No.023 特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

No.023

特集:テクノロジーで創る、誰も置き去りにしない持続可能な社会

連載02

5Gの虚像と真実

Series Report

特許争いは混とんと

ただし、5Gの特許では、アメリカと中国が特許の件数が多いものの、その質に関してはやはりヨーロッパやアメリカのものが高い。Qualcomm(クアルコム)やIntel(インテル)は重要な基本特許を押さえることに長けており、中国の5G特許は、クロスライセンスを狙った大量の特許で、アメリカの特許と相殺しようというもののようだ。5Gのスマホ向けの特許ではクアルコムが強く、同社は3Gで基本特許を支配できたが、LTEでは抑えられなかった。しかし、LTEの特許の数はクアルコムが最も多い。クアルコムの特許は変調方式の特許が多いため、5GもLTEと同様、OFDM変調を基本とするため、基本特許にはならないだろう。

5Gのシステムとしては、前述したように2030年までに目標値に向けて進化していくため、基本的なハードウエアプラットフォームを構成した後は、ソフトウェアを使って進化に対応していくことになるだろう。ソフトウェアは仕様が流動的で素早く変化に対応する時代に適した技術であり、仕様が進化していく時代ではハードウエアで固めてしまわない方がよい。ハードウエアを製品化するためには3〜4年かかるからだ。変化の速い時代には、ハードウエアをほとんど変えずにソフトウェアを変更するだけで済むようにしていればビジネス機会を失うことがなくなる。

5Gのシステムは基地局でもスマホでも共にハードウエアとソフトウェアからできており、ハードは頻繁に変えなくてもソフトを更新することで機能をアップできる。5Gのシステムはコンピュータシステムだからである。後述するIoT専用のセルラーネットワークであるNB-IoTやCat-M1などの仕様は、基地局のソフトウェアを書き換えるだけで対応できるようになっている。

世界の状況を見ている限り、5Gはこれから始まる段階であり、これから進化していくサービスと言える。現在はサブ6GHzを使った「なんちゃって5G」のレベルにすぎない。今後は、サブ6GHzをコアにしてミリ波のスモールセルと混ぜながら5Gの目標値を目指していく。2030年には初期の目標をクリアできると期待されており、今は「日本が遅れている」、という指摘は当たらない。日本はNTTドコモが気にすることだが、先行して誰も付いていかないガラパゴス化を避けるように世界の通信業界を見ながら一緒に進めていくことになる。

連載第2回では、5Gの遅延と多接続について解説し、これからの「本当の5G」に向けたロードマップを紹介していく。第3回では、5Gに使われるテクノロジーに関して説明し、5Gを開発できなければ6G開発は無理であることを紹介していく。

[ 参考資料 ]

1.
町田和久「中国の5Gライセンス発給に見るマーケットの行方~放送系「第4のキャリア」に勝算は?」、InfoComニューズレター、(2019/8/15)
https://www.icr.co.jp/newsletter/wtr364-20190815-machida.html
2.
Huawei says European 5G delays certain; countries postpone spectrum auctions
https://www.fiercewireless.com/5g/huawei-says-european-5g-delays-certain-countries-postpone-spectrum-auctions

Writer

津田 建二(つだ けんじ)

国際技術ジャーナリスト、技術アナリスト

現在、英文・和文のフリー技術ジャーナリスト。
30数年間、半導体産業を取材してきた経験を生かし、ブログ(newsandchips.com)や分析記事で半導体産業にさまざまな提案をしている。セミコンポータル(www.semiconportal.com)編集長を務めながら、マイナビニュースの連載「カーエレクトロニクス」のコラムニストとしても活躍。

半導体デバイスの開発等に従事後、日経マグロウヒル社(現在日経BP社)にて「日経エレクトロニクス」の記者に。その後、「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」、「Electronic Business Japan」、「Design News Japan」、「Semiconductor International日本版」を相次いで創刊。2007年6月にフリーランスの国際技術ジャーナリストとして独立。著書に「メガトレンド 半導体2014-2023」(日経BP社刊)、「知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな」、「欧州ファブレス半導体産業の真実」(共に日刊工業新聞社刊)、「グリーン半導体技術の最新動向と新ビジネス2011」(インプレス刊)などがある。

http://newsandchips.com/

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