No.023 特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

No.023

特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

連載01

実用化が間近に迫る究極のバッテリー、全固体電池

Series Report

第3回
全固体化は、バッテリーの進化の伸びしろを広げる

2020.08.21

文/伊藤元昭

全固体化は、バッテリーの進化の伸びしろを広げる

電気自動車(EV)やウェアラブル機器、IoT端末など、新たな電子機器や電動機械を駆動する電源として全固体電池の実現に期待が集まっている。ただし、全固体電池が実現したからと言って、現在のリチウムイオン二次電池よりも容量や出力の面で優れたバッテリーがすぐに生まれるわけではない。全固体電池の実現は、将来生まれてくるであろう超高性能バッテリーを実現するための第一関門である。新電極材料の投入や電池の内部構造の革新を合わせて進めることで目指す超高性能バッテリーが実現する。全固体電池の最新動向を紹介している本連載、第3回は電解質の固体化を起点としたバッテリーのさらなる高性能化に向けた筋道と取り組みについて解説する。

全固体電池は、“究極のバッテリー”であると言われる。ずば抜けたバッテリー性能で、パソコンやスマートフォンなどに利用されているリチウムイオン二次電池が抱える数少ない欠点を解決する可能性を秘めているからだ。近年では、電気自動車(EV)の高性能化と普及の条件として全固体電池が新聞や雑誌の記事に取り上げられるようにもなった。

こうした記事を読んだ人の中には、「全固体電池が実用化すれば、小さな電池で、充電無しで長距離走るクルマや充電時間の短いクルマができるのでは」と考える人も多いことだろう。そして、「全固体電池を使えば、ノートパソコンやスマートフォンも、もっと軽く、電池が長持ちするようになるにちがいない」と思いがちだ。ただし、こうした見方は誤解である。

従来のリチウムイオン二次電池に対する全固体電池の最大の長所は、安全性と信頼性が向上することである。安全性や信頼性は、クルマのような人の命を預かる機械の動力源として、また人が持ち歩く電子機器の電源として欠かせない特徴だ。しかし、全固体電池が実用化しても、リチウムイオン二次電池よりも高性能なバッテリーがすぐに実現するわけではない。電解質の固体化だけでは、バッテリーの持ちに関わる容量も向上しないし、高度な電子機器やパワフルな電動機械を動かすための大出力も得られない。

この連載では、固体電解質として使う材料の違いから、全固体電池には硫化物型と酸化物型の2種類あり、硫化物型は高容量・大出力、酸化物型は安全・高信頼が特長であることを紹介してきた。ただし、これは全固体電池の中で比較すればの話である(図1)。高容量・大出力が特長の硫化物型でも、液体電解質を用いる既存のリチウムイオン二次電池と比較すれば容量と出力で劣る。あくまでも、安全・高信頼が特長のバッテリーである。

[図1]全固体電池の特長はあくまでも安全性と信頼性、現時点ではリチウムイオン二次電池の方が高性能
出典:写真は村田製作所、マクセル、パナソニック
全固体電池の特長はあくまでも安全性と信頼性、現時点ではリチウムイオン二次電池の方が高性能
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