No.025 特集:テクノロジーの進化がスポーツに変⾰をもたらす。

No.025

特集:テクノロジーの進化がスポーツに変⾰をもたらす。

Expert Interviewエキスパートインタビュー

「画像処理のF1」、Bリーグで磨く
未来のスポーツ・テクノロジー

2021.1.20

小山 英樹
(富士通 JAPANリージョン スポーツ・エンターテインメント統括部
シニアディレクター)

白水 敦子
(富士通 JAPANリージョン スポーツ・エンターテインメント統括部
シニアマネージャー)

「画像処理のF1」、Bリーグで磨く未来のスポーツ・テクノロジー

テクノロジーと人のつながりが、深まってきている。人工知能(AI)やIoTの発達によって、一人暮らしの高齢者や小さな子供の様子に目配りし、些細な異常や異変を敏感に察知できるITシステムが登場している。人と共存して働く協働ロボットも製造現場などで活用されるようになった。こうしたテクノロジーを、さらに進化させるためには何をしたらよいのだろうか。適用のハードルが高い応用先を見つけ、そこでブラッシュアップするのが一番だろう。突出した能力を持つ人が集まるプロスポーツの世界は、人とテクノロジーの関わりを極限まで深める絶好の実験場になる。ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ(Bリーグ)パートナーとして、画像認識技術の一種であるモーショントラッキング技術を応用した試合戦術や選手パフォーマンスの解析に取り組む同社 JAPANリージョン スポーツ・エンターテインメント統括部 シニアディレクターの小山英樹氏に、最新テクノロジーの応用によるスポーツの進化と技術発展への影響について聞いた。

(インタビュー・文/伊藤 元昭 写真:小山 和淳〈アマナ〉)

手持ちの優れた技術の可能性を、もっと広げたい

小山 英樹氏

── 人の動きを捉えてデータ化するモーショントラッキング技術は、そもそも、どのような用途を想定して開発された技術なのでしょうか。

小山 ── 富士通では、長年にわたって画像処理技術を研究してきました。そして、交通違反の対策に向けた高速道路を走るクルマのナンバー読み取りや監視カメラなど、社会インフラで画像を読み取るニーズに応える形で応用していました。そうした技術を全く違った用途に転用すると何ができるのか、応用の可能性を探りたいと考え、応用の候補の一つとしてスポーツへの応用を検討しました。

── 応用先として、なぜスポーツ、しかも、バスケットボールに応用することに決めたのでしょうか。

小山 ── 2013年に東京オリンピック/パラリンピックの招致が決まり、世界にアピールできる、その機会を生かして富士通として何かできないかと考えたのがスポーツに着目したきっかけです。ただし、オリンピックの場だけで自社の技術やサービスをアピールしたのでは、一過性の取り組みで終わってしまいます。オリンピックを契機にスポーツの分野でのITの活用を考えるなら、その後も継続的に取り組みノウハウを蓄積できる対象を選びたいと考えて、長く取り組めるスポーツを検討しました。そして、ちょうどその頃、立ち上がる予定だった日本のプロバスケットリーグである「Bリーグ」に着目したのです。

Bリーグには、既に運営方法が定まったスポーツリーグにはない、一緒に育っていけそうな期待感がありました。新しいリーグということもあって、これまでプロスポーツで取り組んでいなかった新しい取り組みにも積極的にチャレンジする気質があったことが魅力だったのです。また、Bリーグ設立の音頭を取っていた川淵三郎氏は、富士通と同じ古河グループの古河電工の出身で、人脈的にも親しかったという面もあります。

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