No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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デザイン

無駄はまったく許されない
究極の機能美、宇宙船デザイン

すべてが理に適っている宇宙船は、果たして進化しているのか。

  • 2013.05.31
  • 文/大草 朋宏

宇宙船やロケットのデザインはどのように決まっているか。最近話題の民間宇宙旅行会社が発表している宇宙船は、まるでSF映画のようだ。イギリスのリアクションエンジンズ社で開発中とされるスカイロンなども、近未来感が漂う。しかし、実際に飛んでいる宇宙船を見ると、アメリカのNASAの引退したスペースシャトル以外は、特に個性的で格好の良いデザインをしているわけではない。各国/各メーカーほとんど同じような形だ。それはなぜか。宇宙船デザインの設計フィロソフィーとプロセスを探る。

ふたつの宇宙の違いが、デザインを変える

数年前から話題になっている民間の宇宙旅行が、そろそろ本格的に始まりそうな気配だ。アメリカのベンチャー企業、スペースシップカンパニーの宇宙船「スペースシップ2」は、2013年に初めての民間宇宙旅行を予定している。SF映画やマンガのようなデザインの機体で、いかにも近未来的な姿は、確かに魅力的に映る。

しかし、設計デザインを見ていくと、この機体は弾道飛行であるがゆえの形状となっていることがわかる。弾道飛行とは、一般的に宇宙との境目とされる高度100km程度へ上昇し、無重力状態を体験、そして地上へ戻ってくるというものだ。

このような観光を目的とした弾道飛行用の宇宙船は、見た目のデザインは格好が良いかもしれないが、NASAやJAXAによる宇宙船とは、設計デザインとして別物といえる。

NASAやJAXAの宇宙開発は、宇宙船を地球軌道に投入したり、月へ到達させたりすることを目的で運用されている。弾道飛行に対して、地球軌道投入では、大気圏再突入時に50倍くらいのエネルギーがかかる。速度でいうと、弾道飛行がマッハ1〜3程度に対して、地球軌道投入はマッハ23程度。月に行って帰ってくる宇宙船となると、軌道投入に対して速度はさらに1.5倍、エネルギーも2倍になる。

そのような速度で帰ってくることを考えると、スペースシップ2のような長い翼を持つ有翼型デザインでは、大気圏再突入時に翼は耐えられず折れてしまう可能性が極めて高い。無論、それでも折れないような材質があれば問題ないが、現状でそのような材質は存在しない。だからほとんどの宇宙船は、アポロやソユーズに代表されるようにカプセル型をしているのだ。

ベーシックとなったソユーズ宇宙船のクオリティ

その最たる例がソ連(当時)のソユーズだ。驚くことに1967年の開発以来、40年以上を経た現在でも、現役としてロシアから打ち上げられており、もっとも安全で経済的な宇宙船といわれている。

ソユーズは大きく3段階にわかれている。一番下は機器/推進モジュール。もっとも重量が大きく、ロケットエンジンや電気、機械などが搭載されている。その上が帰還モジュール。打ち上げ時と帰還時に宇宙飛行士がここに搭乗するが、とても狭い。その上に軽くて広い軌道モジュール。ISSに結合する部分で、宇宙空間に出ると、荷重がかからないのでモジュールの壁面は薄くても問題ない。宇宙飛行士も宇宙空間ではこちらに移動する。重い順番に下から重ね、特に人が乗っている上に重いものを乗せたくないというソ連の発想は、当時から非常に合理的だった。

帰還モジュールの底辺はフラットな形状だ。大気圏再突入時に、重心をずらして斜めに突入するのだが、この角度が重要。空気の密度は地表に近いほど濃く、上空に上がるほど薄くなるので、斜めに大気圏に進入することで揚力が発生し、より角度を浅く滑空することができる。この様にすることで、宇宙飛行士への負担を3Gまで減らすことが出来るのだ。

ソユーズの基本形の写真
[写真] このソユーズの基本形が、その後の宇宙開発にも大きな影響を与えた (c)JAXA

ソユーズはマイナーチェンジこそしているが、基本的な設計デザインに大きな変化は見られない。コンピュータなどの機器は新しくなっているが、材質などもほとんど変わっていない。

ミッションの目的によって、長時間の飛行となるものは、狭い帰還モジュールに乗っている宇宙飛行士への肉体的・精神的な負担も大きい。それを考慮して軌道モジュールには広いスペースを確保している。ただし、ロケットも進化している。これまで国際宇宙ステーション(ISS)に行くのに2日間かかっていたが、これからは6時間程度で到達することが可能になりつつある。すると、宇宙空間での滞在が短くなるので、一番先端の軌道モジュールのような広いスペースは必要なくなるかもしれない。アメリカの民間会社スペースX社のドラゴンには、軌道モジュールに当たるところがない。より短い時間でのロケット打ち上げが実現すると、それに応じてもっとコンパクトな設計が可能になっていくだろう。

ISSから分離したソユーズTMA-04Mの写真
[写真] ISSから分離したソユーズTMA-04M (c)JAXA/NASA

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