No.008 特集:次世代マテリアル
連載02 人々と社会の未来を支える半導体の応用事例集
Series Report

ロボットは多品種少量生産品

さて、今後のロボットはどのような方向に進化していくのだろうか。そしてそこでは、どのような半導体が求められるようになるのだろうか。ロボットは、今後「多様化」「知能化」「高信頼化」の3つの切り口から進化しそうだ(図4)。

いろいろな仕事をこなせる人型ロボット、ヒューマノイドが開発されれば一見便利そうだ。しかし実際には、特定の仕事に特化したロボットを作った方が、作業効率がよい場合が多い。おそらくロボットは当面の間、利用シーンの拡大に伴って「多様化」していく多品種少量製品の可能性が高い。

そこで、より多彩な仕様のロボットを、開発コストを抑えながら設計・製造できる仕掛けが求められる。これを半導体デバイスに対する要求に焼き直すと、組み込む機能を柔軟にプログラムできる半導体デバイスの適用範囲が広がることになる。中でも汎用性が高いマイクロプロセッサーと、ハードウェアも自由に構成できるFPGAの利用範囲が拡大すると思われる。

高度な半導体の活用で、ロボットは3つの切り口で進化の図
[図4] 高度な半導体の活用で、ロボットは3つの切り口で進化

多くのロボットが知恵を共有しながら成長

産業用ロボットは、職人の技を学習させることで、自律的に状況判断しながら作業をこなせるようになる。これからのロボットは、使えば使うほど効率よく仕事をこなす方法を学習していく方向へと「知能化」していきそうだ。これを、近年急激な進歩を遂げている機械学習(人工知能)技術が支えることだろう。

ソフトバンクは、経験を学習して人に接する対応が成長するロボット「Pepper(ペッパー)」の販売を開始した。クラウド上に置いた人工知能が、さまざまな家庭や職場にあるPepperから経験を集め、これを集合知にして、加速度的に成長していく。自分の経験も糧にできない私などは、相当まずいことになりそうだ。こうしたクラウドを使った人工知能では、ロボット本体だけではなく、データセンターに高度な情報処理能力と大容量のメモリーが必須になる。

徹底した高信頼化は自律動作の大前提

ロボットは人やモノと係わり合って、自律的に仕事をこなす機械である。安全の確保について、ユーザーが手出しできる部分は極めて少ない。圧倒的にロボットメーカーに委ねられる部分が多いのだ。このため、他の工業製品以上に「高信頼化」を追求していくことになる。

2014年2月1日に、国際標準化機構(ISO)は、生活支援ロボットの安全性に関する国際標準化規格「ISO13482」を発行した。日本の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が提案し、出来上がったロボットの安全性を規定した初めての規格である。高信頼化を追求する流れに沿って、半導体デバイスとそれを利用するための開発環境もまた、機能安全規格の準拠など一層の信頼性向上が求められることになろう。

今後ますます少子高齢化が進む日本。"ロボット大国"であるだけではなく、"ロボット利用大国"になっていくことだろう。世界で最もロボットを必要としている日本が、ユーザー視点で半導体デバイスの活用を考えることで、世界のロボット開発をリードしていくに違いない。次回は、今後成長が期待されているIoT(インターネットオブシングス)に見る例を紹介する。IoTは、あらゆるモノがインターネットにつながるコンセプトを含み、そこに新しい未来を見ることができる。

Writer

伊藤 元昭

株式会社エンライト 代表。
富士通の技術者として3年間の半導体開発、日経マイクロデバイスや日経エレクトロニクス、日経BP半導体リサーチなどの記者・デスク・編集長として12年間のジャーナリスト活動、日経BP社と三菱商事の合弁シンクタンクであるテクノアソシエーツのコンサルタントとして6年間のメーカー事業支援活動、日経BP社 技術情報グループの広告部門の広告プロデューサとして4年間のマーケティング支援活動を経験。2014年に独立して株式会社エンライトを設立した。同社では、技術の価値を、狙った相手に、的確に伝えるための方法を考え、実践する技術マーケティングに特化した支援サービスを、技術系企業を中心に提供している。

URL: http://www.enlight-inc.co.jp/

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