No.013 特集 : 難病の克服を目指す
連載02 デジタル化した触覚がUIとメディアを変える
Series Report

多様化する触感表現の技術

触覚は、極めて多彩な認知機能である。一言で触覚と言っても、検知対象となる現象は、圧力・振動・動き・温度・静電気など多様だ。また、人間が触覚を持つ部位も体全体に分布しており、目に集中する視覚や耳に集中する聴覚とは異なる。このため、感触を再現するための技術は、自然と多様化する方向に進む。現在の触覚フィードバック技術の開発は、より多くのモノの感触を、よりリアルに再現する方向に進化している。その中の代表例を紹介しよう。

アルプス電気は、2016年10月に開催された「CEATEC JAPAN 2016」で、様々な触感を作り出す4つの触覚フィードバック技術を披露した(図3)。これは、現時点における実用レベルでの技術開発の到達点がよく分かる技術である。同社が展示した技術の中には既に製品化されているものもある。

アルプス電気がCEATEC JAPAN 2016で展示した4つの触覚フィードバック技術
[図3] アルプス電気がCEATEC JAPAN 2016で展示した4つの触覚フィードバック技術
左から順に「ハプティックリアクタ」「ハプティックパッド」「ハプティックトリガー」
「ハプティックトリガープラス」
写真:CEATEC JAPAN 2016のアルプス電気のブースで撮影

まず、振動によって映像や音楽に臨場感を与える「ハプティックリアクタ」。ゲーム機のコントローラーのように手で持って操作し、ボールを落としたときの振動や、ギター、ドラムといった楽器の振動を感じ取ることができる。低周波と高周波の振動を重ね合わせることで、様々な感触を再現可能だという。

次は、圧電材料を用いたアクチュエーターの振動で、モノの素材表面の質感を表現する「ハプティックパッド」。ディスプレイに映したデニム、タイル、モルタルといった素材映像の上をタッチパッドでなぞると、タッチパッドからざらざら感や凸凹感を感じることができる。タイルの目地で感触が変化する様子なども再現されており、視覚と触覚の合わせ技で、よりリアルさを増す。

その次は、圧力の変化で素材の固さを表現する「ハプティックトリガー」。カプセル型の装置をつまむと、グミやミニトマト、すだちなどの弾力や手応えを感じることができる。ミニトマトのデモでは、強くつまむとつぶれて手応えがなくなり、すだちでは、搾る感触を再現する。また、心臓のグラフィックスをつまむと鼓動が感じられるといったデモもあった。

最後は、振動や圧力による触感表現に加え、ペルチェ素子を使って温度も表現する「ハプティックトリガープラス」。コップ型の装置にある2つのボタンから振動と温度が伝わり、さらにボタンを押し込むことでモノの固さや弾力を感じることができる。コップに水が注がれると、感触だけでなく中の水の冷たさや熱さも感じた。また、コップ型装置のボタンを押し込むと、紙コップがつぶれる感触も体験できる。

手だけではなく、歩行感を足に伝える技術も登場している。CES 2017においてcerevoは、VR映像や音声に合わせて、手と足に触覚をフィードバックするシューズとグローブを発表した(図4)。これにより、砂漠、草原、水辺といった地面を踏みしめるときの感触の違いや、キャラクターが装着している靴の種類による感覚をVR空間で再現する。シューズとグローブには、9軸(3軸加速度、3軸角速度、3軸地磁気)センサーを内蔵し、VRゲームの入力デバイスとしても利用できる。

erevoの足と手に触感を与えるVR用のシューズとグローブ
[図4] erevoの足と手に触感を与えるVR用のシューズとグローブ
出典:cerevoのニュースリリース

研究レベルの技術では、アクチュエーターなど機械的な機構を使わずに、超音波や超短パルスレーザーで作り出したプラズマを使って、空中に触感を持った場を作り出す技術も開発されている。この技術については、触覚を伝えるメディアについて解説する第3回の中でもう少し詳しく紹介したいと思う。

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