No.023 特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

No.023

特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

連載02

5Gの虚像と真実

Series Report

第2回
5G応用はリモート時代に威力を発揮

2020.07.31

文/津田建二

5G応用はリモート時代に威力を発揮

5Gは今後10年に渡って技術と規格が進化していく通信方式である。おそらく2030年に最終目標のダウンリンク最大20Gbps、アップリンク最大10Gbpsが実現されているだろう。6Gはさらに先の2030年代の話である。だから、日本が遅れているという指摘は全く当たらない。しかも5Gで負けたから6Gで勝負という発想は、さらに誤解を深めている。連載第1回では、データレートを中心に解説したが、第2回では遅延と多接続における最近の動きについて紹介する。さらに今後の規格の動きについても解説する。そして第3回では、ミリ波とテラヘルツ波の動向について紹介する。より高周波が2030年代に花開く6Gの主力技術となるからだ。

遅延の誤解

5Gの二つ目の特長である遅延についても誤解がある。遅延が数ミリ秒(1/1000秒単位)以下という要求は、リアルタイム応答になるという意味である。電磁波(あるいは電波)は、携帯電話の基地局から電話へ直接飛ぶだけではなく、ビルなどの建物や橋梁などに反射して電話に届くまでに何度も反射を繰り返すことがよくある。この場合はどうしても遅れてしまうが、それでも遅延なく届くことが5Gでは求められる。

それだけではない。電話は一般に電話から基地局、さらに中央のコア基地局で交換され、通話相手の近くの基地局を経て、相手の電話へとつながる(図1)。この過程で遅延と言っているのは、中央コア基地局での演算処理などは含めず、単なる電話機から近くの基地局までの間の遅延である。この遅延を、ビルでの反射も含め、1ms(1/1000秒)以下に短くするという目標なのだ。もちろん、電話だけではなく、スマートフォンやIoTデバイスにも適用される。

[図1]電話のつながり概念図
作成:マカベアキオ
電話のつながり概念図

しかし、遅延と聞いて、端末から端末までの到達時間における遅延だと誤解した向きは多い。そのためスマホやタブレットから、遠くにいる相手のタブレットに映像を送り、相手に表示されるまでの遅延時間が短縮されると考え、例えば遠隔手術などで遠く離れた場所にいる医師が、ロボットアームで手術することも可能だという誤解も生まれた。中央での処理は時間がかかることが多い。映像の圧縮技術を別の圧縮技術に変換するトランスコーディングなどはリアルタイムでの対応が難しかったため、届けるのにも遅延が発生していた。今年になってFPGAを集積したSoC(システムLSI)でリアルタイムのトランスコーディングが実現できるようなチップが出ている。

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