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半導体の原理 小さな半導体に結晶した、偉大な英知。

IC(集積回路)とは?

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集積化へのベクトル

トランジスタの発明により、それまで真空管を使っていた電子回路の一部はゲルマニウムやシリコンなどに置き換えられ、電子回路の小型化・高耐久化が進みました。それでもなお、コンデンサや抵抗、配線など電子回路の他の部分は依然として従来のままであり、研究者のテーマは必然的に電子回路全体の小型化に向かうこととなりました。
その結果、従来はアルミのシャーシを使っていた基板を、合成樹脂製のプリント基板にしたり、個々の部品の小型化を図るなど、一定の成果をあげることはできました。
しかし、ひとつひとつの部品を別々につくって組み立てるという発想からスタートしている限り、その成果には自ずから限界がありました。

キルビーの大胆な発想

1958年当時、半導体の中にコンデンサや抵抗をつくることや、ひとつのウェーハに複数のトランジスタをつくることは行われていました。しかし、ほとんどの研究者は、ひとつの基板の上にさまざまな部品をどう効率的に組み込むかという発想をしていました。
そんな状況に風穴を開けたのが、テキサス・インスツルメンツ社に着任したばかりのJ.S.キルビー。彼の着想は、トランジスタをゲルマニウム半導体でつくるのなら、いっそのことコンデンサや抵抗も、同様にゲルマニウム結晶体の中につくりこんでしまおうというものでした。
つまり、ひとつの回路全体を半導体でつくりこむという発想。こうして、最初の集積回路が誕生することとなりました。

集積回路の加速度的な進化

集積回路の加速度的な進化の画像

1個のトランジスタと3個の抵抗、そして1個のコンデンサがつくりこまれた、長さ3cm・幅数ミリの細長いゲルマニウム単結晶。それが、ギルビーがつくりだした最初の集積回路です。ただし、配線はそれまでと同じように端子を金線でつないだものであり、そこにまだ進化の余地がありました。
やがて、配線も、抵抗やコンデンサと同じようにアルミニウムを蒸着させてシリコンウェーハにつくりこむ技術が登場。キルビーがつくりだした集積回路を、さらに大きく革新することとなりました。また、この技術は量産に適していたので、集積回路の普及も促進。こうして、集積回路は加速度的に進化していきました。

「ムーアの法則」の衝撃

ICの集積度が60個程度だった1965年当時、「1975年までには、最小コストで得られる集積回路の部品数は65,000に達するであろう」とする論文は、一大センセーションを巻き起こしました。
ICの集積度は、18か月で2倍に高まっていく。これが有名な「ムーアの法則」。インテル社の共同創業者G.ムーアが、自身の経験に基づいて発表した予測です。そして、実際に進行した驚異的な集積化は、ムーアの予想通りの経過を辿りました。これを支えたのが、半導体の超微細加工技術。この技術は、10億分の1メートルのナノの単位にまで達し、ITの分野などではすでに100ナノ以下の世界での競争が繰り広げられています。