No.008 特集:次世代マテリアル
連載01 身近な世界にまで広がり続ける半導体
Series Report

犯罪抑止につながる監視カメラ

監視カメラは、犯罪抑止力になると同時に犯罪の解決にも役立ち、その設置が増えている。防犯カメラのシステムは、機械的に角度を動かす方式だと風雨にさらされて錆びつき動かなくなることがあり、魚眼レンズを使って180度あるいは360度の映像を撮る方向になってきている。しかし魚眼レンズだと画像は歪むため、歪んだ画像を補正して元に戻す必要があり、そこに半導体の技術が使われているのだ。また、画像を見て、犯罪者特有の怪しい行動をとるような人物をカメラが認識した場合、その人物を自動的に四角で囲み、警察へ通報することも可能になっている。

監視カメラは日本ではあまり普及していないが、欧米ではすでに設置が増えており、今後もさらに伸びるとされている。例えば、サンフランシスコの地下鉄BARTは、日本のゆりかもめと同様、無人運転車であるが、1両に監視カメラが3台設置されている。国内の電車にはカメラの設置はないが、痴漢やその逆の冤罪を防ぐためにも、今後必要であろう。

さらに米国では主要な交通信号機の上にカメラが設置され始めた(図6)。まだ全国に広がっていないが、今後は増えていくだろう。と言うのは、交差点での事故を4台のカメラで監視していれば、事故原因を特定でき、保険会社も明確に理解できるようになるからだ。

交差点の信号機の支柱に取り付けられた監視カメラの図
[図6] 交差点の信号機の支柱に取り付けられた監視カメラ シリコンバレーにて

クルマからミラーを全て取り除き、カメラのみで死角の全くないシステムを作ることもできる。ドアミラーを除去したコンセプトカーを電気自動車専門メーカーのテスラモーターズが提案している。

教育の現場への普及

今後、教育現場でスマートフォンやタブレットの普及が広がっていくと、ここにも半導体の技術が活用されるようになる。教育ツールとしてのタブレットやVR(仮想現実)などの技術を、クアルコム社などが提案している。タブレットなどを使って教師と生徒が問題を共有したり、解答を伝えあったり、教育ツールとしてのタブレットは世界各地で実績を上げつつある。広く社会において、半導体は今後ますます、そのプレゼンスを高めていくであろう。

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニスト。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。書籍「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)など。

http://newsandchips.com/

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.