JavaScriptが無効になっています。
このWebサイトの全ての機能を利用するためにはJavaScriptを有効にする必要があります。

Interview
インタビュー

CO₂排出量の15%を占める製鉄、業界の枠を超えた協力で生み出す技術でゼロカーボン化

小林 能直
東京工業大学 教授
科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所 副所長
物質理工学院 材料系
2022.07.06
CO₂排出量の15%を占める製鉄、業界の枠を超えた協力で生み出す技術でゼロカーボン化

世界中が一丸となり、カーボンニュートラル達成を目指して取り組んでいる。エンジン車から電気自動車への転換や再生可能エネルギーの活用促進に関するニュース報道も増えた。しかし、実際の産業界や社会の営みの中には、電力を利用せず、化石燃料を燃やして得た動力や熱を直接利用するケースも多い。原料の投入から製品の完成まで、一貫して高温下での工程が続く製鉄も、電力に関係なくCO₂を大量排出している。こうした知られざる分野での脱炭素化なくして、カーボンニュートラル達成はない。ゼロカーボン製鉄の研究開発に取り組む東京工業大学 教授の小林能直氏に、製鉄での脱炭素化のアプローチと技術の社会実装について聞いた。

(インタビュー・文/伊藤 元昭 撮影/山中 智衛〈アマナ〉)

小林 能直 教授

日本のCO₂排出量の15%が製鉄から

── あらゆる業界・業種での脱炭素化が求められる現在、製鉄業界では、いかなる課題を抱えているのでしょうか。

小林 ── 現時点では、鉄を作る過程で大量のCO₂を排出しています。しかも、鉄は人類の文明を支える極めて重要な役割を担っているため、カーボンニュートラルの達成を目指す時代においては、製鉄でCO₂を排出していることの影響は多方面に及びます。

鉄は、構造材料として、また機能性材料として数々の優れた特性を備えた物質です。さらに、大量生産が可能で、加工しやすいため、あらゆる工業製品や建築物などに広く使われています。鉄のような材料を作る企業は産業界のサプライチェーンの最も川上に位置するため、製鉄でCO₂を大量排出していると、鉄を利用して生産される川下の自動車、多様な機械、建築物、社会インフラなどが、すべてグリーンではなくなってしまいます。鉄は産業の発展に欠かせない「産業の米」であり、製鉄のゼロカーボン化は不可避な課題です。

鉄は、山で採掘した酸化鉄を含む鉄鉱石を、化石燃料である石炭(コークス)を利用して高温下で還元して作ります。その際、石炭は、熱源であると共に還元剤としても機能します。そして、石炭を還元材として使う必然的結果として、CO₂を排出します。

これまで鉄を利用して製品を作る自動車業界のような企業は、材料生産時のCO₂排出量について責任を問われることはありませんでした。ところが近年、自動車業界や建築業界なども、事業で扱う材料に関して脱炭素の責任を負うようになりました。CO₂を大量排出して作った材料を、製品に利用しにくい時代になったわけです。

── そもそも、鉄を生産する際に、どの程度のCO₂を排出しているのでしょうか。

小林 ── 2021年10月の経済産業省の資料では、日本全体で排出しているCO₂のうち、約15%近くを鉄鋼業で排出しています(図1)。これは、かなり大きな数字です。世界の鉄鋼生産量は年間13~15億トンであり、そのうち1億トン弱を日本で生産しています。元々、日本の鉄鋼メーカーは、世界に誇れる環境にやさしい生産プロセスを開発し、導入してきた経緯があります。このため、1億トン弱を生産しながら、世界的に見れば、これでもCO₂の排出が抑えられている方だと思います。

日本のCO₂全排出量のうち鉄鋼業で約14%を排出している
[図1]日本のCO₂全排出量のうち鉄鋼業で約14%を排出している
出典:「トランジションファイナンス」に関する鉄鋼分野における技術ロードマップ 経済産業省 2021年10月
小林 能直 教授

鉄鉱石から鉄を作る際の還元材である石炭がCO₂排出の主因

── 製鉄の工程の、どの部分でCO₂が排出されているのでしょうか。

小林 ── そもそも、これまで人類が鉄を大量に作り、使い続けてきた理由は、高炉という極めて高い効率で鉄を生産できる仕組みが発明されたからです。高炉とは鉄鉱石を石炭で還元する、高さ約40m、もしくは50mの反応容器のことであり、人類最高の発明の1つだと言えます。

製鉄工場では、高炉に石炭を固めたコークスと鉄鉱石を層状に積み上げます。その下部から熱風を吹き込むことで、入ってきた酸素(O₂)と石炭中の炭素(C)が反応して一酸化炭素(CO)が発生。このCOが吹き上げられて、鉄鉱石中の酸化鉄(Fe₂O₃、Fe₃O₄、FeO)を還元します。まず、この反応の過程でCO₂が発生します。そして、ここが製鉄の工程で最も大量にCO₂を発生させる部分です。

高炉の中では段階的に還元されて最後に鉄になるのですが、鉄になっても化学反応は止まらず、鉄とCが反応してCを大量に含む溶けた鉄である溶銑(ようせん)ができます。溶銑には、ケイ素やリンなどの不純物も含まれています。

そこで、転炉と呼ぶ、高炉よりも一回り小型の反応容器に入れて不純物を取り除き、鉄の純度を高める精錬と呼ぶ工程を行います。ここでも鉄に含まれたCを酸化して取り出すため、高炉ほどではありませんがCO₂が発生します。また、シリコンやリンなどの不純物は、酸化カルシウム(CaO:生石灰)と反応させて取り除くのですが、CaOは山から採掘した石灰石(CaCO₃)を焼いて分解して作るため、その際にもCO₂が発生します。

── これまで製鉄業界では、製鉄を脱炭素化するために、どのような手法が導入されているのでしょうか。

小林 ── 高炉でのCO₂発生を抑えるため、還元材として水素を利用する方法が試されています。「水素還元製鉄」と呼ばれる方法です。水素を熱源・還元剤として利用すれば、CO₂の代わりに水が排出されます。現在試されている方法では、石炭を蒸し焼きにしてコークスを作る際に副産物として生まれるメタン(CH₄)から作った水素を利用します。つまり、石炭と水素の両方を利用し、水素を利用する分だけCO₂の発生を抑えるのです。研究段階の取り組みとしては、工場外から水素を別途導入して、還元材を100%水素にする技術の開発も進んでいます。

日本では、「水素活用還元プロセス技術(COURSE50)」と呼ぶ、高炉に水素を何割か吹き込んでCO₂の排出量を減らす技術を開発・検証するプロジェクトが行われています。このプロジェクトは、世界をリードする日本の製鉄業界の技術の粋を結集した取り組みです。さらに、「Super COURSE50」と呼ぶ、CO₂排出量の削減幅を約50%にまで向上させることを目指す取り組みも計画されています。ただし、まだ実用化の段階ではありません。コスト面など、実用化までに解決すべき課題があるのです。

その一方で、欧州では既に実用化に踏み切った企業が出てきています。例えば、スウェーデンの大手鉄鋼会社・SSABは、既に水素還元製鉄での粗鋼の生産を開始しています。欧州で水素還元製鉄の取り組みが進んでいる背景には、ゼロカーボン材料を求める市場の要求が強いことと、再生可能エネルギーの貯蔵形態の1つとして水素を調達しやすい環境が整っていることがあります。

また、別の脱炭素化のアプローチもあります。市場での役割を終えた鉄製品をリサイクルする方法です。既に還元する必要がない廃材を原料にするため、CO₂の排出量を劇的に削減できます。鉄はリサイクルの優等生であり、一度作った鉄製品の約9割を再利用できています。これまでリサイクルできなかったような低品質の原料を対象にできるようにする技術開発も進められています。

小林 能直 教授

生み出されたCO₂を熱源・還元材として再利用

── 東京工業大学では、具体的に、どのような方法を利用して、ゼロカーボンでの鉄の生産を実現しようとしているのでしょうか。

小林 ── 「炭素循環製鉄」と呼ぶ技術を研究開発しています。石炭の代わりに、還元性を備え反応性に優れた一酸化炭素(CO)を活用する方法です。ただし、熱源・還元材を石炭からCOに替えただけでは、酸化鉄を鉄へと還元した後にCO₂が発生します。そこで、発生したCO₂を電気分解し、COに戻してリサイクルするのです。つまり、製鉄の工程中に発生したCO₂を大気に排出させないわけです。CO₂をCOとO₂へと高効率で分解する装置も、東工大 ゼロカーボンエネルギー研究所 加藤之貴所長、高須大輝准教授のグループが開発しています。

鉄冶金学験炉群 鉄冶金学験炉群
鉄冶金学験炉群
1600度以上の高温での冶金反応実験を行うため、耐火物を中心としたアセンブリーの装置が並ぶ(左)。縦型電気抵抗炉の下部の様子。可視光領域の放射光が見られ、反応管の下部は冷却されている(右)。
自動回転研磨機 自動回転研磨機
自動回転研磨機
金属組織観察のため、試料断面を研磨するのに使用する(左)。酸素・窒素・水素同時分析装置および炭素・硫黄同時分析装置。不活性ガス抽出赤外吸収法および燃焼法により、ガス元素および非金属元素の濃度の定量を精確に行うことができる(右)。

── 電気分解のために電力を使うと、新たな脱炭素化の課題を抱えることになりませんか。

小林 ── その通りです。炭素循環製鉄は、そのままでは実践的な解決法が見えなかった製鉄における脱炭素化を、解決に向けた筋道が見えている電力での脱炭素化の問題に帰着させる方法だと言えます。これは、自動車での脱炭素化と全く同じアプローチです。現在、エンジン車を電気自動車に転換する動きが加速していますが、これもエンジンのままでは解決しない脱炭素化の問題を、電化して解決可能な問題に転換したものと言えます。

一般に電力は、電気・電子的な仕組みで制御しやすいエネルギーの形態であり、様々な省エネルギー化の手法を適用できます。このため、化石燃料を燃やして得た熱や動力を直接利用していたケースも、電化することで問題解決が容易になります。

炭素循環製鉄と電気自動車に共通しているのは、電力を創出する際のゼロカーボン化をセットで考えないと、地球温暖化の抑制に向けたカーボンニュートラル達成には寄与しないことです。製鉄だけ、自動車だけといった部分的脱炭素化を考えるのではなく、全体を俯瞰して最適化した戦略の策定と、その実践が求められます。

小林 能直 教授

── 欧州には水素還元製鉄を適用しやすい環境があると伺いました。では、日本のゼロカーボン製鉄の手段として向くのは、水素還元製鉄と炭素循環製鉄のどちらでしょうか。

小林 ── 水素還元製鉄では、水素をどのように調達するかが重要になります。国内で電気分解により水素を作る場合は、電力がゼロカーボンでなければなりません。海外から水素を調達する場合は、圧縮や運送中の損失によるコストが大きい点が問題になります。

一方、炭素循環製鉄でも、CO₂をCOに電気分解するための電力がゼロカーボンである必要があります。最終的には、どちらが製鉄の還元プロセスで使い易いかを見極めることになるでしょう。ただし、水素で酸化鉄を還元する場合には、吸熱反応で熱を奪われるため別の水素の燃焼で補う必要があります。一方、COで還元する場合には、発熱反応になるため、水素よりも熱を補償しやすい面があります。

── では、電気分解で用いる電力は、どのように作ることを想定していますか。

小林 ── 当然、化石燃料を燃やして作った電力ではなく、太陽光、風力、波力、水力、地熱など様々な再生可能エネルギー群を中心に据えています。ただし、製鉄に限りませんが、産業を支える電力を安定的に供給していくことを担保するためには、同時に原子力の活用も重要になると考えています。原子力の活用には安全性の確保が前提条件になりますが、核融合も含めた新しい世代の原子炉システムによる安全性向上に期待しています。この点は、水素還元製鉄やその他の産業分野でも同様に抱えている課題だと思います。

── 水素還元製鉄も炭素循環製鉄も、長年使い続けてきた優れた仕組みである高炉とは別の技術を積み上げていかなければならないのですから、チャレンジングな取り組みですね。

小林 ── 還元後に生み出されるCO₂を処理する方法として、CO₂を固定化・貯留するCCS(Carbon Capture and Storage)、燃料や化学品などを作る原料として再利用するCCU(Carbon Capture and Utilization)などもあります。ただし、これらの方法は、貯めた後をどうするのか、また再利用した後をどうするのかが見えていません。いずれCO₂となって大気に拡散するのでは、問題を先送りしただけです。温暖化対策としての効果と経済合理性の双方を勘案して、継続的に利用できる技術が必須だと考えています。

── 転炉で行う精錬に関連して発生するCO₂の削減には何か方策はあるのでしょうか。

小林 ── まず、転炉内で精錬に有効に使われなかった余剰分の生石灰にはCO₂を吸収する能力がありますから、転炉で発生するCO₂の排出量を削減する役割が期待できます。

さらに、銑鉄に含まれていた不純物を吸収した酸化炭素の集合体であるスラグは、植物の栄養源にもなるのです。そこで、毒性のない部分を海に散布して海洋藻の育成に利用し、CO₂の吸収量を増やすことも1つの案だと考えています。これからは、こうした意外な領域でのカーボンの吸収余地を探ることが重要になるのではないでしょうか。

小林 能直 教授

実のある脱炭素化には業界・企業の枠を超えた協力が必須

── ゼロカーボン製鉄を社会実装する環境や時代観についてお聞きしたいと思います。欧州を起点として、国境炭素税などカーボンプライシングの仕組みの導入が世界に広がり、企業のビジネスにおいて、CO₂の排出をコストとして捉える動きが出てきています。また、アップル(アメリカ)をはじめとする多くの企業が、CO₂の排出量が多い手段で生産した部材は、自社製品には採用しないと明言するようになりました。サプライチェーンの最上流に位置する製鉄での脱炭素化は、電力価格や人件費、法人税などと同等に、あらゆる業種の企業の国際競争力に大きな影響を及ぼす要因になりそうです。

小林 ── カーボンニュートラルに向けた取り組みと各企業の経済合理性の間には、強い関係があります。製鉄ならば、今まで通りに鉄鉱石を石炭で還元した方が簡単ですし、現時点では経済合理性の点から理にかなっています。このため、ゼロカーボン技術の導入は、とかくコスト増の要因と見られがちです。

もちろん、現状の経済合理性に沿うかたちでの技術開発も重要ですが、カーボンニュートラル達成への歩みを加速するために、経済合理性の部分を再定義する必要があるのかもしれません。新しい規制や税制が取り組みを加速させるかどうかはわかりませんが、資本家がゼロカーボンに向けた取り組みに積極的な企業を選んで投資するといったインセンティブは必要な気がします。

ゼロカーボン技術への挑戦は、企業にとっての負荷は高いのですが、新しい経済環境に適応した事業体制を整えるという観点から見れば、産業を強くする取り組みであることは確実だと思います。

── これまでは、製鉄業界や電力業界など、それぞれの業界で個別にゼロカーボン技術の確立を目指していたように見えます。これからは業界の枠を超えた協力関係と調整力が必要になりそうです。

小林 ── カーボンニュートラル達成に向けて、産業構造自体にイノベーションが求められているのだと思います。これまで分業化が進んできた各業界を集め、役割を統合していく必要があります。

技術の研究開発において、そうした業界を超えた取り組みを推し進めるための研究開発プラットフォームとして、東京工業大学 ゼロカーボンエネルギー研究所では、2022年4月に「Tokyo Tech GXI(Green Transformation Initiative)」を設立しました(図2)。多様な業界の方々が集う出会いの場を提供し、東京工業大学がそうした方々の橋渡し役として、実のある産学連携を後押ししていく仕組みです。

東京工業大学には、理工系を中心とした様々な分野の約1000人の教員が在籍し、そのうちエネルギー関係者は約400人もいます。これまでの産学連携は教員と企業が個別の関係を築いて取り組んでいました。GXIでは、企業が抱える問題や目指す技術の実現に向けて、こうした多様な人材の知見とスキルを結集し、大学が保有するネットワークを生かして、オール東京工業大学の体制で支援します。

2022年5月時点で、エネルギー、材料、都市システム、通信、ゼネコンなど多様な業界の36社が既に参画(予定も含む)しています。そして、これまで出会うことさえなかったと思われる技術者たちが、協力してイノベーション創出に取り組んでいます。

ゼロカーボン技術の確立と社会実装に向けたTokyo Tech GXIの役割
[図2]ゼロカーボン技術の確立と社会実装に向けたTokyo Tech GXIの役割
提供:東京工業大学

── 業界を超えた協力関係は、中立な立場の存在があればこそ成立するわけで、それこそが大学に期待される役割ですね。

小林 ── ゼロカーボン技術の確立には、これまでの枠組みとは違った研究開発体制が不可欠です。「知のサロン」と呼べるような、多様な知が集まり、融合して、構造化していくための場が必要になると感じていました。社会実装をしていく際にも、大学が中心となって多様な業界の方々が、それぞれの領域で取り組めるような企画、プロジェクトの推進、業界間調整をしていくことが重要になると考えています。

小林 能直 教授

カーボンニュートラル達成に向けた技術発展の見通しを明らかに

── GXIでは、ゼロカーボン製鉄をテーマにして、具体的にどのような研究プロジェクトを進めようとしているのでしょうか。

小林 ── 文部科学省の令和4年度の概算要求の中で予算化された事業として、炭素循環型製鉄の技術を中心に据えた、社会実装を念頭に置く炭素循環産業システム研究活動を開始しました。また、東京工業大学は、日本製鉄との間で包括的連携を締結しており、それぞれの個別課題を総合的に取りまとめて、組織同士が密に連携して取り組む体制を整えています。こうしたつながりを生かしながら、研究を進めていきたいと思っています。

── 鉄は、サプライチェーンの起点となるモノであり、その進化が自社製品の開発や生産に影響が及ぶ企業は多いと思います。そうした状況下で製鉄にイノベーションを起こす際には、製鉄業界とユーザーの各業界で共有するロードマップが必要だと感じます。現在、社会実装を見据えたゼロカーボン技術のロードマップはあるのでしょうか。

小林 ── 製鉄業界には、日本鉄鋼協会が描いた製銑分野や製鋼分野などの技術開発ロードマップがあります。しかし、日本政府が目指す2050年のカーボンニュートラル達成に向けて合意形成されたロードマップはないように思えます。

まさに今、ロードマップを早急に策定する必要性をひしひしと感じています。そのための仕込みを研究活動の1年目である2022年度に進めていきます。技術を開発し、鉄を生産する企業が、自社の事業がどのくらい進展しているのか、時間軸の中で相対的に把握できる数値目標指標KPI(Key Performance Indicator)と、マイルストーンを視覚化していくことが重要だと思います。

── 効果的なゼロカーボン技術を開発するためには、業界や技術分野の枠を超えたイノベーションが求められますから、ロードマップを描く役は利害関係がない大学が適任だと思えます。

小林 ── そうかもしれません。様々な技術を俯瞰し、適宜融合させることができる場として大学、GXIを使っていただければと思います。

GXIが目指すべきことは、人類の持続的かつ、発展的な幸福の最大化に貢献することだと考えています。GXを先導し、どこまで技術開発を推し進めていけるのか、あらかじめゴールを決めて動くのではなく、まずは遮二無二進んで、先行きの見通しを明らかにすることが重要だと思います。そして、世界のカーボンニュートラル達成に向けた技術の研究拠点を目指したいと思っています。

東京工業大学 ゼロカーボンエネルギー研究所
Profile
小林 能直氏

小林 能直(こばやし よしなお)

東京工業大学 ゼロカーボンエネルギー研究所・教授

1969年生まれ。1993年に東京大学工学部金属工学科卒業、1998年に同大学院工学系研究科博士後期課程を修了し博士(工学)を取得。同年4月より旧・科学技術庁金属材料技術研究所(現・国立研究開発法人 物質・材料研究機構)研究員となり、金属精錬/凝固プロセス・リサイクルの研究に取り組む。

その後2008年1月に東京工業大学 大学院理工学研究科准教授、2015年4月に東京工業大学 原子炉工学研究所教授を経て、2022年4月に東京工業大学 ゼロカーボンエネルギー研究所副所長(現職)。高度鉄冶金技術と原子力安全技術、エネルギー材料学に取り組み、カーボンニュートラル社会実現への貢献を目指す。

Writer

伊藤 元昭(いとう もとあき)

株式会社エンライト 代表

富士通の技術者として3年間の半導体開発、日経マイクロデバイスや日経エレクトロニクス、日経BP半導体リサーチなどの記者・デスク・編集長として12年間のジャーナリスト活動、日経BP社と三菱商事の合弁シンクタンクであるテクノアソシエーツのコンサルタントとして6年間のメーカー事業支援活動、日経BP社 技術情報グループの広告部門の広告プロデューサとして4年間のマーケティング支援活動を経験。

2014年に独立して株式会社エンライトを設立した。同社では、技術の価値を、狙った相手に、的確に伝えるための方法を考え、実践する技術マーケティングに特化した支援サービスを、技術系企業を中心に提供している。

URL: http://www.enlight-inc.co.jp/

あわせて読みたい

Interview

新着記事

よく読まれている記事

Loading...
Loading...