No.003 最先端テクノロジーがもたらす健康の未来 ”メディカル・ヘルスケア”
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テクノロジー

ドラッグデリバリーシステムが病気を狙い撃つ

遺伝子工学やナノテクノロジーによる、新しい薬物治療の形

  • 2012.10.12
  • 文/山路 達也

適切に薬を投与するために、古来、医師や薬剤師は頭を悩ませてきた。しかし、近年は遺伝子工学やナノテクノロジーが発達してことにより、必要な部位にピンポイントで薬を届ける、ドラッグデリバリーシステムの研究が活発化している。また、体内にデバイスを埋め込み、薬の投与を自動化する研究も進んでいる。最新のドラッグデリバリーシステムは、どのようなことを実現するのか、そして医療の形をどう変えていくのだろうか。

適切な薬を適切な場所に届けるドラッグデリバリーシステム

毒と薬。相反するように見えるが、両者の違いは紙一重でしかない。毒性のある植物トリカブトは昔から漢方薬として使われてきたし、その一方、風邪薬であっても用法や用量を守らないと毒になり得る。

昔から、適切な量の薬を投与することは、医療の大きな課題だった。薬が少なすぎると効かないし、多すぎると副作用が出る。人体の必要な箇所に必要な量だけを届けようと、さまざまな工夫が凝らされてきた。腸から吸収させたい成分が胃で溶けてしまわないよう、腸溶性カプセルを使った薬剤はその一例だ。

しかし、薬を人体の適切な場所に届けるのは、一筋縄ではいかない。胃、あるいは腸にたどり着いた薬は、粘膜を通って血液に入る。血液は肝臓に流れ込み、フィルターを通って体内へと流れていくが、強力な解毒機能を持った肝臓は、時に薬をも無力化してしまう。さらに、タンパク質を主成分とするバイオテクノロジーで作られた薬は、体内にあるタンパク質を分解する酵素によって、正常に作用しない時もある。

こうした複雑な人体のシステムをうまくくぐり抜け、薬を目的とする部位へと直接届けることができないか。何十年も前から、ドラッグデリバリーのシステム研究がなされてきた。今では、経口、つまり口から飲み込む以外にも、ニコチンパッチのように皮膚に貼るといった摂取方法もある。また、ナノテクノロジーや遺伝子関連の技術が進歩してきたことで、一昔前ならSFでしかなかったドラッグデリバリーシステムも実現しつつある。ここでは、その中でもユニークな研究の一端を紹介していこう。

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