No.023 特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

No.023

特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

連載02

5Gの虚像と真実

Series Report

データ速度・遅延・多接続が5G

5Gになると、このデータ速度が改善されるだけではない。さらに2つのことも大きく変わると言われている。一つは、基地局と携帯電話の間でやり取りする遅延時間が数ms以内というリアルタイムな応答性。もう一つはこれまでの携帯電話だけではなく、IoTに象徴されるような様々な電子機器がつながり、それにも対応することである。

最初の仕様データ速度に関して言えば、現状の5Gサービスはせいぜい200 Mbps〜400 Mbpsに留まっている。これでも4Gの平均速度と比べると十分速い。しかし目標値の20Gbpsの1/100の速度しかないのである。これで5Gと言えるのか。この質問を世界的な通信機器メーカーにぶつけてみた。仕様を決める3GPP(The Third Generation Partnership Project)という欧州の団体が、世界中の通信機器メーカーや通信業者と取り決めして決めた目標値に達しなくても、5Gに使う周波数とその帯域を決めた仕様であれば、5Gと呼んでもよいそうだ。

世界で最初に韓国で始まった5G携帯は3.5GHzの周波数で100MHz帯域を使う。これでは目標の1/10の1Gbpsでさえ実現できない。こういった状況なのに、なぜ日本が遅れていると言えるのだろうか。日本でも周波数3.7GHzと4.5GHz、28GHzが割り当てられている(図3)。28GHzは少し先だが、3.7GHzでも4.5GHzでも6GHzより低い周波数は、サブ6GHzと呼ばれ、4Gセルラーの延長線上にあるだけにとどまっているのだ。これでも5Gと言われているが、人によっては「なんちゃって5G」と呼ぶ人もいる。

[図3]日本の5G周波数割り当ては3種類の周波数帯
出典:Rohde&Schwarz
日本の5G周波数割り当ては3種類の周波数帯

これから紹介していくが、5Gは2020年から10年間にわたり、進化を続け、最終的に20Gbps/10Gbpsに到達するシナリオになっている。このように何段階にも渡って5Gが進化することを考えると、現段階で一飛びに5Gの次は6Gと考えるのは全くナンセンスである。第2世代の5G開始を睨み、通信業者は第2世代の5Gともいうべきミリ波技術の研究開発に力を入れている。

今の28GHzは固定通信サービス

どの国の5Gサービスでも、10Gbpsというような超高速のデータ速度は得られていない。つまり、今の段階では、どこが進んでいるとか、遅れているとかはまだ言えないレベルなのだ。韓国は3.5GHzに加え、28GHzの周波数も割り当てられている。しかし、28GHz帯はまだ商用化されていない。にもかかわらず、アメリカでは28GHz周波数の5GサービスをVerizon(ベライゾン)が始めて1年経つ。こう聞くとアメリカの方が進んでいるのか、と誤解されてしまうかもしれない。しかし、これも実は28GHzといっても、携帯電話ではなく固定電話向けのサービスなのである。

5Gは携帯電話の通信規格のはずなのに、5Gで固定電話とは何であろうか。実は、アメリカでは光ファイバを敷くのに土を掘りおこす工事が必要になり、コストがかかってしまう。日本ではそこら中に電柱があり、美観よりも便利さを優先してきた。このため光ファイバは電柱に配線されている。地中よりははるかにコストが安い。ヨーロッパの方がもっと美観にうるさい。このためヨーロッパではほとんど光ファイバが家庭まで来ていない。アメリカのインターネットは普及していたケーブルテレビの配線を使うことが多かった。

日本はカラオケ業者が光ファイバを電柱に張り巡らせてコストを安くする試みから始まったため、比較的安いコストで家庭まで光ファイバが配線された。やや脱線してしまったが、この光ファイバがアメリカでも家庭に来ていなかったために、ラストワンマイル問題(幹線から家庭やオフィスまでの末端に光ファイバを配線するとコストがかかるという問題)に5Gを利用したのである。

後の連載で紹介するが、28GHzというミリ波に近い周波数だと電磁波は360度放射状に出るのではなく指向性を持つようになる。電磁波の性質から、周波数を高くすればするほど、データ速度も速くなるが、指向性を持つようになると共に、距離も遠くまで飛ばなくなる。だから、幹線の基地局からまっすぐに家に向けて電磁波を通し固定回線として利用するのである。

中国でも始まったが4Gと共存

韓国とアメリカが5Gで先陣を切ったが、他の国はどうか。中国では、2019年11月から5Gサービスを始めた。中国移動、中国聨通、中国電信の3大通信オペレータが中国全土をカバーしている(参考資料1)。中国では5G基地局で使用する通信機器の内57%が華為技術、29%がZTEというから、Ericsson(エリクソン)、Nokia(ノキア)、Samsung(サムスン)などの外国勢はわずか14%しかない。国産品を愛用するという中国国民性の文化的な背景もある。

周波数帯は2.6GHz、3.5GHz、4.8GHzの三つが割り当てられている(表1)。これらの周波数を見る限り、10Gbpsという高速のデータ速度からはほど遠い。やはり、「なんちゃって5G」なのである。中国は、都市集中型の人口構成の国だ。一つの都市に人口が数百万人という街が極めて多数ある。このため基地局を構成するには都市部から始めていく。

[表1]中国の周波数割り当て
出典:情報通信総合研究所 (参考資料1)
https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr364-20190815-machida.html
日本の5G周波数割り当ては3種類の周波数帯

2020年4月1日付けの人民日報によると、中国工業情報省(工情省)は3月31日、5Gの基地局数が年内に全国で60万カ所を超えるとの見通しを明らかにした。「2月末時点の基地局数は16万4,000カ所。3月26日までに中国で発売された5G対応の携帯電話は76種類で、累計出荷量は2,600万台を超えた」と報じている。5Gのインフラ投資は、コロナウイルスパンデミックが収まった先には、経済を回復させる大きな原動力になるとの見方が中国では強い。

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