No.022 特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた:我々はどこから来て、どこへ向かうのか

No.022

特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた。我々はどこから来て、どこへ向かうのか。

Expert Interviewエキスパートインタビュー

── SKAの望遠鏡では、太陽系外惑星の生物も探索できるのですか?

私たちは、普段、電波を地球上での探索や実用的な目的で使用しています。たとえば空港周辺の航空機を監視・管制したり、テレビやラジオを放送したり、スマートフォンや携帯電話で通話したりと、コミュニケーション手段としての使用がほとんどです。そして宇宙船では長距離のコミュニケーションに無線信号が使われているのです。万が一、銀河の何処かの惑星に知的生命体が存在するならば、同様のテクノロジーを保有しているかもしれません。その場合、SKAのレーダーの感度であれば、その生命体が使う無線信号を探知できるでしょう。しかし、もしかしたら、彼らは私たちとは違うテクノロジーを保有し、あまり無線信号を使わない可能性もあり、その場合、探索は容易ではないでしょう。

私たちは、他の惑星に高度な生命体が存在するという証拠を持っておらず、また、生命体そのものが存在するという証拠も持っていません。ただ、地球だけが特別なはずはありません。私たちが宇宙上、唯一の生命体だとしたら、その方が驚きです。似たような生命体が存在すれば、遅かれ早かれ、私たちは、それらを見つけ出すでしょうし、高度な生命体の方が、彼方から通信してくるかもしれません。私たちは、高度な生命体が存在している可能性を想定しない方が馬鹿げていると思います。

宇宙への関心と日本公式参加への熱望

ロバート・ブローン氏

── これまでのお話を聞いていると、SKAは人々に宇宙への関心を高める良い機会のように感じます。

とても嬉しいお言葉ですね。おっしゃる通りです。SKAは天文のプロフェッショナルのために設立されましたが、その重要性や天体の面白さを一般の人々にも知っていただきたいと常々思っています。なぜなら、全ての方々のサポートやご理解がなければ、このような実験や施設建設はあり得ないからです。

天文に関心のない多くの方は、宇宙物理学など自分とは関係ないことと思っているかもしれません。だからこそSKAの活動が、人々の生活と関連性があることを、これからはもっと伝えていきたいと思っています。

── 日本は、SKAに興味を示していますが、現在、公式メンバーではありません。

はい、そうですね。日本は現在、私たちの団体の役員会議や、内部討論会では『オブザーバー』として参加しています。私たちは、日本のこうした関わり方を歓迎していますが、いつの日か完全なる公式メンバーとして参加していただきたいと願っています。

日本の天文関連のコミュニュティは、高い知識を持つ専門家とハイレベルの技術知識を誇っています。特に、高周波の研究が目覚ましく、北米チリに建設された「アルマ望遠鏡」は、その好例ですし、SKAと日本は、高周波から得られる高画質画像作成でも協力体制にあります。

また、日本は、ハイパフォーマンスのコンピュータ技術や、マシンラーニングといったソフトウエア開発でも定評があるだけでなく、干渉法のベースライン製作にも長い歴史があり、VERA*4の観測アレイは、世界中の実験的な望遠鏡に使用されています。

日本のSKAへの公式参加は、両者にとって意義のあるものになるでしょう。私たちは、日本から公式参加の意向が聞ける日を心待ちにしています。

SKA本部には、「カウンシル・チャンバー」と呼ばれるオーディトリアムがある。159席の会場では、科学系のカンファレンスから公開公演までが行われる。部屋には、2019年3月、SKA全公式参加国の13国家間で結ばれた協定書の原本が置かれている。
カウンシル・チャンバー
SKA
SKA

[ 脚注 ]

*4
VERA(VLBI Exploration of Radio Astrometry):銀河系の3次元立体地図作成プロジェクト。「VERA」はラテン語で「真実」を意味する。VLBIという電波干渉計の手法を使い、銀河系内の電波天体の距離と運動を高精度で計測し、銀河系の姿を明らかにする。国立天文台を中心に、多くの大学や研究所から各分野の研究者が参加し、2003年から観測が始まっている。

ロバート・ブローン氏

Profile

ロバート・ブローン博士(Robert Braun)

スクエア・キロメートル・アレイ サイエンス・ディレクター

カナダのブリティッシュ・コロンビア大学で物理学と天文学を専攻後、オランダのライデン大学で博士号を取得。研究テーマは銀河から放出される中性水素。博士号取得後は、ナショナル・レィディオ・アストロノミー、オランダ電波天文学院で研究を進めつつ、世界トップクラスの光学望遠鏡及び電波望遠鏡の研究開発を行なったことでも有名。NRAOやASTRONを経て、CSIROでは宇宙物理学のテーマとリサーチ・プログラムのリーダーとして活躍後、チーフ・サイエンティストを務めた。また、90年代初頭より、電波望遠鏡開発のコンセプトを生み出すSKA創設の中心人物として活躍。2013年にはSKAのサイエンス・ディレクターに就任。現在に至る。2013年よりシドニー大学名誉教も務めている。

Writer

中島 恭子(なかじま きょうこ)

日本女子大学文学部英米文学学科卒業。セントラル・セントマーチンズ・カレッジ・オブ・アート・デザインで修士取得以来、在英。「AXIS」、アマナ「NATURE & SCIENCE」などの雑誌やwebメディアに、テクノロジー、ビジネス、デザインに関する記事を幅広く寄稿する。

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