No.022 特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた:我々はどこから来て、どこへ向かうのか

No.022

特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた。我々はどこから来て、どこへ向かうのか。

連載01

系外惑星、もうひとつの地球を探して

Series Report

ハビタブルゾーンの岩石惑星の観測へ

NASA(アメリカ航空宇宙局)の系外惑星探査機ケプラーが打ち上げられると、系外惑星の観測数が急激に増加し、スーパーアースや地球に近い大きさの惑星の観測数も増えた。その中でも、特に注目されているのはハビタブルゾーン(生命居住可能領域)内にあるものだ。ハビタブルゾーンとは、主星からの距離がちょうどよく、惑星の表面に液体の水が存在できる領域だ(図9)。しかも、この領域は、生命活動に必要なエネルギーも過不足なく供給されると考えられている。つまり、有機物、液体の水、エネルギーという生命が存在するための3つの条件がすべてそろっているので、地球外生命が存在する可能性の高い惑星なのだ。

[図9]太陽系のハピタブルゾーン
出典:理科年表 https://www.rikanenpyo.jp/FAQ/tenmon/faq_ten_003.html
太陽系のハピタブルゾーン

2014年には、地球から492光年ほど離れた場所にある岩石型の系外惑星ケプラー186fが発見され話題になった(図10)。ケプラー186fは直径が地球の1.1倍と、地球にかなり近い大きさなのだ。ケプラー186fと主星であるケプラー186の距離は、地球と太陽の距離の0.4倍程度しかないが、ケプラー186は太陽よりも小さく、光の弱い赤色矮星に分離される星であるために、ハビタブルゾーンに入っている。これだけ小さくて、ハビタブルゾーンに入っている系外惑星が発見されたのは初めてのことで、生命の存在も多いに期待される。だが、ケプラー186fは、地球からの距離が遠いために、惑星の質量や大気の有無など、詳しい情報を得ることができない。地球外生命が存在する可能性はとても高いが、それを証明する手段がないのだ。

[図10]ケプラー186fのイメージ
地球によく似た大きさで生命が存在する可能性が非常に高い
©NASA/Ames/SETI Institute/JPL-Caltech
ケプラー186fのイメージ

そのため、天文学者たちは、より地球の近くにある系外惑星の探査を進めている。ただし、地球の近くに限定してしまうと、太陽に近い恒星の数は限られてしまう。そこで、注目されているのが赤色矮星の周りにある系外惑星だ。例えば、2016年7月には、地球から40光年離れた赤色矮星トラピスト-1の周りにある系外惑星のトラピスト-1bとトラピスト-1cの大気が初めて観測されたという報告がされた(図11)。

[図11]トラピスト-1の惑星系のイメージ
地球や金星のような大気を持つ可能性が高い岩石惑星。大気の主成分の観測結果次第で、生命存在の可能性が高まる
©NASA/JPL-Caltech
トラピスト-1の惑星系のイメージ

研究チームは、ハッブル宇宙望遠鏡を使い、2つの系外惑星が主星である赤色矮星の前を横切るときに、惑星の見かけの半径の変化をとらえることで、それぞれの惑星の大気成分を推定した。この2つの惑星は、どちらも地球と同じくらいの大きさで、その大きさから岩石惑星とみられていたが、この大気の測定の結果、どちらも地球や金星のような大気をもつ岩石惑星である可能性が高いことが示された。ただし、これらの惑星の大気の主成分や生命居住の可能性は、まだはっきりしていない。

また、2019年9月には、地球から124光年離れた場所にある赤色矮星K2-18の惑星K2-18bの大気に水蒸気が含まれていることを確認したという観測結果が発表された(図12)。K2-18bは地球の2倍程度の大きさをもつスーパーアースであるが、K2-18のハビタブルゾーンに位置し、表面に液体の水でできた海が存在する可能性がある。今回の観測結果からはK2-18bに海が存在することまでは確認できないが、岩石惑星であることと水の存在が両方確認された惑星は初めてのことだった。

[図12]K2-18bのイメージ
初めて水の存在が確認された岩石惑星。生命存在の期待が高まる
©ESA / Hubble、M. Kornmesser
K2-18bのイメージ

次世代望遠鏡への期待

系外惑星の大気をより詳しく調べることができれば、その成分から地球外生命の痕跡や間接的な証拠が得られるのではないかと期待されている。トラピスト-1b、1c、K2-18bについては、生命の証拠を得る一歩手前まで来たといっていいだろう。しかし、現在の観測システムでは、これ以上詳しく調べるのは難しい。

だが、2020年代には、NASAが中心となって開発しているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(図13)、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が構想している超大型望遠鏡E-ELT(European Extremely Large Telescope)(図14)、アメリカのカーネギー天文台、アリゾナ大学が中心となり建設を進めているGMT(Giant Magellan Telescope)(図15)などの次世代望遠鏡が相次いで稼働する予定になっている。これらの次世代望遠鏡が本格的な観測を開始すれば、様々な系外惑星で詳しい大気の観測をすることができ、地球外生命の存在がより確かなものになるかもしれない。

[図13]ジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡
©NASA
ジェームズ・ウェブ宇宙望遠鏡
[図14]E-ELTのイメージ
©ESO/L. Calçada
E-ELTのイメージ
[図15]GMTのイメージ
©MasonMediaInc.
GMTのイメージ

地球外生命の存在する惑星を探すことを、「第二の地球探し」と表現することが多い。地球に似た条件をもつ惑星に生命が存在する可能性が高いことから、そのような惑星は「第二の地球」や「もう1つの地球」などといわれる。だが、今のところ、ターゲットとなっているのは赤色矮星の周りにある系外惑星だ。

赤色矮星から放出される光は、太陽からの光よりも弱く、近赤外線が多いことが知られている。太陽とは違う光を受ける系外惑星に生命が存在していたとしても、それが地球のような環境であるとは限らない。たとえ、どのような環境だとしても、地球以外の場所で生命が発見されることで、生命とは何かがより深くわかるようになる。地球外生命が存在するのは、どのような惑星なのか、これからの観測がとても楽しみだ。

Writer

荒舩 良孝(あらふね よしたか)

科学ライター

東京理科大学在学中より科学ライター活動を始める。宇宙論から日常生活で経験する科学現象まで幅広い分野をカバーし、取材・執筆活動を行ってきた。日々、新発見が続いている科学のおもしろさを、たくさんの人に伝えていきたいと思っている。主な著書は『5つの謎からわかる宇宙』(平凡社)、『思わず人に話したくなる地球まるごとふしぎ雑学』(永岡書店)など。

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系外惑星、もうひとつの地球を探して

地球外知的生命体は存在するのか?

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