No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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世界最高レベルの信頼性を実現

これまで見てきたのは、東大生産技術研究所とその後の宇宙科学研究所(ISAS)において進められた固体ロケットの開発である。これとは別の流れで、日本には液体ロケットの開発もあった。この開発を担うことになったのは宇宙開発事業団(NASDA)。設立されたのは1969年、ISASが衛星の打ち上げに成功する前年のことだ。*1

NASDAが目指した液体ロケット開発であるが、液体エンジンは固体エンジンに比べ、構造が複雑で開発に時間も費用もかかる。難易度が高いので失敗する可能性すらある。開発の歴史が浅く、技術の蓄積が少ない日本ではなおさらだ。

そのため、NASDAが選択したのは、米国からの技術導入という道。機密性の高い重要な部分はブラックボックス扱いになるため、何かトラブルが起きたときに、日本側だけで解決できなくなるという問題はあるものの、より早くロケットを完成させることが可能。実際の打ち上げ経験を積むことで、貴重な運用技術を身につけることもできる。

米国の『Delta』ロケットの技術が導入された「N-I」ロケットの開発がスタートしたのは1970年。5年後の1975年には、早くも1号機が打ち上げられた。その後も、後継機「N-II」の初フライトは1981年、現行のHシリーズとなった「H-I」ロケットは1986年と、ハイペースで大型化が進んでいく。

日本が開発した液体ロケットの図表
[図表3] 日本が開発した液体ロケット
Credit:JAXA

液体ロケットとして、初めて国産化を果たしたのはその次の「H-II」ロケットである。第2段エンジンはH-Iですでに国産のものを搭載していたが、H-IIではより大きな第1段エンジンも独自開発。1986年に開発が始まり、エンジンの爆発事故が起きるなど開発は難航したものの、1994年に試験機の打ち上げに成功した。

だが、真の「産みの苦しみ」は、実はこれからであった。計3回の試験機の打ち上げの後、順調に飛行を続けているように見えたH-IIだが、1998年、6回目の打ち上げとなる5号機において、第2段エンジンの不具合が発生。燃焼時間が短かったため、予定した軌道への衛星の投入に失敗してしまった。*2

そして満を持したはずの8号機が1999年に打ち上げられたが、今度は第1段エンジンが飛行中に異常停止。衛星を投入できる見込みがなくなったため、ロケットは地上からの指令で爆破された。純国産ロケットは、「2機連続失敗」という窮地に立たされた。

ロケットは性能とともに、信頼性も重視される。打ち上げの成功率は一般に、95%程度が良いロケットの目安とされる。しかしH-IIは2回の失敗により、成功率は71.4%にまで低下してしまった。

それに対し、N-II、H-Iの成功率は100%だった。これだけ見ると、純国産路線は間違いだったと思われるかもしれないが、すでに信頼性が確立された技術が米国から導入されているわけで、失敗が少ないのはある意味当然である。独自の技術開発を選んだ以上、一時的な成功率の低下は避けられなかった道と言えるかもしれない。

ロケット N-I N-II H-I H-II H-IIA H-IIB
初フライト 1975年 1981年 1986年 1994年 2001年 2009年
全長 32.6m 35.4m 40.3m 50m 53m 56.6m
外径 2.44m 2.49m 4m 5.2m
重量 90.4t 135.2t 139.3t 260.0t 289t 531t
ステージ構成 3段式 2段式
エンジン 1段 MB3-3 LE-7 LE-7A
2段 LE-3 AJ-10 LE-5 LE-5A LE-5B
3段 スター37N スター37E UM-129A -
ブースタ キャスターII SRB SRB-A
打ち上げ能力 LEO 0.8t 1.6t 2.2t 10t 10t 16.5t
GTO 0.25t 0.7t 1.1t 4t 4t 8t
打ち上げ機数 7機 8機 9機 7機 22機 3機
成功率 85.7% 100.0% 100.0% 71.4% 95.5% 100.0%
[図表4] 各ロケットの仕様と成功率の一覧
H-IIBロケットの写真
[写真] H-IIBロケット
Credit:JAXA

H-IIは次に7号機の打ち上げが予定されていたが、検討の結果、これをキャンセル。すでに1996年より開発が始まっていたH-II改良型の「H-IIA」ロケットに注力することに決まった。

H-IIAは、2001年に試験機の打ち上げを実施。2003年の6号機が初めての失敗となったが、それ以降成功を続け、現時点(2013年4月現在)で打ち上げ総数は22機、成功率は95.5%と、世界的にも最高レベルの信頼性を誇るロケットとなった。2009年には、第1段エンジンを2基に増強した「H-IIB」ロケットも完成、こちらも3機連続で成功している。

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