LAST ISSUE 001[創刊号] エネルギーはここから変わる。”スマートシティ”
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スマートメーター標準化では家の中の通信方式がカギ

続いて、スマートメーターの標準化がなぜ必要かを確認してみよう。日本のスマートメーターの標準化を推進している中心的な存在は経産省である。スマートハウス標準化検討会の資料によると、同省は「スマートメーターは、電力消費の見える化を実現し、需要家によるピークカットを促す料金契約(例えば、需給調整契約、時間帯別料金契約、ネガワット取引契約など)を可能とするインフラ」だと認識している。3.11以降の電力需給逼迫を改善するには、スマートメーターというインフラを早急に整備する必要があるという考えだ。日本の電力総需要の8割までスマートメーターがカバーできるように、今後5年でスマートメーター普及を急ぐというのが経産省の目標。
スマートメーターの前身である電力量計は、計量法における検定制度の対象になっており、細かな要求水準が決まっている。スマートメーターも電力消費量を積算する計量器なので、当然、計量法のそうした要求水準を満たす必要がある。しかし、その計量法が定める標準だけでは不十分なのだ。
スマートメーターが行う働きは大きく二つあり、まず、通信技術を使って電力会社へ家庭の電力消費状況を伝送する機能、もうひとつは、同じく通信技術を使って家庭内のHEMS対応の製品・システムなどとやりとりを行う機能に分かれる。いずれも既存の電力量計にはない機能だ。関係者の間で前者は「Aルート」、「Bルート」と呼ばれている。Aルートは「家の外」、Bルートは「家の中」と識別すると覚えやすい。Aルートについては現時点では標準化の対象になっていない。現在急がれているスマートメーターの標準化はBルートに関するものだ。

スマートメーターには家の外の電力会社とやりとりするAルートと家の中を司るBルートの機能がある。
[図表3] スマートメーターには家の外の電力会社とやりとりするAルートと家の中を司るBルートの機能がある。今回はBルートの標準化が検討されている。(出所:経済産業省スマートハウス標準化検討会資料)

経産省スマートハウス標準化検討会では、Bルートについて以下の四分野を要標準化対象として挙げている。

  • (1)電力会社等から提供されるデータフォーマットの統一
  • (2)情報連携のための通信ミドルウェア(公知な標準インタフェース)の整理
  • (3)HEMSとの通信用に実装する通信機器(伝送メディア)の整理
  • (4)セキュリティ、認証等に関する課題と対応

このうち(2)の「公知な標準インターフェース」として、2011年末に経産省の実質的な公認を受けたのが上述のECHONET Lite。ECHONET Liteのコントローラーから見れば、スマートメーターは家電製品や発電・蓄電システムと同じ「家庭内の機器」という位置づけとなった。従って、ECHONET Liteが取り扱う様々な機器との連携がスムーズにできる。ここが固まったことでBルートの標準化は大きく進展した。

公知な標準インターフェース
[図表4] ECHONET Liteは「公知な標準インターフェース」として、スマートメーターとHEMSの双方にまたがる領域を司ることになった。(出所:経済産業省スマートハウス標準化検討会資料)

(1)のデータフォーマットの統一については、約束事を決めればよいだけであり、技術的な難しさはないと考えられる。同検討会内のスマートメータータスクフォースで議論の大詰めを迎えている。(4)のセキュリティや認証についても同様だ。
関連各社にとって大きなインパクトを持つのが(3)の「通信機器(伝送メディア)」をどうするかだ。これは、HEMS関連各機器とスマートメーターとの間の通信方式の問題に等しい。理論上は、利用可能な通信方式として、赤外線、無線LAN、Bluetooth*1、PLCなどが挙げられるが、ECHONET Liteはどの方式を使うかについて、特に指定していない。しかし、HEMS対応機器を製造する家電メーカーにとっても、大量のスマートメーターを調達する電力会社にとっても、通信を司る部品はコストが高いために何が採用されるかは大きな問題である。数ある選択肢の中から、もっともコストが安く、もっとも安定的な通信ができる「どれか一つ」に決めてほしいという思いはあるだろう。もっとも、PLCが最有力だと見ている、スマートメーターの専門家もいる。PLCは家庭内の電気配線を使う通信方式で、家電をコンセントに指すだけでつながる。赤外線系が持つ指向性の制約や無線系で起こりうる「壁を電波が通らない」という問題もなく、どの家庭でも使われている無線LAN(WiFi)との混信もない。
PLCには、大きく分けて高速通信用と低速通信用があり、HEMSに向いた低速通信の中では、PRIME*2、G3*3といった複数の標準がある。どれが同タスクフォースの選定を受けるのか興味深いところだ。

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