No.014 特集:テクノロジーとアートの融合
Scientist Interview

デジタル技術の活用が熟れれば、イベントはもっと面白くなる

2017.08.31

鈴木 智彦
(キリンジ代表取締役/プロデューサー)

タッチパネルを使ったユーザーインタフェースや、バーチャルリアリティを駆使したコンテンツ表現など、人と機械を密につなぐデジタル技術が、様々な分野で活用されるようになってきている。これにより、説明書がなくても直感的に操作できる機器や、リアルな体験ができるメディアが実現した。こういった技術の進歩は、多くの人が体験を共有する、イベントの表現手法にもイノベーションを生んでいる。映像や音響だけでは伝えにくかったメッセージを、参加者の五感を揺り動かして伝えることができるようになったのだ。人の動きを検知するセンサーやプロジェクションマッピングといった、最新のデジタル技術を活用したイベントの企画・プロデュースで数々の実績を上げている鈴木智彦氏に、デジタル技術を使ったイベント・コンテンツ制作の最前線の様子を伺った。

(インタビュー・文/伊藤 元昭)

デジタル技術でなければ、できない表現がある

── 鈴木さんが代表取締役を務めるキリンジでは、最新デジタル技術を駆使して、多くのイベントを企画しています。その狙いを聞かせてください。

鈴木 ── イベントと一言で言っても、ファッションショーから、展示会の展示、商品のプロモーションなど様々です。どのようなイベントであっても、企画・プロデュースに際して、「デジタル技術を使っているから、すごいでしょ」といったデジタル技術の利用を前提にした表現はしません。デジタル技術でなければできないこと、デジタルだからこそできることを、しっかりと見極めて表現しています。狙いに合った表現ができるのならば、デジタル技術の利用にこだわらず、アナログ表現を用いることもやぶさかではありません。

とはいえ、人がモノに触れるとそれに呼応した体験ができるといった双方向の表現は、映像や音響を単純に流し続けるような今までの表現では難しく、デジタル技術だからこそ実現できる表現方法です。様々なセンサーやプロジェクションマッピング*1といったデジタル技術が進歩したことで、たくさんの人が鮮烈な体験を共有できるようになりました。これが、今、イベントの新しい表現方法としてデジタル技術の活用に注目している理由です。

鈴木 智彦氏
 

香りの価値を、デジタル体験で伝える

── これまで手掛けてきた、デジタル技術を活用したイベントをいくつかご紹介ください。

鈴木 ── 例えば、「Flavour Journey Express by BOMBAY SAPPHIRE ~香りを愉しむ列車の旅~」というお酒のイベントをプロデュースし、2017年5月3日~7日に開催しました。イギリスのジンのブランド「ボンベイ・サファイア」の世界観をより多くの人たちに伝えることを目的として、渋谷にできた新しいランドマーク「渋谷キャスト」の開業に合わせて開催したイベントです。

ここでは、来場したお客様がお酒を楽しみながら、デジタル技術で表現されたコンテンツに触れ、ブランドの世界に入り込める空間を作りました。ボンベイ・サファイアのジンは、10種類の植物で香りづけされています。クライアントからは、10種類それぞれの香りの価値を伝えたいという要望が出されていました。しかし、香りの特徴やそこに潜む価値を伝えることは、それほど簡単なことではありません。香りを単純に嗅いでもらっても、香源となる植物をイラストで見せても、印象には残らないのです。そこで、世界各地から集められた10種類の植物を、来場者が列車に乗って旅しながら発見していくという演出を加えました。

縦8m、横2mの大きなテーブルを作って、その表面をすべてタッチスクリーンにし、アニメーションで地図上に列車を走らせました。そして、地図に触ると表面の土が取り除かれ、中から香源となる植物が見つかるようにしたのです。旅をしながら10種類の香りをすべて見つけると、全体がヴィクトリームービーに変わります。お客様は、入り口で車掌姿のスタッフから切符をもらい、お酒を飲みながら、お酒の中にある香りを探していくという趣向です。

ボンベイ・サファイアボンベイ・サファイア
[図1] ボンベイ・サファイア「FLAVOUR JOURNEY」
「10の香りを探す旅」をテーマにしたイベント。8m☓2mのテーブル型インタラクティブモニター。モニターに触れることで、映像が変化し、その中から10の香りを探し出すことができる(左)。来場者が楽しんでいる様子(右)。
出典:http://www.bacardijapan.jp/

[ 脚注 ]

*1
プロジェクションマッピング: プロジェクターなどを使って、建物やモノに映像を映し出す技術をプロジェクションマッピングと呼ぶ。現実の中にあるモノと仮想上の映像をシンクロさせる映像手法であり、その両者を融合させて新たな魅力や価値を生み出す手法としてデジタルアートで活用されている。
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