No.004 宇宙へ飛び立つ民間先端技術 ”民営化する宇宙開発”
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有人も視野に入れる次世代エンジン

液体エンジンは、燃料も酸化剤も液体のエンジンである。この組合せには様々な種類があり、それぞれ特徴があるのだが、最も燃費(比推力)に優れるのは、燃料に液体水素(LH2)、酸化剤に液体酸素(LOX)を使った場合。H-IIシリーズは、第1段、2段ともLH2/LOXのエンジンである。

液体エンジンは、ターボポンプで燃料と酸化剤を高圧にし、燃焼室で混合して燃焼させることで、推力を得ている。このターボポンプを駆動する方式(サイクル)により、液体エンジンは以下の表のように、4種類に区分される。

  タービン駆動後の処理方式
クローズドサイクル オープンサイクル
タービンガス
の発生方式
副燃焼室あり 2段燃焼 ガスジェネレータ
副燃焼室なし フルエキスパンダー エキスパンダーブリード
[図表6] 4種類のエンジンサイクル

ターボポンプのタービンは、いずれの方式でも、推進剤のガスにより駆動されている。表の上側と下側は、副燃焼室で燃焼させたガスを使うか、それとも燃焼させずにそのまま使うかの違い、左側と右側は、駆動に使ったガスを燃焼室に戻すか、それとも外部に排気するかの違いだ。

一般的に、上側のサイクルは、燃焼ガスにより大きなタービンパワーを得るので、大推力を出しやすい。つまり第1段のエンジンに向いていると言える。また右側のサイクルは、推進剤のガスを一部捨てることになるので、比推力が低下する。一概には言えないが、傾向としては、上段のエンジンとして使うには、左側のサイクルの方が有利だ。

日本で初めて開発されたLH2/LOXエンジンは、H-Iの第2段エンジンの「LE-5」である。このLE-5を起点として、第2段エンジンは「LE-5A」(H-II)、「LE-5B」(H-IIA/B)と進化。一方で、大推力化した第1段エンジンも開発し、こちらは「LE-7」(H-II)、「LE-7A」(H-IIA/B)と発展することになる。

LEシリーズの写真
[図表7] LEシリーズには、2段用のLE-5系と1段用のLE-7系がある
Credit:JAXA

LE-5は、比較的開発がしやすかった「ガスジェネレータ」サイクルを採用していたが、H-II用のLE-7では「2段燃焼」サイクルに挑戦。2段燃焼は高い性能が期待できる反面、構造が複雑なため開発が難しい。LH2/LOXエンジンで2段燃焼サイクルを実用化できたのは、LE-7シリーズのほかは、米国の「スペースシャトル」と、旧ソ連の「エネルギア」しかないくらいだ。

だが、JAXAの次世代エンジンとして検証が進められているLE-Xは苦労して開発した2段燃焼ではなく、「エキスパンダーブリード」サイクルを採用する。エキスパンダーブリードは日本独自のサイクルで、LE-5A/Bで実用化したものだ。

LE-Xの模型(左)。LE-7A(右)の写真
[写真] LE-Xの模型(左)。LE-7A(右)と比べても、配管などがかなりシンプルになっていることが分かる

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