No.005 ”デジタル化するものづくりの最前線”
Scientist Interview

ビジネスの「インターフェイス」をデザインする

世界で進行するオープンイノベーション

2013.09.20

立本 博文 (筑波大学ビジネスサイエンス系 准教授)

デジタル技術の進化に伴い、ビジネスにおけるイノベーションのあり方が大きく変化しつつある。新技術開発に限定されず、生産方式や販売先といった要素の重要性が増しているのだ。また、大企業主体のイノベーションから、大小さまざまな企業が複雑に結びつくオープンイノベーションへトレンドも移行している。こうした新しい産業環境を勝ち残る上でカギとなるのが、企業間「インターフェイス」のデザイン。筑波大学ビジネスサイエンス系 立本博文准教授に、世界で現在進行しているイノベーションについてうかがった。

(インタビュー・文/山路 達也 写真/MOTOKO)

デジタル技術の進化がイノベーションのあり方を変えた

──立本先生は長年イノベーションについて研究されています。企業経営におけるイノベーションの位置づけはどう変化してきたのでしょう。

1980年代まで、経営学では大企業におけるイノベーション研究が中心テーマでした。中央研究所を所有する、もしくは技術力のある中小企業を買収できる大企業がすべてのテクノロジーを握り、イノベーションをリードしていたのです。例えば、化学分野ならデュポン、コンピューターならIBMといった大企業です。メインフレーム(企業の基幹業務向けの大型コンピューター)がコンピューター業界の中心だった時代には、IBMが半導体もソフトウェアもすべて作っていました。

しかし、半導体を始めとするデジタルテクノロジーの急速な進歩によって、伝統的な大企業主導ではなく、もっと小さい新興企業主導のイノベーションが起こってきたのです。どこかの大企業がテクノロジーをコントロールしているのではなく、創発的、分散的、自律的なイノベーションがあちこちで始まりました。こうしたイノベーションでは、全体を統御している人や組織が存在しません。

代表的なのは、コンピューターの分野でしょう。マイクロソフトにせよ、アップルにせよ、ガレージメーカーが出発点です。最初のうちは、こうしたイノベーションは米国のシリコンバレー一帯で起こっている現象にすぎませんでしたが、やがてグローバルに広がっていきました。

これは常識的に考えたら不思議な話です。ガレージメーカーにはテクノロジーもなければ、カネもない。どうしてそんなメーカーが、たかだか10年で時価総額1位になってしまうのでしょう。

こうした新しいイノベーションの背後には、どのようなメカニズムがあるのか。そして、その流れが今後も続いていくのであれば、企業は生き残るためにどうすべきなのか。さらには、産業政策として新しいタイプのイノベーションを支援するには何をすればいいのか。

それらが、1990年代以降のイノベーション研究のメインテーマになっています。

──日本の企業は、新しいタイプのイノベーションに対応できているのでしょうか?

残念ながら、日本の産業構造はこうしたイノベーションにうまく対応できていません。シリコンバレーのコンピューター産業も、日本の製造業もどちらもネットワーク型の産業構造なのですが、この2つは大きく異なっています。

日本企業のネットワークは、トヨタに代表されるように特定の企業と取引を行う系列ネットワーク型。一方のシリコンバレーは、オープンネットワーク型といわれます。コンピューターや通信、ソフトウェア分野は、典型的なオープンネットワーク型で、産業政策としてもそれを支援することが重要になってきています。オープンネットワーク型の産業構造、そしてそこから生まれるオープンイノベーションに対するノウハウが、日本の官公庁、研究者ともに欠けており、それが現在の問題なのです。

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