでいて消費電力が低い、という大まかな特長がある。これまでの携帯通信技術は、第1世代のアナログ通信から、第2世代のデジタル通信(世界標準はGSM)、第3世代の高速のデジタル通信(CDMA方式)、第4世代*1の高密度のデジタル通信(OFDM)によるLTEへと世代交代してきた。ところが、第5世代の5Gは、第4世代のLTEと世代交代せずに共存することになる(図1)。より高速化するために周波数帯域を上げた電波は、直進性が強まるとともに、到達距離が短くなってしまうからだ。そのため、全方位に広がりを持たせるための新技術、例えばビームフォーミングやMIMO(多数の入出力アンテナ)といったものが必要となる。

5Gは高速だが電波の到達距離が短いため4G(LTE)と共存する
[図1] 5Gは高速だが電波の到達距離が短いため4G(LTE)と共存する 
出典:Qualcomm

この5G技術をコネクテッドカーに採用すると、データ送受信は飛躍的に速くなる。ただし、クルマ同士(V2V)や、クルマと交通インフラとの通信(V2X)を実現するためには、旧車もふくめ、あらゆる車種がつながらなければ意味がない。

全てのクルマがつながるためには、通信プロトコルやデータ形式を合わせる必要があり、規格の標準化が欠かせない。さらに、全てのクルマがきちんとつながることをテストして確認するインターオペラビリティ(相互運用性)の作業も必須となる*2。だからこそ、5GAAのホームページ(参考資料1)には、「5Gの通信ソリューションを開発しテストし、プロモーションすること、標準化を進めること、商用化を促進し世界市場にも普及させることが重要となる。そして、社会とつながるクルマや道路の安全需要は自動運転やいつでもどこでもアクセスできるサービスにもなる。さらにスマートシティやインテリジェントな交通網にも統合していくことになる」というミッションが掲げられている。

[ 脚注 ]

*1
GPS: 当初NTTドコモはLTE(Long Term Evolution)を3.9世代と呼んでいたが、世界的にはLTEは4Gと呼ばれている。デジタル変調(1と0の組み合わせを増やして仮想的な通信回線を増やすための技術)の技術が3Gとは全く異なるからだ。
*2
実は日本の電子産業が弱くなった原因のひとつが、インターオペラビリティを重要視してこなかったためである。例えばBluetooth市場において、1990年代から世界に先んじて開発してきたにも関わらず負けたのは、Bluetooth機器が相互につながるかどうかを重要視してこなかったからだ。自社の装置さえBluetoothにつなげられれば市場を形成できると思い込んでいた。今後は、標準化と共にインターオペラビリティの重要性を認識する必要がある。
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