No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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モノが良くても高ければ売れない

高い信頼性を確立したH-IIA/Bロケットであるが、これまでの運用で課題も見えてきた。

最も深刻なのはコストの高さである。号機ごとに違いはあるものの、H-IIAの打ち上げ費用は、1機あたりざっくり100億円。これまで22機を打ち上げたH-IIAだが、主衛星として搭載したのは全て国の衛星、つまり官需であった(21号機では韓国の衛星も主衛星として搭載したが、日本の主衛星との同時打ち上げ)。

スペースXのFalcon 9ロケットの写真
[写真] スペースXのFalcon 9ロケット
Credit:スペースX

民間から衛星の打ち上げを受注するには価格が重要。宇宙ベンチャーの米スペースXが開発した「Falcon 9」ロケットは、地球低軌道への打ち上げ能力が約13tとH-IIAと同クラスながら、費用は5,400万ドル(1ドル=94円で約51億円)とほぼ半額。Falcon 9の打ち上げ実績がまだ少ないとしても、これほど安い価格は顧客にとって非常に魅力的だ。

H-IIAは国が開発したロケットであるが、2007年の13号機より、打ち上げ事業は三菱重工業に移管されている。これは民間によるコストダウンも期待してのことだったが、H-IIAの設計のままではそれも限界がある。大幅な低コスト化のためには、抜本的に設計を変えた新型ロケットの開発が必要となる。

そこで検討されているのが、次世代の基幹ロケット(H-X)である。*3

民需の取り込みが必要なのは、官需だけでは、打ち上げ事業を継続するのが難しいからだ。日本の場合、国の衛星は1年に1〜3機程度しかなく、年度ごとにムラもある。ロケットの製造ラインに空きが出ると採算が悪化するので、なるべく民間から衛星打ち上げを受注して、コンスタントに4機程度になるようにしたい。

そのために、H-Xには、もっと低コストで、かつ信頼性も高いことが求められる。

H-Xの開発計画はまだスタートしていないものの、先を見据え、JAXAはこれまで様々な机上検討を重ねてきた。新しい大型ロケットの開発には長い年月が必要となる。H-Xがどのような姿になるのかは、今後、国で議論されて決まっていくだろうが、今のうちから技術的な検討を進めておくことは、開発失敗のリスクを減らすためにも重要なのだ。

基幹ロケットの維持・発展 補足説明資料の写真
[図表5] 機体構成の検討例(左上)。1段と2段は共通化し、小型ブースタや大型ブースタを組み合わせることで、中型から超大型まで広くカバーする

上の図は、文部科学省の「宇宙航空研究開発機構部会(第37回)」で提出されたJAXAの資料に出ていたH-Xの検討例だ。これはあくまで一例であり、これが実際にH-Xになるというわけではないのだが、この検討例では、共通の1段と2段をベースに、ブースタを柔軟に追加することで、幅広い打ち上げニーズに対応させるコンセプトであることが分かる。

ロケットの開発において、キーになるのはエンジンである。前述のように、大型の液体エンジンは構造が非常に複雑。新しいロケットの開発に時間がかかるのは、新しいエンジンの開発に時間がかかるためだ。

エンジンの開発が遅れれば、ロケットの完成も遅れる。仕様変更などがあれば、ロケット全体の設計にも影響が出る。ロケットとエンジンの開発を同時に始めるのは、技術的なリスクが大きいため、JAXAは先行して次世代の第1段エンジンの技術実証をすでに開始している。それが「LE-X」と呼ばれるプロジェクトである。

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