No.023 特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

No.023

特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

連載02

5Gの虚像と真実

Series Report

第1回
日本の5Gは本当に周回遅れなのか

2020.07.01

文/津田建二

日本の5Gは本当に周回遅れなのか

「日本の5G商用サービスは周回遅れ」、「5Gになると極めて高速になり2時間の映画をわずか3秒でダウンロードできる」。いずれもよく言われる言葉だが、いずれも正しくない。5Gの商用サービスは始まったばかりであり、むしろ日本は、先行した韓国・アメリカと違い他の国と歩調を合わせて商用化を始めている。加えて、ダウンリンク20Gbpsのデータ速度よりもまだケタ違いに遅い。この連載では、5Gの正確な姿をあぶりだし、そこに含まれる問題は何であるかを整理する。連載第1回では、5Gの現状を伝え、第2回ではなぜ誤解を受けているのか、その背景と進化のロードマップ、第3回では第2世代の5Gと言われるミリ波技術と6Gについて紹介する。

2018年のソウル冬季オリンピックに合わせ5Gサービスをスタートさせる、と韓国は意気込んでいたが、結局2019年4月の開始となった。韓国に負けまいとして、アメリカやヨーロッパ(スイス)でも、ほぼ同時期に5Gのサービスを始めた。日本では、これらの国と比べて少し遅れ、2020年3月にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクがサービスを始めた。楽天は6月に始める予定だ。

5Gになると、「2時間の映画をわずか3秒でダウンロードできる」と新聞やメディアが報じているが、5Gサービスが始まって1年以上経つのに、未だに実現できていない。なぜ、こんなギャップができたのか。無理に5Gとは何かという言葉を表現するからだ。そもそも2時間映画を3秒でダウンロードできるからといって、それが何なの?と言いたくなる。それが5Gならインパクトはほとんどない。

誰もがスマホで写真や動画をアップする時代

5Gのダウンリンクの目標値を20Gbpsとした狙いは、大勢での同時使用によるデータ速度の遅延解消であるというのが、NTTドコモをはじめとする通信業者の考えだ。個人使用の高速化ではない。このため、5Gサービスは2019年から始まったものの、2020年でもモバイル加入者は、まだわずかしかいない(図1)。

[図1]5Gの立ち上がりは始まったばかり、普及はこれから
出典:Ericsson Mobility Report
5Gの立ち上がりは始まったばかり、普及はこれから

2020年は東京オリンピック・パラリンピックが開催されるはずだった。新型コロナウイルスの感染拡大(パンデミック)によって、1年延期されることになったが、オリンピック・パラリンピックのように人が大勢集まるイベントでは、最近はほぼすべての観客が面白いシーンをスマホやタブレットなどで撮影し、インターネットにアップする(図2)。このためアップリンクの最大のデータ速度の目標を10Gbpsと定めた。さもないと、みんなが一斉にアップしたりダウンロードしたりすると、たちどころに遅くなり、ひどい場合には接続されなくなってしまうからだ。例えば1Gbpsでも100人が回線を占有したら、一人当たり10Mbpsしかない。だから、東京五輪に合わせて5Gをスタートさせようとしたのである。

[図1]5Gは4Gよりは速いが目標の10Gbpsよりはずっと遅い 図はピーク時のデータ速度で、平均速度はこれらの1/3~1/7に遅くなる
出典:Ericsson Mobility Report 2020年6月版
5Gは4Gよりは速いが目標の10Gbpsよりはずっと遅い 図はピーク時のデータ速度で、平均速度はこれらの1/3~1/7に遅くなる

ただし、8月に開催される予定では、現在の5Gはデータレートがまだ200〜400Gbps程度しかないため、Wi-Fiも組み合わせる方式を予定していた。現在のサブ6GHzの周波数帯(日本は3.7GHzと4.5GHz)が中心の通信では1Gbpsさえ実現は難しい。

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