No.021 特集:デジタルテクノロジーが拓くエンターテインメント新時代

No.021

特集:デジタルテクノロジーが拓くエンターテインメント新時代

連載01

5Gの性能を左右する半導体とは何か?

Series Report

第2回
5Gを実現する上で必要なテクノロジー

2019.9.30

文/津田建二

5Gを実現する上で必要なテクノロジー

第1回では、5Gとは何か、また、アメリカや韓国で始まったばかりの5Gの商用化が、今の段階では4GのLTE通信の延長にすぎないという現状課題をお伝えした。今回の第2回では、5Gの本命技術である「ミリ波」と呼ばれる電波の特徴と、ミリ波の弱点を解決し、たくさんのユーザーの通信を可能にする「ビームフォーミング」と呼ばれる電波の合成技術を中心に、本来期待される5Gの能力を発揮するために必要なテクノロジーを紹介する。そして第3回では、5Gを実現するために必要となる半導体チップを紹介していく。

ミリ波という電波

かつて、高い塔や施設、また船舶の上などで、回転するアンテナ型のレーダー(電波探知機)を見たことがある方も多いのではないだろうか。アンテナを回転させながら電波を飛ばし、周囲に物体があるかないかを探るための装置であり、もし物体があれば電波は反射して戻ってくるため、その反射電波を検出することで物体を認識する。

ところが昨今は、その回転するアンテナを見かけなくなった。かといって360度周囲を見ていないわけではもちろんない。今は平面状のアンテナが設置されており、それが電子的に回転し360度の包囲で物体を探っている。

そんなレーダー技術が、自動運転、自動ブレーキシステムを搭載した自動車の物体検出にも使われ始めた。これらの車載レーダーは、直進的な電波を使い、遠く前方の物体を検出できる。濃霧や吹雪の視界が見えない状況下では映像認識のカメラはほとんど役に立たないが、電波の反射で物体を認識するレーダーは、このような状況下で威力を発揮する。

最近発売された日産自動車の新型スカイラインにもレーダーが搭載され、人の目には見えない、カメラでは認識が難しいものを認識し、さらに認識した物体をディスプレイ上で姿を合成して映し出す。レーダーはクルマの前方と4隅に配置されているが、実際にはどこにあるのかわからないようにデザインされている(図1)。

[図1]日産自動車の新型「スカイライン」
2019年9月17日に販売を開始した日産自動車の新型「スカイライン」には、物体検出のために5個のレーダーが搭載されているが、クルマのデザイン上わからないように配置されている。
出典:日産自動車
日産自動車の新型「スカイライン」

このレーダーに使われている電波技術が、今後5G通信で使われるものと同じミリ波なのだ。ミリ波とは、波長が1〜10mm、周波数が30〜300GHzの電波のこと(厳密には30GHz〜300GHzが10mm~1mmになる)。

ちなみに、ラジオで使われている中波と呼ばれる電波の周波数は、例えば954kHzであれば、波長は300mほどになる*1。しかし、テレビの周波数は100MHz前後と200MHz前後のVHFから、500MHz~700MHz程度のUHFまであり、次第にその波長は短くなる。100MHzで3m、500MHzだと60cmとなり、携帯電話の900MHz帯だと33cmとさらに短い。衛星放送は12GHzだから放送電波では周波数が最も高く、その波長は2.5cmしかない。そのため受信感度を高めようと電波を集めて集中させるパラボラアンテナを使っている。

電波は周波数が高く(波長が短く)なるほど、指向性(直進性)が高くなると同時に届く範囲が短くなる。また載せられる情報量が増え、通信速度も高速になる。

なお、ミリ波は基本的に30GHz以上の周波数を指すが、最近は24GHz、28GHzもミリ波と呼ぶことが多い。これは総務省や、各国の周波数割り当ての権限を握る政府機関によって周波数帯が決まるためであり、波長が12.5mmの24GHzをミリ波と呼んでも目くじらを立てることではない。

[図2]電波の種類と主な用途
出典:Tech Web IoT
電波の種類と主な用途

[ 脚注 ]

*1
周波数から波長を算出する方法:電波は光と同じく1秒間に30万km(300,000,000m)の速さで進むため、波長(m)=300,000,000÷周波数(Hz)で計算できる。なお周波数をMHz(100万Hz)に置き換えると、波長(m)=300÷MHzとなり計算が容易になる。計算すると954kHz(0.954MHz)の波長は、314mであることがわかる。
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