No.008 特集:次世代マテリアル
連載02 人々と社会の未来を支える半導体の応用事例集
Series Report

人間をはるかに超える五感

最初は、知覚・識別・認識機能。これには、画像や音声、加速度、温度など、周辺環境や動作状況を把握するためのデータを取り込む、さまざまなセンサーが使われている。さらに、マイコン(制御命令主体のマイクロコントローラー)やDSP(積和演算専用のマイクロプロセッサ)を使って、取り込んだデータを解析。ロボットの制御に利用できる情報を抽出している。

ロボットは、生き物の機能や動きを模して作られる場合が多い。遠方から小さな獲物を見つける鷹、仲間や外敵の匂いを嗅ぎ分ける犬など、驚異的な知覚能力を持った生き物がいる。ロボットのセンサーもまた、人間の五感をはるかに超えるまでに進化している。例えばロボットに視覚を与えるCMOSイメージセンサー。解像度が向上し、より細かいモノまで判別できるようになった。それだけではなく、暗闇の中にあるモノ、目にも留まらぬ速さで動くモノも捕捉できる。生き物の感覚を模しながら、はるかに超えた性能を実現すること。これが現在のセンサー開発が目指していることであり、ロボットに組み込む知覚・識別・認識機能の進化の方向なのだ(図2)。

CMOSセンサーの図
[図2] ロボットは人間の五感を超える感覚を持ち始めた

その場の空気を読むロボット

また近年、センサーで得たデータから意味のある情報を取り出す技術も目を見張る進歩を遂げている。

例えば、デジタルカメラでは、被写体の中から人を判別できるだけではなく、子供か大人か、男性か女性か、笑顔であるかどうかも判別できるようになった。そして子供が笑顔の時だけシャッターが下りるカメラが製品化された。

これまでの機械では、利用者にとって操作しやすいユーザーインターフェースを開発することがとても重要だった。これに対しロボットでは、周辺の環境や状態を自ら判断し、自律的に動く仕組みを作り込むことが重要になる。ロボット自身がその場の空気を読む力が求められるのだ。マイコンの高性能化とアルゴリズム開発の進歩で、ロボットは日に日に鋭い感性を獲得しつつある。

大きな機械を、精密かつ俊敏に動かす

次は、モーター制御。ロボットにメカニクスの要素がある以上、機械的な動きを生み出すモーターを制御する仕組みは欠かせない。大きなモノを動かすパワフルなロボットなのか。それとも複雑で繊細な動きが要求されるロボットなのか。ロボットが行う仕事の内容によって、モーター制御に使われる半導体デバイスの仕様は大きく変わってくる。

モーター制御には、大きく2種類の半導体デバイスが使われる。ひとつは、動力を生み出すモーターを駆動するためのドライバーやスイッチ素子といったパワー半導体。パワー半導体は、当然大きなロボットほど高出力のものが必要になり、複雑な動きをさせる場合には搭載するモーター数に合わせて使う数が増える。

もうひとつは、モーターの動きをきめ細かく制御するためのコントローラー。通常はマイコンが使われる。ここでは、要求される動作やモーターにかかる負荷の変動に合わせて、瞬時かつ精密にトルク(回転する物体が持つ回転方向にねじる強さ)などを制御しなければならない。そのため、複雑な数値演算を多用することになり、思いのほか高性能なマイコンで処理している(図3)。

高度な半導体の図
[図3] ロボットには多くの高度な半導体が使われている

中も外もネットワークだらけ

最後にネットワーク機能。大きなロボットの各部分同士をつないだり、複数台のロボット同士をつないで連携動作させたりするため、リアルタイム性に優れたネットワーク技術が求められる。また、ロボットをクラウドにつないで、より高度な機能を実現する試みも進んできている。このため、IT系ネットワークへの接続機能も必要になってきた。こうした機能は、マイコン内の周辺回路やDSP、通信プロトコル処理IC(通信する手順に従ってデータを処理するIC)、FPGA(現場でプログラムできるロジックIC)などで実装することになる。

現時点で、ロボット向けに特化したネットワーク技術はない。あえて言えば、ファクトリオートメーション(工場の自動化)向けのネットワーク技術がそれに当たるかも知れない。今後、ロボット向けネットワーク技術として、大容量の情報を瞬時にやりとりできる技術、リアルタイム性の高い技術、信頼性の高い技術といった、際立った特徴を持った技術が求められる可能性がある。IT機器向けや車載向けのネットワーク技術なども含めて、必要に応じて使い分けることになるだろう。

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