No.024 特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

No.024

特集:テクノロジーは、これからのハピネスをどう実現できるのか

Expert Interviewエキスパートインタビュー

「幸せ」を測定して、よりよい生活につなげる。

2020.09.23

太田 雄介
(株式会社はぴテック CEO 兼 CHO)

「幸せ」を測定して、よりよい生活につなげる。

古今東西、性別年齢を問わず、どんな人でも幸せになりたいと望んでいる。幸せは人間にとって普遍的な価値である。しかし、「あなたは幸せですか」と問われ、即答できる人は少ないだろう。経済的・物質的な豊かさや地位・名誉、さらには健康であることや信頼感や安心感を感じる友人との関係…。人の幸せのかたちは多様だ。ある面では幸せであると感じるし、別の面では幸せだとは思わない。考えれば考えるほど自分が幸せなのか不幸なのか分からなくなってくる。誰かがスパッと客観的に意見してくれれば、もっと幸せになるための指針が得られるような気がする。幸福度と呼ぶ、幸せの度合いを数値化した指標を測定するサービスを、はぴテックが提供している。幸せな人をテクノロジーの力で増やすことを目指している同社 CEO 兼 CHOの太田雄介氏に、人の幸せを客観的に測ることによって得られることについて聞いた。

(インタビュー・文/伊藤 元昭 撮影/黒滝千里〈アマナ〉)

先進国は幸せで、途上国は不幸という思い込み

太田 雄介氏

── 自分が幸せであるかどうかということは、自分事でありながらハッキリと自覚できている人は少ないと思います。なぜ、それを数値で表現したいと考えたのでしょうか。

幸せとは、とても抽象的で漠然とした概念です。誰もが求めているものなのに、掴みどころがないため、幸せになるための道筋が見えにくいように思えます。

健康になりたい、ダイエットをしたいと考えたら、まず健康診断に行ったり、体重を測ったり、自分の状態を知るところから始めますよね。ならば、幸せになる方法について考えるためには、まず科学的研究を背景にして、どのくらい自分が幸せなのか数字で測るところから始める必要があると思ったのです。それで、幸せをテクノロジーで追求するため、はぴテックという会社を作りました。

── そもそも、なぜ人の幸せについて関心を持ったのでしょうか。

一番大きなきっかけは、1カ月間アフリカに行って、現地の人と仲良くなって行動を共にした経験です。日本では、「アフリカの子供たちの命は300円で助かります」といったテレビCMが流されており、アフリカには不幸な人がたくさんいるのだと思っていました。学生時代に自分が費やしている教育費で、いったい何人の命が助かるのかとも考えたものです。ところが、実際に現地の人に触れてみると、確かに経済的には貧しいのですが、意外と日本人よりも幸せそうに見えることに驚きました。そして、むしろこの人たちから学ぶべきことが多いのではと思ったのです。

世界的には、あらゆる国や地域の国民総生産(GDP)はこの50年間で上昇しているのですが、幸せに感じる人は逆に少なくなっているというデータがあります。人類は確実に発展しているはずなのに、現在の延長線上で経済的に豊かになっても、幸せにはならないのはもったいないことだと思いました。

── 確かに、先進国、新興国、途上国といったくくりは、経済的な尺度で見ているだけですね。先進国が優位になる尺度で途上国の人たちの幸せを考えるのは、乱暴で独りよがりな気がしてきました。

その通りです。以前は、幸せになるために経済的な発展が必要だ、というロジックで経済発展を目指したわけです。ただし、経済的な発展は幸せの一側面にすぎず、そこだけを目指してしまうと、みんなを幸せにするというもっと俯瞰した目的からズレてしまうのではないかと感じます。

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