No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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ソユーズやアポロが第2世代だとすれば、現役を引退したスペースシャトルが第3世代と呼べるだろう(第1世代はガガーリンが搭乗した世界初の有人宇宙船ヴォストーク)。スペースシャトルの開発が行われた70年代になると、宇宙開発に向けて、湯水のようにお金を使っていい時代は終わり、低コストが求められるようになった。そこで、それまでの使い捨てではなく、再利用して何度も飛ばすことが出来る機体とシステムの開発が進み、完成したのがスペースシャトルだ。それまでのアポロやソユーズに比べると、大型かつ斬新な設計デザインの宇宙船で、大きな特徴は翼のついたオービターだ。この主翼は、打ち上げ時や再突入時には不要な機能で、再突入後の着陸のみに使用する。そのため、前述したスペースシップ2のような大きな翼ではなく、着陸するための最低限の機能に特化した設計デザインになっている。この翼によって、大気圏突入後にスピードを落とし、揚力を発生させて滑空することができ、飛行機同様に自力飛行でのソフトランディングが可能になったのだ。(それまではの宇宙船はパラシュートで着陸していた)

しかし実際のコストは下がるどころか上がってしまった。さらに設計デザインが複雑になってしまったことで、安全面への影響も大きくなり、チャレンジャー、コロンビアという2機の大事故が起きてしまう。

毛利衛さんが搭乗し、無事に帰還したエンデバー号の写真
[写真] 毛利衛さんが搭乗し、無事に帰還したエンデバー号

この設計デザインは、アメリカのプロパガンダの側面も大きく、失敗であったと見る向きもある。なぜなら、第4世代と呼べる宇宙船の設計デザインは、カプセル型に回帰しているからだ。昨年民間の宇宙船としては世界初となる国際宇宙ステーション(ISS)へのドッキングに成功したスペースX社のドラゴンや、現在NASAが開発中の有人宇宙船オライオンなどが第4世代ということになるだろう。材質やコンピュータなどの機能や性能は向上しているが、設計デザインとなると、第2世代の焼き直しに見えてしまう。

果たして進化が遅いのか、60年代の設計デザインがよほど完成されていたものだったのか。

ISSのロボットアームにより、第2結合部(ハーモニー)の地球側ポートから取り外され、放出ポイントへ移動されたドラゴン補給船試験機2号機の写真
[写真] ISSのロボットアームにより、第2結合部(ハーモニー)の地球側ポートから取り外され、放出ポイントへ移動されたドラゴン補給船試験機2号機 (c)JAXA/NASA

「有人宇宙ミッション検討のミエル化」の発起人でもある、JAXAのシステムズエンジニアリング推進室ミッションデザイン支援グループ主任開発員の髙橋伸宏さんは、このように語る。

「ソユーズは、我慢してでも宇宙に行って地球に帰ってくるための、必要最低限の機能に特化したもの。快適性を求めると、スペースシャトルのような大きなものになってきます。しかし大きくなってしまうと、デザインを変更するたびにその影響も大きくなり、うまくいかないことも多くなってしまいました。私たちは"将来、スペースシャトルのようなもので、みんなが宇宙に行く時代が来る"と思っていましたが、21世紀になり、スペースシャトルがなくなってソユーズが残っているのは、結果的に、機能を特化したシンプルな設計デザインが良かったということだと思います」

さらに、同じくJAXAのシステムズエンジニアリング推進室ミッションデザイン支援グループグループ長の野田篤司さんも続ける。

「スペースシャトルは、ソ連とアメリカの見栄の張り合いのなかで生まれた産物です。実質よりも、かっこ良さを少し優先した部分があると思います。しかし宇宙船の設計デザインは、そんなに生半可な世界ではありません。冷戦が解消した今、最も合理的かつ優れたデザインに戻っていくのでしょう」

宇宙船に求められる基本的な要件は、まず宇宙空間へ行ってミッションを終え、無事に帰還すること。最も重要視されるのは人命であり、一番危ない離着陸時に、いかに乗組員を配置し安全を確保できるかが、それぞれのデザインフィロソフィーだ。有人ロケットは、先端に緊急脱出システムとして固体ロケットを備えており、異常を感知するとこのロケットが点火し、乗組員が搭乗している宇宙船を引っ張って分離し、遠くへ避難させる。何も事故が起らなければ、まったく不要の機能ではあるが、有人宇宙船には必要不可欠な設計デザインなのである。

つまり、宇宙船においては、見た目よりもまず機能性を突き詰めなければならず、必然的に合理的な設計デザインを目指すことになる。また、それぞれのミッションの目的と期間により、設計デザインは変わってくる。以下、目的達成のために最適化を図ることで生み出された、日本の宇宙船の設計デザインをいくつか紹介しよう。

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