LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
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地元住民に受け入れられる科学研究とは?

天体観測の基地が置かれる、望遠鏡から50キロメートル離れたサンペドロの街
[写真] 天体観測の基地が置かれる、望遠鏡から50キロメートル離れたサンペドロの街
Photo Credit : 東京大学TAOプロジェクト

天文学や気象学の研究において成果が期待される赤外線望遠鏡だが、その建設のために乗り越えなければならない課題は多い。その1つとして、現地住民との関係がある。こうした望遠鏡が設置される条件の厳しい土地はチリの国土でも先住民が居住するエリアである。
大型天体望遠鏡は意外に大食漢で、望遠鏡を動かすための動力、冷却装置、データの送受信もろもろのために1MW程度の電力を消費する。空気の澄んだ僻地に建設するわけだから、電力も自前で用意することになり、ディーゼル式の発電機を使うことになる。

ちょっと想像してみればわかるが、こうした天体望遠鏡は地元住民にとってはまったくといっていいほどメリットがない。大した雇用も生まれないし、勝手に化石燃料を使う発電機まで設置されてしまうのだ。しかも、天体望遠鏡の設置に適した高峰は、往々にして先住民にとっての聖地である。いきなり、外国人が入り込んできて、富士山山頂に怪しげな装置を備え付け始めたら、どう感じるだろう?
環境に対する負荷を少なくし、現地住民もメリットを得られるようにするにはどうすればよいか。その解が「ソーラーTAO」だった。天体望遠鏡に必要な電力は、太陽電池パネルでまかない、同時に地元への電力供給も行う一石二鳥を狙ったプロジェクトというわけである。
かつては太陽電池パネルが高価だったため、ディーゼル発電機を使う場合に比べて多額の予算が必要になり、このようなプロジェクトは現実的ではなかった。だが、ここ10年ほどで太陽電池パネルは大幅に値下がりし、太陽光発電で天体望遠鏡を稼働させることも夢ではなくなりつつある(なお、先述のmini-TAO望遠鏡は、小型のディーゼル発電機で電力をまかなっている)。

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