No.022 特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた:我々はどこから来て、どこへ向かうのか

No.022

特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた。我々はどこから来て、どこへ向かうのか。

連載01

系外惑星、もうひとつの地球を探して

Series Report

その後、トランジット法で発見される系外惑星の数は急激に増加することになる。その後押しをしたのが、2009年に打ち上げられたアメリカ航空宇宙局(NASA)の系外惑星探査機ケプラーだ(図5)。ケプラーは探査機という名前がついているものの、その実態はトランジット法によって系外惑星を探すことに特化した宇宙望遠鏡だ。

225万画素のCCDを42基搭載し、当時、宇宙に打ち上げられたものとしては最大規模の画素数を誇り、1度にたくさんの恒星を観測する能力をもっていた。たくさんの恒星を一定の間隔で観測し続けることで、それぞれの恒星の明るさの変化から、系外惑星を探し出した。主鏡の口径は1.4mと、大きな望遠鏡ではないが、大気のゆらぎなどにじゃまされないために、地上での観測よりも小さな系外惑星を発見することができたのだ。

ケプラーは姿勢を制御するリアクションホイールの故障によって、2013年8月に初期観測を終えた。しかし、すぐに残されたリアクションホイールなどをうまく使って姿勢を制御することで、新たにK2と呼ばれる観測ミッションを開始。K2ミッションはケプラーの燃料がなくなる2018年10月30日まで続いた。

[図5]系外惑星探査機ケプラーの観測イメージ
©NASA Ames/JPL-Caltech/T Pyle
系外惑星探査機ケプラーの観測イメージ

系外惑星によって大きく変化した宇宙観

9年間にケプラーが観測した恒星は50万以上におよんだ。2019年11月30日現在、4000個以上の系外惑星が発見されているが、そのうち2600個以上はケプラーの観測データから見つかっている。系外惑星の統計的なデータを見ると、この宇宙に存在するほとんどの恒星は惑星をもっているといっていいだろう。

ケプラーは膨大な量の観測データを残していて、解析はまだ終わっていない。トランジット法での系外惑星探しは、恒星の光量の変化をとらえることが重要だ。つまり、系外惑星を発見するには、同じ恒星の画像をいくつも見比べて、光が周期的に変化していることを確認しなければならず、解析には時間がかかる。そこで、人工知能(AI)技術の1つである機械学習を利用して、解析を自動化する研究も進められている。AIにこれまでの解析結果を学習させて、トランジットが起こっている恒星のデータを選びだそうということだ。この試みがうまくいけば、発見される系外惑星の数は加速度的に増えることが予想される。

2018年4月には、NASAが新しい系外惑星探査衛星TESS(図6)を打ち上げた。TESSはケプラーと同じようにトランジット法で系外惑星を探す衛星だが、より地球に近い場所で、地球に似た惑星を発見することを目的にしている。TESSには、16.8メガピクセルのCCDが4つ搭載されており、ケプラーの350倍の空間を1度に観測できる。2019年11月30日現在、TESSによって30個以上の系外惑星が発見されていて、その数は、今後、どんどん増えていくだろう。

[図6]系外惑星探査衛星TESの観測イメージ
©NASA's Goddard Space Flight Center
系外惑星探査衛星TESの観測イメージ

現在知られている系外惑星は、トランジット法やドップラー法などで間接的に発見されたものがほとんどだ。最近では、大気のゆらぎをキャンセルしてより鮮明な天体の像を撮影する補償光学技術を組み合わせることで、すばる望遠鏡で系外惑星の直接撮影にも成功するようになってきた。だが、直接撮影された系外惑星の数は、まだあまり多くない。今後、系外惑星の直接撮影の研究が進めば、系外惑星の環境などがよくわかるようになり、地球外生命の発見につながると期待されている。

マイヨールとケローの発見は、人類が長年探し続けてきた系外惑星が、この宇宙の中に実際に存在することを示した。25年ほどの間に、惑星は太陽系だけに存在する特別なものではなく、この宇宙のほとんどの恒星がもつごく当たり前のものであることがわかってきた。そして、数えきれないほど存在する惑星の中には、地球のように生命が育まれているものもきっとあることだろう。

2人の発見は、これまで荒涼とした空間だと見られていた宇宙が、一転してたくさんの生命が存在する可能性のある豊かな空間であると考えられるようになった。地動説が天動説を覆したことに匹敵するほどの大きな宇宙観の変化をもたらした。その功績が認められたからこそ、マイヨールとケローに2019年のノーベル物理学賞が贈られたのだ。

系外惑星の研究は大きな学問分野へ成長し、現在は天文学、物理学、生物学といったこれまでの学問の垣根を越えて、地球外生命の探索が視野に入ってきた。系外惑星の研究から、太陽系や地球誕生の謎、生命誕生の謎など、長い間、人類が抱き続けてきた疑問を解き明かす大きなヒントが得られるかもしれない。

Writer

荒舩 良孝(あらふね よしたか)

科学ライター

東京理科大学在学中より科学ライター活動を始める。宇宙論から日常生活で経験する科学現象まで幅広い分野をカバーし、取材・執筆活動を行ってきた。日々、新発見が続いている科学のおもしろさを、たくさんの人に伝えていきたいと思っている。主な著書は『5つの謎からわかる宇宙』(平凡社)、『思わず人に話したくなる地球まるごとふしぎ雑学』(永岡書店)など。

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