No.008 特集:次世代マテリアル
連載04 半導体テクノロジーの今
Series Report

450mm量産実現のカギにぎる露光装置

450mm量産にとって一番のボトルネックはリソグラフィだが、本命のオランダ(蘭)ASMLの量産用EUV(波長13.5nmの極端紫外)露光装置開発は、光源出力を向上させ、スループットを従来の露光装置並みに上げるメドが立っていない。一方、ニコンはASMLに対抗して、従来技術を用いた450mm ArF液浸露光装置(試作機)を2015年4月に出荷、次いで量産機の2017年(以降で顧客の希望時期に)出荷を表明している。同社は、少なくとも今後数年間は世界の450mm化計画のペースメーカー役を務めるだろう。ただし、この方式の露光は解像度が悪いため、マルチパターニングという複雑な工程を経ないと超微細加工ができず製造コストが上がる。これに対してEUV露光は、解像度が高いため一回露光で済むので、EUV露光の実用化を待ちたいという市場の向きもある。

450mm化は一体いつはじまるのか?

世界の最先端微細化を主導するインテルの当初(2012年)の予定では、2015-2016年に450mm試作開始、2018年に量産開始となる予定であった。しかし、本連載第1回で述べたように、同社は14nm MPU用の300mm製造ラインの歩留まりトラブルが長期間解決しないという、想定外の事態に見舞われた。まずは300mmラインを埋めるメドが立たなければ450mmへの移行はできない。さらには、インテルが主力のPC向けMPUビジネスの長期凋落を見越して本格的にファウンドリ参入を宣言し、14nmファウンドリ競争が激化したことにより, 一時的にせよ、450mm化どころではない状況になっている。しかも、上述のように450mm EUV露光のめどもたっていない。

インテルは、当初の計画がすでに何度か先延ばしされている(実際には棚上げされている)ことは認めつつも、公式的には「断固たる決意で2010年代後半に450mm量産を開始する(クルザニッチ社長, 2013年 10月)」」方針に大きな変更はない(つまり遅くとも2019年末までには450mm量産を開始したい)としている。しかし、インテル・TSMC・サムスン間のファウンドリ競争が10nmで更に激化し、しかも歩留まり向上のための技術開発に時間がかかるようだと、450mm化はさらに先延ばしされる可能性がある。

加えて450㎜製造工場の建設には300㎜工場以上の膨大な設備投資が必要とされることから、この投資に耐えられるのは世界的に見てほんの数社という現実もある。半導体業界全体として成長を続けるために、市場的・経済的な観点からも考える必要があろう。

Writer

服部 毅(はっとり たけし)

ソニー(株)に30年余り勤務し、中央研究所で半導体基礎研究、半導体事業本部でデバイス・プロセス開発から量産ラインの歩留まり向上まで広範な業務を担当。この間、本社経営/研究企画業務、米国スタンフォード大学大学院留学、同集積回路研究所客員研究員等も経験。2007年に技術・経営コンサルタント、国際技術ジャーナリストとして独立し現在に至る。工学博士。The Electrochemical Society (ECS)フェロー・理事。韓国漢陽大学工学部客員教授。主な著書に「シリコンウェーハ表面のクリーン化技術(リアライズ社)」、同英語版(Springer社)、「半導体MEMSのための超臨界流体(コロナ社)」「メガトレンド半導体2014ー2023(日経BP社)」がある(共に共著)。

Copyright©2011- Tokyo Electron Limited, All Rights Reserved.