No.022 特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた:我々はどこから来て、どこへ向かうのか

No.022

特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた。我々はどこから来て、どこへ向かうのか。

連載01

系外惑星、もうひとつの地球を探して

Series Report

第2回
もう1つの地球の条件

2020.01.31

文/荒舩良孝

もう1つの地球の条件

太陽以外の恒星の周りを回る系外惑星は、1995年に最初の1つが発見されてから、たくさん発見されてきた。2009年に系外惑星探査衛星ケプラーが打ち上げられて以降は、発見の速度は急激にあがり、その数は今や4000個を優に超えている。系外惑星の中には、太陽系の惑星には見られない変わった特徴をもつものもある。系外惑星や地球外生命の探査についての動向に迫る本連載。第2回では、これまで発見されてきた代表的な系外惑星や地球外生命発見の可能性について解説する。

常識外れの惑星だったペガスス座51番星b

1995年にミシェル・マイヨールとディディエ・ケローが発見した系外惑星ペガスス座51番星bは、木星の半分ほどの質量をもつ巨大なガス惑星だった(図1)。太陽系にある惑星の常識に当てはめれば、巨大ガス惑星は主星である太陽から遠く離れた場所に存在している。例えば、木星は太陽から7億5000万kmも離れた距離に位置している。

太陽系内の常識で考えると、巨大ガス惑星は、主星から遠く離れた場所にあって、公転の周期も長いはずだった。だが、ペガスス座51番星bは、その常識から大きく外れていた。巨大なガス惑星なのに、主星から780万kmほどしか離れておらず、4.23日というとても短い周期で主星の周りをグルグル回っていたのだ。太陽系の惑星の中で太陽に一番近い水星でも、太陽から約5984万kmも離れ、公転周期は88日もある。この2つの惑星を比べただけでも、ペガスス座51番星bが、いかに主星の近くで、速く動いていたかがわかるだろう。

[図1]ペガスス座51番星b
この惑星には主星からの距離、公転周期の速さなど、太陽系の常識が当てはまらない。
©ESO/M. Kornmesser/Nick Risinger
ペガスス座51番星b

恒星と惑星は、宇宙を漂っているガスや塵がダークマター(暗黒物質)などの重力に引き寄せられることでつくられる。ガスや塵が1つの場所に集まってくると、中心部分の密度や圧力がどんどん高まっていく。そして、ある一定の密度と圧力を超えると、中心部分で核融合反応が始まり、恒星の赤ちゃんともいえる原始恒星が誕生する。原始恒星の周りには、残ったガスや塵が円盤状に広がり、原始惑星系円盤を形づくっていく。この原始惑星系円盤のガスや塵がだんだんと集まり、惑星になっていくのだ(図2)。

[図2]惑星が作られていく過程
円盤状に広がるガスや塵が衝突と合体を繰り返して惑星へと成長していったと考えられている。
出典:理科年表 https://www.rikanenpyo.jp/FAQ/tenmon/faq_ten_007.html
惑星が作られていく過程

太陽系では、太陽に近い位置には水星、金星、地球、火星といった、小さな岩石惑星、遠い場所には木星、土星といった巨大ガス惑星、さらに遠くに行くと天王星、海王星といった巨大氷惑星が存在する。太陽から近い場所は、太陽から届く熱の量が多いために、熱に強い岩石や金属だけが残り、それらの材料から小さな岩石惑星がつくられる。

一方、太陽から遠い場所は、太陽から届く熱の量が少なくなるので氷の粒も溶けずに宇宙空間を漂っている。つまり、惑星の材料となる物質が太陽に近い場所よりも多いために、岩石惑星よりも大きな核をつくることができる。木星の場合、この氷と岩石の核だけでも、地球の10〜45倍もあると見積もられている。

木星や土星は、氷の存在によって大きな核をつくったことで、原始惑星系円盤の中に残っていたガスを集め、巨大ガス惑星になったといわれている。天王星と海王星も木星や土星と同じように、岩石とともに氷の粒を取りこんで、大きな核をつくったが、太陽系の外側に位置することで、木星や土星よりも核の成長が遅くなってしまい、取りこめるガスの量が少なくなってしまったと考えられている。

Cross Talk

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前編 後編

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第1回 第2回 第3回

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