No.022 特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた:我々はどこから来て、どこへ向かうのか

No.022

特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた。我々はどこから来て、どこへ向かうのか。

連載02

ブラックホール研究の先にある、超光速航法とタイムマシンの夢

Series Report

第2回
光よりも速く飛ぶ!
超光速航法”ワープ”は実現できるか?

2020.01.31

文/鳥嶋真也

光よりも速く飛ぶ!超光速航法”ワープ”は実現できるか?

光の速さを超えるスピードで宇宙を飛翔する「超光速航法」。別名「ワープ」とも呼ばれるこの技術は、古今東西、さまざまなSF小説や映画で描かれてきた。もし光速より速く飛べたなら、月や火星の日帰り旅行はもちろん、別の惑星系や銀河へ旅することも可能になり、まさにこの宇宙を闊歩することができる。しかし、そんな夢の大きさと反比例するかのように、超光速航法の実現性は否定され続けている。なぜ、光よりも速く飛ぶことはできないのだろうか? そもそも光速とはどんなものなのか? そして、本当に超光速航法は不可能なのか? もし光速を超えたら何が起こるのか? などの疑問に迫っていきたい。

光速とは何か?

超光速航法、あるいはワープと呼ばれる技術が描かれた作品は数多く、いまなお新しいドラマが作られ続けている『スター・トレック』をはじめ、この冬に最新作が話題となった『スター・ウォーズ』、またブラックホールのリアルな描写でも話題になった映画『インターステラー』など、枚挙にいとまがない。

ちなみにワープ(Warp)とは「歪める」などといった意味で、『スター・トレック』において空間を歪ませて超光速で航行するというアイディアが用いられたことから、ワープという言葉が超光速航法を指すものとして定着した。

[図1]ワープのイメージ

しかし、現実には、そんな技術はまだ実現していないばかりか、そもそも不可能であることがほぼ確実となっている。なぜ、光速を超えることはできないとされているのだろうか?

物理学者のアルベルト・アインシュタイン(1879~1955)が提唱した相対性理論では、「光は万物の中で最速であり、何も超えることはできない」とされ、そのうえでさまざまな理論が組み立てられ、この世界の姿かたちが説明されている。もし、光よりも速いものが存在したとしたら、このアインシュタインの相対性理論、すなわち現代の物理学の根幹をなす理論と矛盾してしまい、そして人類が現在認識しているこの世界の姿かたちは間違いということになり、物理学の教科書がすっかり文字どおり書き換わってしまうことになる。

この光の速度とは、真空中における光の速度(光速)のことで、秒速29万9792.458km(約30万km)にもなる。これは1秒間に地球を7周半もできる速さである。

そしてこの光というものは、私たちがよく知る物質や粒子などとは異なり、とても変わった、そして寸分の狂いもないきわめて厳格な性質をもっており、それ故に人類の力では、光速を超えるどころか、光速に達する物質を生み出すこともできない。

たとえば通常の物体、野球のボールなどを走っている車から前向きに投げた場合、外で観察している人からは、そのボールは、投げたときの速度と、車の速度とを足した速度で飛んでいくように見える。これと同じように、たとえば走りながら懐中電灯の明かりをつけたとしたら、走る速度と光速が足され、その懐中電灯の光は光速を超えることができるのでは? とは誰もが思いつくところだろう。

しかし実際には、その光の速さは約30万kmでまったく変わらない。これは新幹線や飛行機、ロケットに乗ってやったとしても同じである。これを「光速度不変の原理」と呼び、相対性理論の基本原理のひとつとなっている。

また、”真空中における光速は秒速約30万km”と書いたように、空気中や水中では、それらを構成する原子や分子が光の進みを邪魔するため、光の速度が落ちる。たとえば空気中の光の速度は、真空中の約99.97%に、水中なら約75%にまで落ちるため、空気中や水中では、物質や粒子などが、この光の速度を超えることは可能ではある。

[図2]水中を進む光
空気中や水中では光の速度が真空中を進むときよりも落ちる。
©Pixabay
水中を進む光

しかし、空気中でも水中でも、最大速度自体は真空中における光速である秒速約30万kmのままで変化することはない。つまり、水中などにおける光速を超えられたとしても、秒速約30万kmを超えない限りは、それは超光速航法やワープとは言えないのである。

そして、そもそも人類が作り出せる現実的な範疇では、光速に達することもできないことがわかっている。たとえば、欧州原子核研究機構(CERN)にある大型ハドロン衝突型加速器(LHC)という装置では、陽子を光速の99.9999991%まで加速させ、それらをぶつけることでさまざまな研究を行っている。粒子をそこまで加速させられるなら、もう少しエネルギーを加えれば光速を超えられそうな気もするが、実際には粒子が光速に近づけば近づくほど、加速に必要なエネルギーが大きくなっていき、光速は超えられないどころか、光速に達する速度を得るのにも無限大のエネルギーが必要になるため不可能である。これは相対性理論からも、そして実際の実験でも明らかになっている。

[図3]CERNの大型ハドロン衝突型加速器
陽子を光速の99. 9999991%まで加速させることができる。
©Wallpaper Flare
CERNの大型ハドロン衝突型加速器
Cross Talk

本間教授に聞く!史上初、ブラックホール撮像成功までの道程

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