No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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日本初の宇宙船HTV、物資補給に特化したデザインの優位性

日本の宇宙船HTV(通称こうのとり)は、日本が開発した初の宇宙船である。無人の軌道間輸送機で、最大6トンの物資を運ぶことが可能。ISSへの物資補給手段として活躍し、世界的にも信頼を得ている。推進モジュール、電気モジュール、補給キャリア非与圧部、補給キャリア与圧部の4モジュールから構成されている。設計デザインは、補給船という機能に特化し、物資運搬という特徴を大きく打ち出すものとなっている。

左:ISSのロボットアーム(SSRMS)に把持されたHTV3(こうのとり3号機) 右:HTV3(こうのとり3号機)のむきだしになった曝露パレットの写真
[写真] 左:ISSのロボットアーム(SSRMS)に把持されたHTV3(こうのとり3号機) 右:HTV3(こうのとり3号機)のむきだしになった曝露パレットが確認できる。夜景の地球が美しい (c)JAXA/NASA

補給船は他にも、ロシアのプログレスとヨーロッパのATVなどがあるが、HTVだけの大きな特徴としては、与圧部には大型の1.3m四方のハッチが装備されていることだ。そのおかげで大型の実験ラックをISSヘ輸送できる唯一の補給船となっている。また、非与圧部には曝露パレットという荷台が収納されていて、船外物資を運んでいる。物資をISSに移すときには、補給キャリア非与圧部から外され「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームに置かれる。物資を出し入れする非与圧部側面の開口部は約3m四方。直径が4mのHTVにこのような大きな開口をとる設計は非常識で構造上難しいことだが、物資を補給するという目的に最適化するために、苦労して作り出した設計デザインといえるだろう。

左:ISSに接近するロシアのプログレス補給船 右:ドッキングに向けISSに接近するATV(欧州補給機)3号機の写真
[写真] 左:ISSに接近するロシアのプログレス補給船(c)NASA 右:ドッキングに向けISSに接近するATV(欧州補給機)3号機 (c)JAXA/NASA

このHTVは現在ではISSへの物資輸送を終えると、大気圏再突入後、そのまま燃え尽きてしまう。いわば使い捨てだ。そこで、与圧キャリアを回収機に付け替えることで、回収能力を付加したHTV-Rの開発を目指している。ISSから離脱したHTV-Rは、回収機のみが分離し大気圏再突入する。無人ならば、カプセル型になることが有力だが、カプセル型も有翼型も含めて研究されている段階だ。

回収機能付き宇宙ステーション補給機「HTV-R」の与圧部置換型から、回収機を分離するイメージの写真
[写真] 回収機能付き宇宙ステーション補給機「HTV-R」の与圧部置換型から、回収機を分離するイメージ (c)JAXA

地上とはまったく異なる発想で生まれたイカロスのデザイン

最適化を図るというなかには、制約という側面も含まれる。宇宙船はロケットで打ち上げなければならず、つまり、ロケットのフェアリング*1に収まる回収機でなくてはならない。宇宙空間での〈最適化〉と〈制約〉というふたつの側面を、斬新な設計デザインで解決したものに、「イカロス」がある。

イカロスは2010年5月21日にH-2Aロケットにより打ち上げられた。ソーラーセイルという、約14m四方の大きな帆に太陽光を受けて進む。名前の通り、その姿はまるでヨットの帆のようだ。太陽光子にも、わずかながら圧力があり、空気抵抗のない宇宙空間なら推進力を生むことが出来る。ソーラーセイルはポリイミドという素材で出来ており、厚さはわずか0.0075mm。その表面にはさらに薄膜太陽電池が貼り付けられ、発電できることを世界で初めて実証した。宇宙空間は荷重もなく空気もないのでペラペラの構造で成り立つ。

ギリシャ神話のイカロスは、ロウで固めた翼が太陽熱で溶けてしまったが、宇宙ヨット、イカロスは金星に約8万kmまで近づくことができた。

太陽光をたくさん受けられるような大きな面積を確保するために、より薄くし、畳める形状になった。必要な条件を満たしつつ最適化を図った結果の設計デザインといえよう。これも、ひとつの宇宙機の姿。地上の発想にとらわれなければ、このようなドラスティックな開発が可能なはずだ。

世界で初めてソーラーセイルが展開した状態の写真
[写真] 2010年6月14日に分離カメラ実験を実施し、世界で初めてソーラーセイルが展開した状態の撮影に成功 (c)JAXA

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