No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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テクノロジー

2009年から
宇宙エレベーターの実現に向けた技術競技会を実施

宇宙エレベーターの実現に向けて積極的な活動を行っているのが、一般社団法人「宇宙エレベーター協会」である。宇宙エレベーター協会は、宇宙エレベーターの構築に必要な知識の集積や発信、技術の開発を行い、早期の実現を目指すために設立された。その活動の中でも、ユニークなのが宇宙エレベーター技術競技会である。2009年から年1回開催されており、2012年には第4回の競技会が行われた(2013年からは宇宙エレベーターチャレンジに名前を変更し、合同記録・記録会として実施される予定)。この競技会は、ヘリウム気球を利用して上空から吊り下げたテザーをクライマーが昇降する性能を競うもので、毎年高度を上げてきた。第4回の競技会では、高度1,200mを目指す予定だったが、ヘリウム気球が破裂してしまうといったトラブルがあり、高度780mにとどまった。参加チームは全16チームで、最速クライマー賞を獲得した「日本大学・入江研究室」のクライマーは、平均上昇速度時速54km、最大瞬間上昇速度時速105kmを記録した。もちろん、この競技会で使われているクライマーがそのまま宇宙エレベーターのクライマーとして使えるわけではないが、ここで培った技術を進化させることで、将来の宇宙エレベーターに繋がっていく可能性はある。また、若い世代に新しい課題にチャレンジさせる機会を作りたいということも、競技会を開催している理由の一つだという。「もう今の世の中では、空や海、陸などを動いていく運行体はほとんど実現されてしまっています。だから、既存の技術をどう改良、改善していくかがテーマになっているわけですが、宇宙エレベーターは、全く正しい形というものが決まっていません。だから、無から創造して作り上げていくという経験を、若い人にもさせたいのです」と青木氏は述べる。

2012年に開催された第4回宇宙エレベーター技術競技会に出場したクライマーの写真
[写真] 2012年に開催された第4回宇宙エレベーター技術競技会に出場したクライマー

まずは物資輸送用として使われ、
人間が乗るのはその次のステップ

宇宙エレベーターが完成したら、まずは、物資を輸送するために使われることになる。人間を乗せたクライマーが宇宙エレベーターを上り下りするようになるのは、その先のステップであろう。宇宙空間には、宇宙線と呼ばれる放射線も飛び交っているため、それに対する防御も必要になる。しかし、人類にとって、地球はすでに狭くなりつつある。2050年には、地球の総人口が90億人を超えると予想されており、居住の場を求めて宇宙空間に進出するというのもSFの世界の話ではなくなる。

青木氏は将来の身通しについてこう述べる。「今から取り組んでいかないと、絶対に2050年に実現はできません。しかも、それはシミュレーションの話ではなくて、実際に物を作って実験するというプロセスがない限りは実現しません。だから、我々が今取り組んでいることが、将来の宇宙エレベーターの実現に貢献すると。そういうやりがいを持って、技術競技会などを進めていきたいと思っております」

宇宙エレベーター実現までの道のりは、決して簡単なものではないが、宇宙スケールの構造物を作るという壮大な計画は、世界人類の力を結集して取り組むべきチャレンジだといえるだろう。

Writer

石井 英男

1970年生まれ。東京大学大学院工学系研究科材料学専攻修士課程卒業。
ライター歴20年。大学在学中より、PC雑誌のレビュー記事や書籍の執筆を開始し、大学院卒業後専業ライターとなる。得意分野は、ノートPCやモバイル機器、PC自作などのハードウェア系記事だが、広くサイエンス全般に関心がある。主に「週刊アスキー」や「ASCII.jp」、「PC Watch」などで記事を書いており、書籍やムックは共著を中心に十数冊。

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