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空気や水の流れを数学的に解く流体力学。機械系で数学を扱うことが好きだったという伊藤慎一郎教授は、機械システムの効率を上げるために流体力学を駆使してきたが、スクリューのプロペラ形状を改良しても効率は2〜3%しか上がらなかった。そこで、機械システムの改良から生物へと研究対象を変えた。空を飛ぶ鳥や水中を泳ぐ魚などに目を移すと、わからないことばかりで、いつしか生物を取り巻く流体力学にのめり込むようになっていった。特に生物の泳ぎ方から多くを学び、その結果をスポーツに活かすようになった。流体力学を切り口に伊藤教授は、研究が実践につながる面白さを学生に伝えていく。
(インタビュー・文/津田 建二 写真/太田 篤志〈アマナ〉)
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高野 ── 伊藤先生の講義が面白く、示される資料がわかりやすかったため興味を持ちました。また笑いもあり、なごやかな雰囲気で、学生の身になって教えていただけそうだと思いました。入ってからも思っていた通り学生の身になって教えていただいています。
竹岡 ── スポーツ(野球)をやっているので、スポーツ流体力学に関わりたかったから、この研究室を選びました。普段見えないような流体からボールを可視化することに興味を持ちました。
竹岡 ── 野球のボールの研究もあるのですが、伊藤先生が取り組んでいるバレーボールの研究が面白そうなのでバレーボールの空気の流れの力学特性に取り組んでいます。
高野 ── シミュレーションにAI(機械学習)を応用するという研究を行っています。ナノメートル以上の大きいものと水分子のような小さいもののシミュレーションがあるのですが、私はミクロな分子一つひとつの座標や速度をシミュレーションします。得られたデータを集めて、ここに機械学習を当てはめて、座標や速度の特長を読み取ることで、新たな知見が得られると期待しています。AIを使えば今後、時間が経ったときの座標や速度を予測することにつながります。
高野 ── シミュレーションは実際に実現できないことを模擬する訳ですから、今はまだできていないことを、AIを使ってシミュレーションしてみることで、その様子を想像できます。今後それが実現できるようになればいいと思っています。今は、将来のエネルギー源となるメタンハイドレートの輸送や貯蔵をもっと安全に行えることにつなげたいと思います。また、この材料だけではなく他の高分子材料や金属材料に応用できることを視野に入れて研究しています。
竹岡 ── スポーツのプロチームでの使用により、ボールの特性がより鮮明にわかることで、次のオリンピックに向けてチームの戦略を立てたり、新しいボールの開発に役立てたりすることができるはずです。こうした研究を通じて日本のチームが強くなることに貢献できたらいいなと思います。
高野 ── 先生は週1回のゼミを開いていまして、そこでは学生が自分で考えた研究や実験を報告し、みんなで議論します。先生がそれに対して質問し、学生が答えるのですが、学生の説明する能力や理解力を身につけさせることを厳しく指導しています。
竹岡 ── 高野さんとほぼ同じですが、自主性を育んでくれるところがありがたいです。また、私の例ですが、わからないことがあると、とことんわかるまで何かの例えを使いなながら説明してくれます。
高野 ── 先ほどの続きのようですが、自分の研究を他人に伝える能力を養成してくれていると感じています。プレゼンのときのスライドを作る技術や見やすい資料やグラフの作り方を始め、わかりやすく伝える、ということに重点が置かれています。
竹岡 ── 実験してきた中で気づかなかった点を教えていただきました。違う角度から気づくことができました。
高野 ── シミュレーションにAIを応用する研究をしていますが、どれだけの精度が保証されているとか、AIを活用する時にわかっていないブラックボックスの部分が多いので、他の技術者にも説明できるように、もっと精度を上げていき、明らかにしていきたいと思います。
竹岡 ── 今まで研究してきたことから、今後は新しいバレーボールの開発に携わっていき、日本チームの強化に役立てていきたいと思います。
高野 芙巳生(たかの ふみき)さん
工学院大学 工学部機械工学科 4年
1998年生まれ。2021年3月工学院大学工学部機械工学科卒業後、
2021年4月工学院大学大学院 工学研究科 機械工学専攻に進学予定。
竹岡 拓海(たけおか たくみ)さん
工学院大学 工学部機械工学科 4年
1998年生まれ。2021年3月工学院大学工学部機械工学科卒業後、
2021年4月工学院大学大学院 工学研究科 機械工学専攻に進学予定。
津田 建二(つだ けんじ)
国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト。
現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニストとしても活躍。
半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。著書に「メガトレンド 半導体2014-2025」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)などがある。