No.022 特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた:我々はどこから来て、どこへ向かうのか

No.022

特集:新たな宇宙探究の時代がやってきた。我々はどこから来て、どこへ向かうのか。

連載01

系外惑星、もうひとつの地球を探して

Series Report

電波を使った宇宙人探し

物理的にメッセージを届けられなくとも、電波を使えば遠く離れた知的生命体にもメッセージを送ることはできる。そのような考えから、1974年に、プエルトリコのアレシボ天文台の巨大電波望遠鏡から、宇宙にいるはずの知的生命体に向けてアレシボメッセージとよばれる電波信号が送られた。このメッセージは数学の素数の知識があれば、絵が復元できるようになっていて、復元された絵を通して、人間が10進数を使うこと、人間の姿、DNAの化学構造式、太陽系のことなどがわかるようになっている。知的生命体がこのメッセージを受け取ったら返事を送り返してくる可能性もあるが、40年以上経過した現在まで、知的生命体からの返事はまだきていない。

[図9]アレシボ天文台
直径約305mの巨大な電波望遠鏡が設置されている。
©National Science Foundation
アレシボ天文台
[図10]アレシボメッセージ
©Arecibo Message Project
アレシボメッセージ

地球外知的生命体の存在を確かめるもう1つの手段としては、知的生命体が発信した電波を受信する方法がある。現在、私たちはテレビ放送や無線通信などに電波を使っている。それらの人工的な電波は宇宙空間に放出されているので、宇宙で地球の電波を受信する技術があれば、地球で放送されているテレビ番組を見ることができるだろう。

もし、地球外知的生命体が、地球人と似たように進化したとすれば、やはり電波を使って通信をするはずだ。この宇宙を支配する物理法則はどこでも同じなので、物理法則を理解していれば、地球人と同じような周波数の電波を使うことに落ちつくだろう。そのような考えに基づいて、宇宙からやってくる人工電波を観測する試みは昔からおこなわれている。宇宙からの人工電波についても、まだ観測は報告されていないが、近い将来、そのような電波がとらえられるのではないかと期待されている。

宇宙からの人工電波の受信が最も有力視されているのが、オーストラリアと南アフリカに建設が予定されているSKA(Square Kilometre Array)*2という巨大な電波望遠鏡群だ。SKAは、すべてのアンテナの集光面積の合計が1平方km級の電波望遠鏡群を建設する計画を進めている。オーストラリアでは超短波(VHF)、南アフリカでは極超短波(UHF)と、それぞれ別の周波数帯の電波を観測する予定。VHFは航空管制通信、FMラジオ放送などに、UHFはテレビ放送や携帯電話などに使われている。

[図11]南アフリカに建設されるSKA電波望遠鏡群の想像図
©SKA
南アフリカに建設されるSKA電波望遠鏡群の想像図
[図12]オーストラリアに建設されるSKA電波望遠鏡群の想像図
©SKA
オーストラリアに建設されるSKA電波望遠鏡群の想像図

SKAはとても規模の大きな電波望遠鏡群なので、2段階に分けて建設する。第1段階のSKA1は2021年に建設を始め、2027年頃から本格運用を開始する予定。SKA1の観測が開始されれば、地球から50光年ほどの範囲で人工電波を発信する知的生命体がいるかどうか確認できるようになる。そして、第2期の工事が終わり、フルスペックのSKAが完成すると、SKA1の数十倍の範囲から人工電波がやって来ているかどうかがはっきりするという。

SKAの観測で、人工電波を観測することができれば、地球外知的生命体の存在を裏づける大きな証拠となるだろう。もし、観測できなかったとしても、一定の範囲で地球外知的生命体が存在しないことが科学的に証明されることになる。地球外生命体が発見されないとがっかりする人もいるだろう。だが、観測技術の発展によって、地球外生命体の存在の有無について、科学的に検討できる時代が、これからやってくるのだ。この事実だけでもすごい進歩といえるのではないだろうか。

この宇宙のどこかに知的生命体がいるといわれるものの、知的生命体が存在する証拠をつかむことは簡単ではない。地球にヒトが生まれるまで、地球ができてから46億年もの時間がかかっている。他の惑星に知的生命体が生まれていたとしても、生まれる時期や、文明が発達する時期がずれていたら、お互いに気づくことはないだろう。また、現在、この宇宙のどこかに知的生命体が、地球人と同じような文明をつくっていたとしても、その惑星が遠すぎると、やはり私たちがその存在に気づくことはできない。200光年先の惑星から、知的生命体による人工電波が放出されていたとしても、地球に届くのは200年後だ。その電波がタイミングよく地球に届く保証もないし、地球の技術ではとらえるのが難しいほど弱い可能性もある。

この地球上にヒトが誕生し、宇宙を観測できるようになったことだけでも、奇跡といえるだろう。その奇跡が、この宇宙のどこかで起こっていると考えるだけでもわくわくしてしまう。地球外知的生命体の存在する証拠を発見するだけでも、奇跡的なことなのかもしれない。これまで、人類は不可能だと思われてきたことにチャレンジし、数多くの成功を手にしてきた。現在は難しそうな課題でも、挑戦し続けることで大きなブレイクスルーが起こることもある。地球外知的生命体の発見は、日々の技術開発の先にあるのかもしれない。

[ 脚注 ]

*2
SKA(Square Kilometre Array)については、本号のサイエンス・ディレクターのロバート・ブローン氏へのエキスパートインタビューでも、詳しく取り上げている。

Writer

荒舩 良孝(あらふね よしたか)

科学ライター

東京理科大学在学中より科学ライター活動を始める。宇宙論から日常生活で経験する科学現象まで幅広い分野をカバーし、取材・執筆活動を行ってきた。日々、新発見が続いている科学のおもしろさを、たくさんの人に伝えていきたいと思っている。主な著書は『5つの謎からわかる宇宙』(平凡社)、『思わず人に話したくなる地球まるごとふしぎ雑学』(永岡書店)など。

Cross Talk

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前編 後編

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系外惑星、もうひとつの地球を探して

地球外知的生命体は存在するのか?

第1回 第2回 第3回

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第1回 第2回 第3回

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