No.012 特集:にっぽんの自然エネルギー
連載02 省エネを創り出すパワー半導体
Series Report

インフィニオン社は、インターナショナルレクティファイア社を買収したことで、GaNパワー半導体を手に入れた。GaNやSiCトランジスタは、シリコンのIGBTと比べると高速である。また、シリコンのMOSトランジスタと比較すると、同じような電流容量に設計するなら、オン抵抗が小さくなるか、出力容量が小さくなる。つまり、オン抵抗をシリコンと同じくらいにするなら面積が大きくなり、逆に出力容量を増やさないように設計すればオン抵抗が高くなるわけだ。インフィニオン社の分析によれば、消費電力を上げずに高速動作させる用途は、GaNの方がSiCよりもむしろ多いとしている(図5)。

さまざまなパワー半導体トランジスタのカバー範囲
[図5] GaNが最も高速に動作できるため、ワイヤレス送信機のようにパワーが必要な場合にはGaNが向く
出典:インフィニオン社

カナダのGaN Systems社はファブレス企業だが、GaNの量産化に向けその歩留まりを上げるための設計上の工夫を行っている。同社は、6インチのシリコンウェーハ上にGaN層を形成する手法を使っているが、これだけでは歩留まりは上がらない。そこで「アイランド技術(Island Technology)」と呼ばれる設計手法を使う。これは、GaNノーマリオフ型*2パワートランジスタを小さな小信号トランジスタに分割し、それらをつなぎ合わせた構造を持つ。元々パワートランジスタの等価回路というのは、小信号トランジスタを多数並列接続したようなものだ。

また、接続の仕方に工夫があり、図6のように小さなMOSトランジスタのソース電極を表に出したセル(緑色)と、ドレイン電極を表に出したセル(青色)を交互に並べ、櫛型構造でドレインとソースの配線をつないでいく。そしてゲートは、別の端子として表面から取り出す。すると、たとえセルの1つが故障していても、ドレインまたはソースの配線が接続されているため、電流が少し減少するだけで不良にはならない。このため、歩留まりが90%くらいになるという。従来のGaNトランジスタは歩留まりが低く高コストなので、この数字は驚異的だ。

パワーMOSFETとIGBTトランジスタの構造
[図6] アイランドのセルごとにドレインかソースの電極が表に出ており、それをつなげて配線電極とする
出典:GaN Systems

[ 脚注 ]

*2
ノーマリオフ型: MOSなどの電界効果トランジスタには入力のゲート電圧がゼロでも電流が流れるノーマリオン型と、流れないノーマリオフ型がある。ノーマリオフ型の方が制御は難しい。

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