No.023 特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

No.023

特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

連載02

5Gの虚像と真実

Series Report

第3回
日本での注目はローカル5G、基地局技術のオープン化にも期待

2020.08.21

文/津田建二

5G応用はリモート時代に威力を発揮

現在、日本で注目されているローカル5Gは、モノづくり大国ニッポンに向いた5Gの応用といえる。すでに欧州ではプライベートLTEが進んでいるが、この延長としてローカル5Gがある。これまで日本の5Gが決して周回遅れではないことを述べてきたが、基地局作りにおいても日本が活躍できるO-RANテクノロジーが出てきた。第3回は日本での活躍が期待される第2世代の5G技術について紹介する。

第2回で紹介しきれなかった5Gの応用のうち、今日本で最も注目されているローカル5Gについて語りたい。通常の5Gが、日本全国に展開する無線ネットワークであるのに対して、ローカル5Gは、限られた区域、例えば工場内や流通倉庫内、イベント会場内などの現場で使うプライベートな無線ネットワークの5G版である。国内では、4.5GHz帯と28GHz帯の二つの周波数帯を、ローカル5Gとして使うことが決まっている(図1)。4.5GHz帯は、まだ公共業務システムとの調整が必要であり、ローカル5Gへの交付が決まった訳ではないが、2019年12月に28GHz帯の中の帯域100MHzを使うことが決まり、ローカル5Gの免許申請の受付が始まった。また同じ28GHz帯でも28.3〜29.1GHzのどこかの帯域を使えることが決まったものの、まだこれも調整が必要となっている。

[図1]ローカル5Gの免許申請の受付が始まった
作成:津田建二
ローカル5Gの免許申請の受付が始まった

早速、実験を始めたのは、JAL(日本航空)とKDDIの共同プロジェクトだ。JALはローカル5Gを空港内で利用することで、これまでのLTEでは難しかった4K動画の伝送やVR/AR(仮想現実/拡張現実)利用など、5Gでなければリアルタイムでグラフィック表示できない応用を狙っている(図2)。

[図2]JALとKDDIが共同で実験を進めているローカル5Gの利用シーン
出典:JAL、KDDI
JALとKDDIが共同で実験を進めているローカル5Gの利用シーン

JALにとっては、事故を起こさないことが最大のミッションである。整備不良は許されない。人命にかかわるからだ。例えば、航空機の点検作業は現在、整備士に任せているが、どんな些細なミスも許されないミッションクリティカルな状況では、二重、三重のチェックが欠かせない。整備士の整備状況を遠隔地からでもリアルタイムでチェックするためには、4K画像のように鮮明なビデオを本部へ、リアルタイムで送る必要がある。5Gの伝送速度であれば、これが可能だ。

実はJALとKDDIは2019年3月から公衆網の5Gを利用して、実証実験を進めてきた。出発準備中の航空機の近くや格納庫などの現場にいる整備士の作業を、離れた場所にいる指示者が確認・指示を行うことを想定した実証実験である。細かい部品が多く使用されている電子部品の解体・組立の指示を、指示者が映像を確認しながら円滑に実施できるかどうかの検証も行っていた。

それ以前の2018年11月からは、顧客のユーザーエクスペリエンスを満たすような応用に関する実験を行っている。一つは図2の左下にあるように、スマートフォンの専用アプリなどで事前にチェックインすると搭乗ゲートに設置した5G受信機でチェックイン情報を検知、認証を行う利用シーンだ。タッチレスで搭乗ゲートを通過できるため、新型コロナ時代に向いた応用となる。二つ目は、やはり同じ左下の、VR/ARを使った娯楽映像で、空港のラウンジなどで搭乗時間までの間に楽しむというシーンだ。

さらに図2の右上にあるように、空港では預ける荷物を空港建物から搭乗機までの間で運搬したり、飛行中に提供する食事を運搬したりするような特殊な車両が多い。将来的に人手不足になれば、本部から車両を運転するために5Gを使うという利用シーンも考えられている。

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