No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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地球環境を壊さず、効率良く宇宙に物資を運べることが
宇宙エレベーターの利点

現在、宇宙空間に物資や人間を運ぶ手段として使われている宇宙ロケットには、さまざまな問題がある。中でも大きいのが、地球環境に対する影響である。固体燃料ロケットが出す塩素ガスは、オゾン層と化学反応を起こし、オゾン層を減少させる恐れがある。また、宇宙ロケットは、多量の燃料を消費して大気圏を脱出するため、乗り物として見た場合の効率は非常に悪い。ロケットが運べるペイロード(積載重量)は、全重量の数%に過ぎないのだ。しかし、宇宙エレベーターの場合、クライマーが上がったときに使ったエネルギーを下りる際の勢いを利用して回収することができ、外部からのエネルギー供給も可能であるため、ロケットに比べて遙かに効率良く、物資などを宇宙に運ぶことができる。日本航空宇宙学会の軌道エレベーター検討委員会の委員を務める青木義男教授は以下のように述べている。「今後、スペースデブリと呼ばれる宇宙のゴミが増えていくと、そもそもロケット自体を打ち上げるのが困難になってきます。宇宙エレベーターを使って、静止軌道上やさらに高い場所まで衛星などを運び、そこから宇宙空間に放出するようにすれば、大きなロケットを使わずに、衛星などを軌道に乗せることができます」

また、ロケットの打ち上げは、天候にも影響されやすく、物資を次々に宇宙に運びたくとも、スケジュール通りにいかないことが多い。宇宙エレベーターは、ロケットに比べて天候の影響を受けにくいことも利点だ。

宇宙エレベーターの実現には
人類の意識改革が必要

このように宇宙エレベーターは、ロケットに代わる宇宙への物資移送手段として、非常に有望である。しかし、その実現には、さまざまな未解決の課題をクリアしなければならない。まずは、技術的な問題がある。カーボンナノチューブの理論的な強度は、確かにテザーに要求される強度をクリアしているが、その強度を保ったまま、10万km近くにもなるテザーを製造する技術は現時点ではまだない。青木氏は、2030年頃にはそうした技術が確立すると想定しており、その時点から建造を開始すれば、2050年頃に完成するという。

次に、国際政治的な側面の問題が挙げられる。宇宙エレベーターのような、今後の人類の発展や経済を大きく左右する可能性を秘めた構造物を、一つの国や企業が所有していいのかという問題だ。こうしたスケールの大きな建造物は、その規模からいっても地球人類共通の財産として所有し、共同で運用していく必要があるだろう。宇宙エレベーターは、テザーを設置して終了というわけではなく、そのテザーを安全にクライマーが昇降できるように、長期間にわたる保守点検が重要なのだ。つまり、宇宙エレベーターを運用していくには、国家を超えた地球的規模でのプロジェクトとして、各国が協調していかねばならない。一人一人が、地球に生きる共同体としての意識を持ち、国家間の争いをなくしていかないと、人類は次のステップへと進むことはできない。宇宙エレベーターの建造は、その第一歩となるのではないだろうか。

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