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地球に最も近く、古くから人々の好奇心をかき立てて来た惑星「火星」。宇宙探査が進歩した現在、火星は新たな関心の対象となっている。NASAは外惑星探査の足がかりとして、民間宇宙企業SpaceXは未来の移住先として火星をターゲットにし始めた。今、火星探査はどこまで実現しているのだろうか。
現在の火星は、気温・気圧が低く、重力も地球の1/3程度と、人間の居住にはまったく適していない。だが、生命が存在する可能性が指摘されているほか、太陽系起源の解明、地球外での食料生産など、多彩な科学研究が行えると期待されている。人類にとって月が裏庭だとしたら、火星は隣近所。将来の宇宙進出のためには、火星で長期的に居住できる環境を構築することが欠かせない。
1970年代にバイキング1号、2号が火星着陸に成功したあと、80年代を通じて火星探査計画は停滞した。しかし、1997年のマーズ・パスファインダーを皮切りに、次々と探査機が送り込まれるようになる。火星震の観測、自律行動する探査車(ローバー)、火星の薄い大気を飛ぶヘリコプターなど、画期的な成果が相次いで上がっている。
2022年11月、「アルテミス計画」の大型ロケットが打ち上げられた。アルテミス計画は、2025年に月へ宇宙飛行士を送り込むことを目指す国際プロジェクトだが、有人火星探査も視野に入っている。最初の計画、アルテミスIでは無人のSLSロケットとオライオン宇宙船を月へ輸送。アルテミスIIでは有人試験飛行、月周回プラットフォーム「ゲートウェイ」整備。そして、アルテミスIIIで飛行士が月面着陸した後、月面基地を建設し、火星探査の準備に取りかかることになっている。
2022年現在、SpaceX社は、完全再使用型の二段式超大型ロケット「Starship」を開発中だ。Starshipは、先述のアルテミス計画において月への物資・人の輸送のほか、月着陸船の役割を担うことになっている。SpaceX社のイーロン・マスク氏は、将来的には地球と火星が再接近する2年ごとに、1機あたり100人が登場できるStarshipを火星に向けて1000機打ち上げる構想を語っている。
SpaceX社はStarshipによる火星着陸シミュレーションを公開している。しかし、9ヶ月に及ぶ地球-火星間の旅が人体にどのような影響を与えるか、どうやって火星に基地を建設するかといった課題に挑むのは、アルテミス計画が進展してからということになるだろう。 それでも、火星に向けての歩みは、わずかずつ進んでいる。2022年2月に火星に着陸したパーサヴィアランスは、二酸化炭素が主成分の大気から(1本の小さな木が生成するのと同等の)酸素生成に成功。京都大学と鹿島建設は、月や火星での生活基盤構築を目指して、人工重力施設の研究を開始した。 数十年、数世紀に及ぶであろう火星への道。遠大な目標は、人類の文明について新しい視点を持つことに繋がりそうだ。
滝澤 恭平(たきざわ きょうへい)
ハビタ代表。編集+ランドスケーププランナー。博士(工学)。水辺デザイン、グリーンインフラ、市民協働などを得意とする。著書に『ハビタ・ランドスケープ』。
山路 達也(やまじ てつや)
三重県出身。雑誌編集者を経て、ブックライター・エディター。テクノロジー、社会問題等をわかりやすく解説する手法に定評がある。構成・執筆協力として、『After GAFA』(小林弘人)、『小飼弾の超訳「お金」理論』(小飼弾)、『不条理な会社人生から自由になる方法』(橘玲)、『生まれが9割の世界をどう生きるか』(安藤寿康)など。