No.017 特集:量子コンピュータの実像を探る

No.017

特集:量子コンピュータの実像を探る

Visiting Laboratories研究室紹介

奥山 真佳さん

苦しくて辛くて嬉しくて何物にも代えがたい

TM ── 西森研究室では何を学びましたか。

奥山 ── いちばん大切なのは「研究は楽しいものであるべきだ」という心がけです。とかく研究は苦しいもので、その苦しさに打ち克つことに意味があると話す人もいますが、それは少し違うと思います。もちろん決して楽ではありません。けれども、研究に取り組んでいる間中、ずっと苦しいかといえばそんなことはない。

TM ── とはいえ苦しい思いもされたでしょう。

奥山 ── もちろんです。研究がまったく進まないときもありましたから。そのときは自分に合っていないテーマに挑戦していたのです。けれども、この苦しみを通じて、自分なりの研究の進め方がわかりました。単純にいえば、自分の疑問を大切にすることです。人の発表を聞いたり、論文を調べたりしたときに生まれる疑問を逃さずに、そこから先行研究を調べるようなスタイルです。

TM ── 研究を突き詰めても、うまくいかないことも多いのですね。

奥山 ── 問題設定がカギで、これだと思う問題と出会えたとしても、一向に先に進めないこともあります。実は、つい最近も2か月ぐらいかけて取り組んできたテーマを諦めたところです。こういうことが続くと落ち込みます。だからメンタルコントロールは重要ですね。

TM ── けれども、たまにうまくいくことがあるから、研究は面白くてやめられない?

奥山 ── その通りです。うまくいった! 新しい結果を導き出せた! そんなときは興奮しているので、夜になって横になってもまったく眠れません。そのまま朝まで興奮状態で起きていて、寝不足で研究室に行って、確認のために計算をやり直してみると計算間違いしていたとか(笑)。けれども、本当にうまくいったときの達成感は、何物にも代えがたいです。天にも昇る心地を実感しますね。

TM ── 素晴らしい経験を何度もされたのですね。

奥山 ── 残念ながら博士課程に入ってからは2回ぐらいですね。研究に取りかかる前は「今度こそうまくいくぞ」と意気込んでいるのですが、いざやってみるとうまくいかない。その繰り返しです。

量子力学

TM ── 西森先生が取り組んでおられる量子アニーリングや量子コンピュータについては、どのように思いますか。

奥山 ── 社会的インパクトが極めて大きいと思います。今の自分の関心は少し違うところにあるけれど、もし何か関連するアイディアを思いついたら、ぜひ先生と一緒に研究を進めたいです。

TM ── 将来について、どのように考えていますか。

奥山 ── もちろん研究者になりたい。ただ、今の時点ではなんとも言えないのが正直なところで、あと1年ぐらいの間に研究者を目指すのか、企業に就職するのかを判断しなければと考えています。

奥山 真佳さん

Profile

奥山 真佳(おくやま まなか)さん

1993年生まれ。東京工業大学理学院物理学系物理学コース博士課程2年。

2015年東京工業大学理学部物理学科卒業、2017年東京工業大学理工学研究科物性物理学専攻修了。古典系・量子系のダイナミクスに関する理論研究に従事。

Writer

竹林 篤実(たけばやし あつみ)

1960年生まれ。ライター(理系・医系・マーケティング系)。

京都大学文学部哲学科卒業後、広告代理店にてプランナーを務めた後に独立。以降、BtoBに特化したマーケティングプランナー、インタビュワーとしてキャリアを重ねる。2011年、理系ライターズ「チーム・パスカル」結成、代表を務める。BtoB企業オウンドメディアのコンテンツライティングを多く手がける。

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