No.007 ”進化するモビリティ”
Topics
交通インフラ・交通システム

北極海航路のこれから

こうした各国の熾烈な競争の中で、北極海航路の今後を左右する大きなポイントは2つあると思われる。一つは"開通した道"が今後も持続、または拡大していくのかどうか。つまりこれからも氷が減少し、夏の無氷期間が拡大していくのか、それとも気温上昇がそれほど進まず、氷の融解も進まず、"道"も拡大していかないのか、という地球気象上の大きなトレンドである。これに関しては、人類が関与する余地はあまり無い。北極海航路だけに関していえば氷が溶けたほうが望ましい、ということになろうが、人類にとってそれが良いかどうかはわからない。

もう一点は、まだ確立したとは言い難い、北極海に関する国際的な枠組みと仕組みをどう整備し、航行の自由をどう確保していくか、という課題である。端的に言って、ロシアが通行の許認可を握っているという状況は、航行の自由があるとは言い難い。またこの状況を改善する国際的な枠組みもまだ弱い。とはいえこちらの課題は、人類の努力と調整によって解決可能である。ここで適切な枠組みと合意が確立できれば、そこから21世紀の地球上の新しい物流と交通の姿が見えてくるだろう。

[ 脚注 ]

*1
北極海航路について—北海道港湾の可能性に関する検討—
http://thesis.ceri.go.jp/db/files/GR0003000104.pdf

Writer

淵上 周平(ふちがみ しゅうへい)

1974年神奈川県生まれ。
中央大学総合政策学部にて宗教人類学を専攻。
編集/ウェブ・プロデュースを主要業務とする株式会社シンコ代表取締役。

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