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Science Report
サイエンス リポート

世界の半導体工場、活発な投資へと動く

文/津田 建二
2026.05.13
世界の半導体工場、活発な投資へと動く

2023年11月時点での世界半導体工場に関する最新動向を調べ、2023年12月に「世界の半導体工場 最新動向」という記事を掲載した参考資料1。この時点から世界の半導体産業は大きく変わった。パソコンやスマートフォンといった、従来半導体産業をけん引してきた大きな市場がいまだに低迷する中で、産業用分野の一つにすぎなかったAIデータセンター市場が急成長し続けているのだ。特にAIチップとしても使われるGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)だけではなく、チップセットとして使われるHBM(High Bandwidth Memory)メモリも需要が高まり続けている。このAI需要に応えるための工場新設がAIデータセンター向けチップを中心に活発になっている(図1)。ここではその様子をレポートする。

世界の最新半導体工場

世界の最新半導体工場 最近の工場を中心に集めた
[図1]世界の最新半導体工場 最近の工場を中心に集めた

メモリ半導体不足が顕著に

半導体市場は今、AIデータセンター需要がかなり活発に動いており、メモリメーカーは高まるHBM需要に応えるため、メモリ生産をDRAM、それもDDR(Double Data Rate)DRAMからHBMへと切り替えている。HBMはDRAMチップを4枚、8枚、あるいは12枚と複数枚重ねることで大容量化と高速化(1秒間に読み出せるデータ量を意味する広バンド幅)を達成し、AI演算を支援するのだが、DRAMよりも手間暇がかかるため単価が高く、利益の幅は大きい。反面、DRAMを複数枚使うためDRAM供給量の多くを、ここで消費してしまうことになる。メモリメーカーがHBM生産を加速すればするほど、従来のDRAMが不足することになり単価の値上がりを招いている。

このため、DRAMメーカーは工場の新設に向かい、ファウンドリ企業も設備投資を続けている。ただし、工場はすぐに稼働することはできないため需要を賄うために1~2年かかりそうだ。多くのAIチップは4nm/5nmのプロセスで製造されており、最先端のGPUであるNVIDIA(米国)の「Rubin」という製品でさえ3nmプロセスで量産する計画だ。しかし、今後は、3nmプロセスから2nmプロセスへと大きく変わる。3nmプロセスまではFinFETと呼ばれる3次元トランジスタ構造が使われてきたが、2nmプロセスの先となるとGAA(Gate All Around)と呼ばれる新しい3次元構造に置き換わることになる。

ただし、価格との兼ね合いという問題も出てくる。7nm、5nm、3nm、2nmとプロセスノードが進むにつれ、ファウンドリが提供するウェーハ処理価格が高価になってくるからだ。例えば、Apple(米国)の最新プロセッサは、N2と呼ばれる2nmプロセスを使って製造されたが、さらに性能の高いN2P(P=Performance)と呼ばれる次世代プロセスは価格が跳ね上がるため、あえて、ひとつ前の技術であるN2プロセスにしたと言われている。

プロセスの進化だけではない。パッケージでも3次元ICや、チップレットと呼ばれる小面積のダイでも7nm製品と3nm製品を混在させるような先端パッケージング技術が使われるようになってきている。様々なチップやチップレットを1枚のシリコンやガラスなどの基板に搭載する先端パッケージは、プロセスの行き詰まりを打破する技術でもある。

AIデータセンター需要が工場建設をけん引

こういった新しい技術をけん引するのがAIデータセンター需要であり、その需要に応えようとしてファウンドリやメモリメーカーが新工場建設にしのぎを削っている。特にファウンドリトップのTSMC(台湾)は、米国アリゾナ州の第1工場を2024年第4四半期から稼働させているが(図2)、第2工場へ2026年中に装置を搬入し、当初の計画を前倒しして2027年後半に稼働を開始すると2026年1月の決算発表の日に同社CEOのC. C. Wei氏が述べている。

TSMCのアリゾナ第1工場
[図2]TSMCのアリゾナ第1工場
出典:TSMC

さらに、第3工場を建設着工中で、第4工場と先端パッケージ施設の建設許可も申請中だとしている。アリゾナ州では、これらのファブが完成すると、大規模工場を意味する「ギガファブ」クラスタが完成し、米国の顧客に対応していくとしている。

しかし、アリゾナ工場では、これまで半導体生産の労働力の確保に苦労してきており、第2工場が完成し、製造装置の搬入が進んでも労働力不足の問題が浮上してくる。こうした事態に対応すべく、米国ではアリゾナ州だけではなく、インディアナ州、オハイオ州など、これまで半導体とは無縁の州でも大学で半導体エンジニアを養成するためのプロジェクトが始まっている。

その米国よりもっと早く工場を立ち上げられそうなのが、実は日本のJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)熊本第2工場である。アリゾナ第1工場建設は、熊本第1工場よりも1年ほど早かったが、稼働した時期はほぼ同じだった。このため、TSMCはJASM熊本第2工場について、当初予定していた12nm/6nmプロセスではなく、アリゾナ第2工場と同じ3nmプロセスノードの工場に変更する旨を発表した。CEOが来日し日本政府とも対面した。

TSMCは予定していたドイツのドレスデン工場の建設にも着手している。ただし、稼働時期は顧客のニーズで決まるとしている。

もちろん、先端の2nmプロセスであるN2ノードとA16ノードについては、台湾の新竹工場と高雄工場で生産する。N2ノードの製品は2025年第4四半期に両工場で量産が開始され、歩留まり良好だという。同製品はスマホとAIデータセンターでの需要が急伸している。

ファウンドリ供給不足で、Samsungも受注獲得

ファウンドリビジネスでは、Samsung(韓国)も米国テキサス州都オースティンに近いテイラー市に総額370億ドルを投資した工場を建設中だが、2026年2月にテイラー市から補助金が認められた。今年の下半期には工場が完成し、限定生産の目処が立った。昨年は、Samsung全体がHBMで出遅れ、工場が完成しても稼働の目処が立たなかった。しかし、昨今のメモリ不足から半導体全体への供給不足が徐々に波及しそうな勢いとなり、2027年量産という目処が立ったのだ。

その勢いでSamsungは、早くも第2工場建設の準備に取り掛かることになり、この2月に建設許可を申請した参考資料2。許可が認められ次第、直ちに建設にとりかかる。第2工場も第1工場と同じ270万平方フィートのビルになるという。

Samsungの2026年の投資額は735億ドルになりそうだという。2025年比で21.7%の増加になる。最近になり、SamsungはNVIDIAやAMD(米国)、Tesla(米国)から、数年にわたるファウンドリサービス提供の契約を結んだことが、強気の投資に結実した。

SK hynixも米国へ

Samsungをライバル視するSK hynix(韓国)は、米国インディアナ州のウェストラファイエットに38.7億ドルを投資してHBM向けの先端パッケージ工場建設の計画を明らかにした参考資料3。2024年12月に米国の商務省から認可され、連邦政府から4.58億ドルの支援を受けた。また、130億ドルを投資して先端パッケージの新工場を韓国の忠清北道に建設する、と2026年1月に発表した。

2月25日には、ソウルの南約40kmにある龍仁(ヨンイン)市にヨンイン半導体クラスタを拡張するための投資を行うと発表した。150億ドルを投じて5つのクリーンルームを建設する。2024年7月に発表していた65億ドル分を加えると総投資額は215億ドルになる。最初のクリーンルームの完成は、強い需要によって2027年5月から2月頃へと速めることになりそうだという。

Micronはメイド・イン・アメリカに力点

メモリメーカー・トップスリーの一角を占めるMicron Technology(米国)は、米国の3拠点(アイダホ州、ニューヨーク州、バージニア州)に総額2000億ドルを投資すると2025年6月に発表するなど、メイド・イン・アメリカ製品に力を入れている。アイダホ州に2工場、ニューヨーク州で最大4工場、バージニア州では既存の製造ラインの拡張と近代化などに1500億ドルを投資し、残りの500億ドルを米国内での研究開発に投資する予定となっている。

米国政府はCHIPS法案を制定し、国内の半導体産業を支援している。Micronへの支援は最大64億ドルとされるが、アイダホ州ボイジーの2工場とニューヨーク州シラキュースの2工場、バージニア州マナサス工場では製造ラインの改築に当てられる。新しいこれらの投資計画では、アイダホ州の第1工場はすでに建設中で2027年にDRAMが出荷される予定、第2工場は土地の手配が始まったところである。ニューヨーク州の工場は、今年に入り1月にメガファブ建設の起工式を行っている(図3)。

Micronのニューヨーク州シラキュース工場の起工式
[図3]Micronのニューヨーク州シラキュース工場の起工式
出典:Micron Technology

Micronの積極的な投資戦略は、研究開発にも向けられている。量産の1γ nmプロセスのDRAMチップの次となる1δ nm製品も開発中で、先進のEUVリソグラフィ装置の台数を増やしていく。また、NVIDIAと共同開発した36GBのHBM4(DRAMダイを12枚積層)を2026年第1四半期に量産出荷し始めた。さらにDRAMダイを16枚積層する48GBのHBM4もサンプル出荷を始めている。その先のHBM4E製品も開発中で2027年の量産開始を予定している。HBMはAIデータセンターには欠かせないメモリであり、次のGPUやAIチップと共に基板に搭載される予定だ。

そのほかAIデータセンターで使用される256GBの圧接タイプのメモリモジュールSOCAMM2(Small Outline Compression Attached Memory Module 2)製品のNVIDIAとの共同開発や、インドにおける新建設後工程工場からの製品出荷など、新製品のビジネス展開も積極的に行っている。

先端パッケージの請負サービスも新工場建設へ

新工場が必要な分野は、既存製品の拡張だけではなく、新世代製品の製造もある。その一つである先端パッケージのファウンドリともいうべき請負企業が現れている。米国イリノイ州の先端パッケージング請負サービス会社であるNhanced Semiconductorsは、自らをファウンドリ2.0と呼び、先端パッケージング専門ファウンドリと称している。最新の3DICや2.5D ICを実装する設計・製造を手掛けるからだ。

実はTSMCも先端パッケージング技術を手掛けており、CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate)という名称で、NVIDIAのAIチップにHBMを組み込んでいる。パッケージングという工程ながら、後工程やOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)という言葉は使っていない。

Nhanced Semiconductorsは、インディアナ州オドンにある3万平方フィートの建物に、広さ5000平方フィートのクラス100という清浄度のクリーンルームを2023年11月に設置している。クリーンルームを設置したのは、ウェーハの薄化で研磨やCMP(化学的機械研磨)ドライエッチング、ウェットエッチング、ウェーハ同士やチップ-ウェーハの張り合わせなど、コンタミネーション(粉じんなどのゴミ)の少ない作業を行うからだ。

加えて、ノースカロライナ州モリスビルに研究所と試作工場を設置した。ここにも7000平方フィートのクラス100クリーンルームを設置している。

シンガポールのSilicon Boxも、2021年5月に創立した、先端パッケージのスタートアップだ。長年、後工程メーカー STATS ChipPACで経験を積んできた、B. J. Han博士とSehat Sutardja博士、Weilli Dai氏が共同創業者となり立ち上げた。2023年後半にシンガポール工場で生産を開始し、2025年10月には、同工場から出荷した先端パッケージ製品の累計が1億個に達したという実績を持つ。

欧州でも300mmラインを新設

Silicon Boxは、32億ユーロを投じて、イタリアのノバラに量産工場を2024年12月に設立することを発表した。EC(欧州委員会)からも13億ユーロの支援があった。2025年後半から建設を始め、2028年第1四半期に最初の製品ラインを動かす計画だ。2033年には生産能力が一杯になり、週当たり1万枚のパネルを生産する予定になっている。

欧州にもCHIPS法案欧州版があり、半導体製造能力を高めようという動きは活発だ。スイスに本社を置くSTMicroelectronicsは、2025年に300mmシリコンウェーハプロセス工場と200mmのSiC新工場拡張に関する発表を行った参考資料4

それによれば、イタリアのアグラテ工場の300mmシリコンウェーハプロセスのラインを拡張し、スマートパワー製品やミクストシグナル製品を生産するSTの旗艦工場とする計画だ。計画では2027年までに1週間あたり4000枚を生産し、市場を見ながら1週間あたり最大1万4000枚の生産能力に持っていく。一方で、既存の200mmラインはMEMS生産に集中する。フランスグルノーブル近くのクロル工場はデジタル製品の主力工場として、2027年までに1週間あたり1万4000枚に生産能力を増強し、1週間あたり最大2万枚まで拡張できるようにする。パワー半導体はイタリアのカタニア工場の200mmウェーハの生産によって競争力を上げ、2025年第4四半期にはラインが立ち上がったようだ。

台湾のOSATも新たな投資

半導体チップをケース内に封止するパッケージング工程(後工程)でも設備投資が計画されている。OSAT最大手のASE Technology(台湾)は、2026年に過去最高の投資を計画しているという。ASEは、2026年3月11日に高雄市にあるNanzih Technology Industrial Park IIIで新工場2棟の起工式を行った。投資額は178億台湾元(890億円)。2028年の第2四半期に稼働する予定だ参考資料5

後工程で設備投資が活発になってきた理由を、OSAT企業ランキングで5位(2024年実績)のPowertech Technology(台湾)の謝永達・執行長は次のように語っている。「現在、一部のパッケージング会社はNVIDIAなどのAI半導体大手からの注文で手いっぱいで、多くの中小顧客からの受注を断らざるを得なくなっている」。つまり、需要が多いのに生産が間に合わないから設備を増やそうという訳だ。このためPowertechでは2025年から、生産能力増強に向け、台湾にある既存のクリーンルーム施設を複数買収しているという。

以上、米国、欧州、台湾、韓国などが、半導体工場に盛んに投資を行い、虎視眈々と次世代リーダーになるべく準備を進めている。

[ 参考資料 ]

1. 津田建二、「世界の半導体工場 最新動向」、テレスコープマガジン、(2023/12/04)
https://www.tel.co.jp/museum/magazine/report/202312_01/
2. “Samsung moves toward second chip factory in Taylor as demand surges”, Korea JoongAng Daily, (2026/03/17)
https://koreajoongangdaily.joins.com/news/2026-03-17/business/industry/Samsung-moves-toward-second-chip-factory-in-Taylor-as-demand-surges/2543455/
3. “The Anchor of FutureAI memory in Indiana~SK hynix West Lafayette”, SK Hynix website, (2026/03/17)
https://www.skhynix.com/westlafayette.IN/
4. ”STMicroelectronics Details Company-Wide Program to Reshape Manufacturing Footprint”, SSemiconductor Digest, (2025/04/10)
https://www.semiconductor-digest.com/stmicroelectronics-details-company-wide-program-to-reshape-manufacturing-footprint/
5. “ASE Breaks Ground on New High-Tech Facility in Kaohsiung, Investing NT$ 17.8 Billion to Meet AI Chip Demand”, ASE Press Room, (2026/03/11)
https://ase.aseglobal.com/press-room/ase-breaks-ground-on-new-high-tech-facility-in-kaohsiung/
Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト。

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。

30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニストとしても活躍。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。著書に「エヌビディア~半導体の覇者が作り出す2040年の世界」(PHP研究所刊)、「半導体ニッポン」(フォレスト出版)、「メガトレンド 半導体2014-2025」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、などがある。

URL: http://newsandchips.com/

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